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大義なき衆議院総選挙、しかし不断の努力で民意は示せる〜後編〜

打越さく良2017.11.08

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前編では、衆議院総選挙は、安倍首相の野党の準備不足を狙った「究極の自己都合」解散、希望の党、小池百合子代表の「排除」発言での失速を振り返りながら取り上げた。後編は枝野幸男さんが結成を表明した「立憲民主党」の話しをしていきたいと思う。

立憲民主党の結成、躍進
 諦めなくていい、というのは、枝野幸男さんが10月2日結成を表明した立憲民主党の躍進からも感じられる。民進党の希望の党への事実上の合流が報じられ、立憲主義と民主主義が危うくなることを危惧した人々から、ハッシュタグ「#枝野立て」と枝野さんが政党を立ち上げてくれないか期待するツイートがあふれた。実は、私は、はるか昔に枝野さんが誰も足を止めない大宮駅西口で小さい台の上で丁寧に論じているとき、「すごい。こういう政治家がいるのだ」と、足を止めたのを気づかれないよう、遠くで聴いたことがある。枝野さんは、誰も足を止めないそのときも、多数の支援者に囲まれるようになった今と同じく、かみ砕いて、格差是正や、民主主義について語ってくれていた。政策について語らず、政党と名前を連呼するだけの街宣ではない、こういう政治家がいるとは…と感動したことを、鮮明に覚えている。だから、枝野さんに立ってほしい、とは思った。しかし、お金やスタッフはどうするんだ、そんな簡単なことではない、間に合うはずない、とハッシュタグを眺めていた。
 しかし、同様にツイッターのハッシュタグを見ていた枝野さんは、私のように無力感に浸ってはいなかった。ハッシュタグで「背中を押された」とたった一人で立憲民主党結成を表明したのだ。そして、あれよあれよというまに、立憲民主党は希望の党に代わって「台風の目」となり、枝野さんらの街宣は熱気にあふれ、ツイッターのフォロワーも一挙に増えた(安積明子「立憲民主党、ひょっとしてひょっとするかも」東洋経済2017年10月15日。2017年11月3日現在では191,865人のフォロワー数)。
 街宣車に立たず、ぐるりと聴衆に囲まれて演説をする枝野さんたちの街宣と、聴衆に距離を置き、街宣車に立ち、ヤジを飛ばす反対派を警戒して厳重警備する自民党の街宣の違いは、「草の根、ボトムアップ、多様性尊重」の民主主義か、権威と排除の「上からの政治」かの対比を可視化したといえる(伊吹早織「立憲民主党の街頭演説が「SNS映え」する理由 自民党と比べたらわかる秘策が」)。
 ことに最後の10月21日の秋葉原駅前での安倍首相の街頭演説は、「大勢の警察官が、鉄柵やロープを使ってその大集団と一般市民を隔てている。横断幕や居並ぶ警察官の前を、通行人が足早に通り過ぎていく。」という異様さであり、安倍政権批判を偏向とみなしメディアを突き上げるなど民主主義自由主義社会とは思えないような、「戒厳令の予行演習」ともいうべき様相であった(毎日新聞2017年10月22日「揺れる日の丸、かき消される「アベやめろ」 首相の「アキバ演説」で見えたもの」田中龍作ジャーナル2017年10月21日23時「戒厳令下のアキバ 「安倍辞めろ」を完全封殺」)。一方で、同日の新宿では、雨の中約8,000人の観衆が集まった立憲民主党の「東京大作戦ファイナル」。聴衆の輪の中心部では、傘を差していた人たちが、周囲からも枝野さんが見えるように傘をたたみ、枝野さんとともに雨にぬれながら皆で耳を傾けようという排除のない参加型のものであった(「雨の新宿8000人「枝野」コール 原点返る政治を」日刊スポーツ2017年10月21日22時36分)。
 排除した上からの政治ではなく、開かれた、ボトムアップの政治へ。と、SNSにはまっていると胸が熱くなるが、もちろん、選挙の結果を見れば、ことはそう簡単ではないことも、明らかだ。

地域でも不断の努力を続けねば
 私自身、今回いてもたってもいられなくなり、地元東京2区の立憲民主党公認の松尾あきひろ候補の事務所におしかけ、選挙の応援に初めて取り組んだ。「立憲主義のために。民主主義のために。」と頭でうずまく高尚な理念と、証紙はりやビラ配り、政策パンフのポスティング、電話かけといった現場の地道な仕事のギャップは大きかった(集会での応援演説が一番楽であった…)。
頭でっかちではいられないのは、候補もだ。松尾候補には、私だけでなく、あっちからもこっちからも、「握手が弱々しい」、「油断した素の顔をしている。いつも笑顔で」、「ポケットに手をいれる候補はいない」、「街宣車の下にも目配りをっ。手を振ってくれたおばあさんを無視したっ」と、ばんばん矢のように叱咤があった。ふと、「素」のまんまでもいいのではないか、強引に握手してくる自民党候補をあるべき姿、デフォルトと思い込んでいるのがいけないのではないか、と思うこともあったが、とにかく一票でもと必死であった。しかし、落選。
 とはいえ全く無名な上、準備不足、民進党が事実上瓦解して体制が整わない中で走り抜けた候補(初日はぼっち街宣だったのだ!民進党の区議らの多くが希望の党候補の応援に行ってしまった)が、自民党前職(前職だと地域活動に呼ばれやすく何かと有利だ。彼は本当に地域の学校の運動会等によく顔を出している。そういうことではなく政策だろうっと思うが、そのような機会に顔を売るのが強みとなることは否めない)に21,763票差までつけた。明日に向かって走ろう。やる気満々だ。
 ここまで来られたのは、共産党が候補を下ろしてくれ、野党共闘が実現したことが大きい。共産党こそ原則的に憲法擁護の立場を堅持しているとお考えの澤藤統一郎弁護士までもが、松尾候補のために電話がけボランティアをしてくださったと後で知り感動した。そして、ボランティアの様子をこのように描いてくださっている(「澤藤統一郎の憲法日記」2017年10月20日)。

「私はこの選挙共闘を注目に値すると思っている。共闘を支えている無党派市民の意識レベルが高く、熱意もきわめて旺盛なのだ。そして、候補者に遠慮なくものを言っていることだ。演説の仕方が未熟、情熱が足りない、もっと自信をもって語らなければならない。憲法についての見解がおかしい。今度は大分よくなった…。注文の域を超えて、叱責すらしている。おそらく、支援者の方が候補者よりも政治意識が高い。
 立候補者をエライ先生とは見ない。自分たちの候補者として、注文を言うのが当たり前という、新しい政治文化を見る思い。これは貴重だし、脇で見聞きしていて面白い。」

 おおそうなのか…。選挙ボランティアが初めてだったから、「注文の域を超えて、叱責」するのも全ては「私たちの候補」のため、「私たちの政治」の実現のために必要だし当然と思っていたが、新しい政治文化なのか。細々した叱責にむっとせずに感謝し取り入れた松尾候補を激励しないといけないな(汗)。
 次は、私たちの候補を国会へ送りたい。そして、選挙期間だけでなく、野党の質問時間短縮など問題っ、と思ったことはすぐ自民党や議員に伝えるなど、不断の努力をしていきたい。

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打越さく良

打越さく良(うちこし・さくら)

弁護士・第二東京弁護士会所属・日弁連両性の平等委員会委員日弁連家事法制委員会委

得意分野は離婚、DV、親子など家族の問題、セクシュアルハラスメント、少年事件、子どもの虐待など、女性、子どもの人権にかかわる分野。DV等の被害を受け苦しんできた方たちの痛みに共感しつつ、前向きな一歩を踏み出せるようにお役に立ちたい!と熱い。
趣味は、読書、ヨガ、食べ歩き。嵐では櫻井君担当と言いながら、にのと大野くんもいいと悩み……今はにの担当とカミングアウト(笑)。

著書 「Q&A DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで」日本加除出版、「よくわかる民法改正―選択的夫婦別姓&婚外子差別撤廃を求めて」共著 朝陽会、「今こそ変えよう!家族法~婚外子差別・選択的夫婦別姓を考える」共著 日本加除出版

さかきばら法律事務所 http://sakakibara-law.com/index.html 
GALGender and Law(GAL) http://genderlaw.jp/index.html 
WAN(http://wan.or.jp/)で「離婚ガイド」連載中。

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