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夜のカルテ 〜オンラインクリニックからの報告〜 Vol.1 オンラインクリニックをひらいたわけ

椿 佳那子2024.06.28

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ラブピ読者のみなさんこんにちは。私は精神科医/公認心理師で、今年の5月にオンラインメンタルクリニックを開設した椿佳那子といいます。
私のクリニックは平日の18時〜24時にオンラインのみで開院している少し特殊なクリニックです。(こころとからだのオンラインクリニック
私の来歴と、この特殊なクリニックを開設するに至った経緯をお話ししたいと思います。

医者はみな医学部を卒業した後2年間、初期研修医として病院でだいたい全ての科をまわり各科の基本的な実地訓練を受けます。
その後、自分の専門科を決めて外科の後期研修医、産婦人科の後期研修医というように専門性を持っていきます。多くの人がいろいろな科で勧誘を受け、自分の科を決められずに迷いますが、私の場合は父(youtube)の「なんか佳那子は精神科医っぽいよ」という言葉を受けて迷わず精神科にきめました。
その後一年、縁あってアルコール依存症治療専門病院にて勤めた後、依存症治療は精神科業界の中でも特殊すぎると気づきもっとジェネラルな知識をつけようと、某大学病院精神科医局に入局しました。

そのときすでに20代後半。その頃の私は、女なのだからハイスペックめな人に選ばれて結婚しなくてはという勝手な義務感(ばかばかしいけれどそう思っていました…)と、一人前(≒専門医)になるための毎日の仕事の板挟みのなかでよくやっていたなと思います。私は他の多くの優等生と同じく、親の期待に応えることを第一優先としていたので(一見そう見えるタイプではないのに)、今思えば、その未熟な人生観を乗り越え脱皮して自分になることがその時には一番必要なことでした。
そう今ではわかるのですが、それを乗り越えることを回避したあまり一時的にではありますが摂食障害になりました。(全ての摂食障害は乗り越えるべき成長段階を避ける回避行動です。)
それが、20代後半〜30代前半の私の暗黒期。その後、なにがきっかけだったのかは覚えていないのですがある意味ふっきれて、もっと勉強したいと思い、遅ればせながら(33歳)大学院に進みました。(その頃摂食障害が治りました。)

大学院での研究テーマでは「精神的なものからくる痛み」に決めました。精神的なストレスが身体的な痛みとなって現れるのは本当によくあることです。私自身小さい頃から疲れてくると左足が痛くなるので不思議だなと思っていたのと、精神科に「痛い」という主訴でくる患者さんの多さ、その治療の難しさに魅せられたからでした。それを研究テーマとしてコロナ禍に大学院生活を無事に終え、カナダに交換留学、九州大学心療内科に国内留学して現在の私があります。

留学など移動の多さからオンライン診察のアルバイトを始め、オンライン診療は今後の未来を担うと確信したものの、大きな改善点があると思いました。それはなにかというと、日本の多くの大手オンライン診療クリニックは主治医制をとっておらず毎回違う医者が患者を診る仕組みになっていることです。
その理由は、遠隔診療の診療報酬の安さに起因しています。病院はどのように報酬を得ているのかというと、各医療行為ごとに点数が決まっており、たとえば「入院中の採血は40点」なので、一回採血を行うと400円(1点10円のため)が病院の収益となります。日本の保険体制により、この場合は400×3割の120円を患者さんが病院に支払い、残り7割の280円を病院が保険機関に請求して受け取ると言う流れになります。(それがまた、審査などあってめんどくさいんです…。)

ところが、遠隔診療だとこの点数が遠隔診療でない場合の半分以下に設定されているため、病院が安定した収入を得られず、安定して医師を雇用することができません。そのため「オンラインで隙間時間に働きたい」医師を寄せ集めた診療体制をとることになり、それにより患者さんが毎回決まった医師にみてもらうことができないでいるのです。低容量ピルやAGA処方のように、とくに毎回同じ医師でなくてもいい医療もあるでしょう。でも精神科は最も主治医制であってほしい科のひとつではないでしょうか。患者さんは自分の弱いところを話せる安全基地を求めているはずですから。

そういったわけで現状の隙間を埋めるべく、私一人で始めたオンライン診療ですが、おかげさまでどうにか続けていけそうな軌道にのってきております。コンセプトは「おじさんにできないことをする」として、IT系など新しいことはどんどん取り入れてより使いやすいクリニックにしていきたいと思います。
本当はLINEと連携してLINE電話が病院からかかってくるみたいな感じだと一番患者さんから受け入れられやすいと思うのですけれど、今のところはとあるアプリ(M3デジスマ診察券)をダウンロードしてもらい、そのアプリ内でビデオ通話をするという形になっています。お支払いはアプリに登録してもらったクレジットカードから。薬は近くの薬局で受け取る(その場合にはそちらの薬局に処方箋をFAXします)かオンライン薬局から郵送してもらいます。
オンライン薬局は便利です。薬剤師さんからの服薬指導もオンラインで受けることができ、その手続きは私の母にもできるほどユーザビリティ高く設計されています。ネックなのは診察から手元に郵送されるまでに2日ほどかかること。なのでお急ぎであればお近くの薬局を利用することをお勧めしています。(オンライン薬局のなかでも速達サービスがあるようですが有料です。)

今回のコラムは私のクリニックの宣伝の様になってしまいましたが、今後は私の日常生活も含め(ニーズあるのかわかりませんが)楽しい連載にしていきたいと思います!

とにかくかわいい実家の犬。

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椿 佳那子

椿 佳那子(つばき・かなこ)

1986年生まれ。精神科医。認知行動生理学と慢性疼痛の研究をしている。2024年5月女性医師による主治医制のオンラインメンタルクリニックを開業。https://kokorotokaradaonline.jp

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