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TALK ABOUT THIS WORLD フランス編 フランスはどこへ行くのか(続)

中島さおり2024.07.09

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7月7日、フランスの総選挙の結果は、左翼、新人民戦線(NFP)が182議席でトップ、中道、マクロンの与党が164議席でこれに続き、政権を取るかと恐れられた極右 「国民連合」(RN)は143議席に終わった。

6月30日の第一回投票の後、私は「国民議会の第一勢力が極右になってしまったという、信じられない事実は、もう変えようがない。」と書いたが、すぐに覆された。大変喜ばしい。

こんな逆転劇を予想した人は多くはなかったはずだ。人々の関心は、RNが絶対多数をとるか、絶対多数は阻めるかだった。午後7時には、選挙予想はまだRNが第1党と伝えていた。7時20分を過ぎた頃だったろうか。「調査機関によって、選挙予想にバラつきが出ている。数社はNRFがトップだと予想している」というものが流れた。そして蓋を開けてみると、大きく予想を覆すものだったのである。

第一回投票の後、217名が立候補取り下げをした。三すくみの戦いではRNが勝ってしまうと予想される選挙区で、3位につけた立候補者が票を譲ったのだ。NRFは130、マクロンの党は81、立候補を取り下げた。そしてNRF支持者の8割とマクロン支持者の5割ほどが、それぞれRNでない対立候補に票を入れた。それが誰もが思う以上の効果を発揮した。投票率は66.63%と、第一回投票とほぼ同じ高率だった。

RNを阻止できたのは、本当に素晴らしいが、誰も絶対多数を取れずに三つの相容れない勢力が並ぶというのは、フランスでは初めてのことだ。単純に考えれば、どこが政権をとって、政策を提案しても、他の二つの反対で潰れてしまう。この状況で、どういう政府を作るのか、誰が、何ができるのか。

マクロン大統領の党は、大幅に議席数を減らしたものの、NFPとその差20に満たない大健闘に終わったため、本来、どれほど制裁を受けたかを忘れたかのようだ。第一勢力となったNFPを分裂させて、最左翼LFIを除いた社会党などと連立政権を組みたいと考えているようである。

しかしそれではNFPとしては、マクロンへの批判票を投じた有権者を裏切るようなものだ。NFPは自分たちの中から首相を出す構えで調整に入るとしている。

目前で勝利を逃したRNのマリーヌ・ルペンは、「我々の勝利は延期されただけだ」と述べた。実際、全く政治信条を異にする人々が協力して極右に政権を取らせないなどということを毎回やっているわけにはいかない。そして政治が人々の不満を解消しなければ、RNの勢いは止まらない。

これからまた相変わらずのマクロン政治が続けば、どうなるか。マクロンは「変わる」と言っているが、変わるわけがない。マクロン政治へのアンチテーゼを打ち出しているNFPが政権を取って、しかも成功する以外に、RNの勢いを削ぐ方法はないと私は思う。しかしもし成功しなかったら、次こそRNしか選択肢がなくなってしまう。そして政権運営に必要な多数派を形成できない以上、どこが政権を取っても、その政策を実現するのは難しい。

当面の危機は乗り越えたけれど、何も安心できる状況ではない。マクロン大統領はしばらく首相指名をしないようだ。オリンピックが終わるまでこのままで行くつもりなのか。時間を稼いでいるうちに、どのような動きがあり、どのような政権ができるのか。フランスはまだ混沌と不安の中にある。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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