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スクールフェミ「18歳と22歳の個人情報が無条件で自衛隊に提供 〜提供されたくない人は、急いで除外申請を〜」

深井恵2024.05.27

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今年4月の地元の市報の小さな記事に「自衛隊に個人情報の提供を希望しない18歳と22歳の方は5月31日までに除外申請を」というものがあった。
自衛隊に個人情報を提供したい人が申請するのではなく、提供したくない人が申請しなければならないのは理不尽だ。しかもこんな小さな市報記事、読まない18歳・22歳がほとんどなのではないか。自分が知らないところで自衛隊に個人情報が提供されてしまうことになる。
 
これは一体どういうことなのかと少し調べてみた。全国すべての自治体で提供されるというわけではないようだが、全国の自治体の6割以上は提供されているらしい。今から3年ほど前までは、自衛官募集の案内を送付するのに市町村の窓口に自衛隊員が赴いて、窓口で住民基本台帳を閲覧して欲しい個人情報を書き写し、自衛官募集のダイレクトメールを送付していたという。
 
もし筆者自身に、自衛隊に個人情報が提供されて自衛官募集の内容が案内がダイレクトメールで届いたらと思ったらぞっとする。かつての「赤紙」を想起させるからだ。これは憲法違反・法律違反なのではないか。そう思いながら検索を進めると、自衛隊と総務省が2021年2月5日付で各自治体にある通知を出していた。
 
それは「自衛官または自衛官候補生の募集事務に関する資料の提出について(通知)」というもので「1、 自衛官及び自衛官候補生の募集に関し必要となる情報(氏名、住所、生年月日及び性別をいう)に関する資料の提出は、自衛隊法第97条第1項に基づく市町村の長の行う自衛官及び自衛官候補生の募集に関する事務として自衛隊法施行令第120条の規定に基づき、防衛大臣が市町村の長に対し求めることができること」「2、  上記の規定の募集に関し必要な資料として、住民基本台帳の一部の写しを用いることについて、住民基本台帳法上、特段の問題を生ずるものではないこと」とわざわざアンダーラインまで引いて、自衛隊法と住民基本台帳法上の問題がないことを強調していた。
 
この通知の後、自衛隊が欲しい情報を市町村が紙媒体で渡すという対応に変わる。氏名と住所を記した宛名ラベルを提供したり、対象の名簿を出して印刷した紙を提供又は貸与したりするなど、市町村によってその対応は違う。提供する個人情報の内容としては、氏名と住所のほか、生年月日、性別を記載する市町村が多いようだ。
 
今年度中に18歳・22歳になる人で、個人情報を提供して欲しくない人は「除外申請」をしなくてはならない。その方法は、市町村の窓口に直接赴くか、郵送(一部の自治体では電子申請もあり)だ。窓口が開いている時間は、市町村役場の通常の時間、平日のおよそ8時から17時だ(市町村によって若干のズレはあるが)。土日の窓口対応は無い。平日のそんな時間に高校生が市町村の役場の窓口に行けるだろうか。郵送するにはお金がかかるし、本人確認の証明書の写し(健康保険証や運転免許証、マイナンバーカード等の写し)を除外申請書と同封しなければならない。しかも5月31日までだ(締め切りも自治体によって違うようだが、遅くとも6月半ばには締め切られる自治体がほとんどの様子)。個人情報提供して欲しくない人が越えなければならないハードルは、いくつもある。
 
いや、そもそも提供される人のたちのほとんどが、除外申請しなければ個人情報自衛隊に提供されるということ自体を知らないだろう。市報に一回掲載しただけ、市のウェブサイトに掲載してるだけで周知したつもりなのだろうか。除外申請して欲しくないのが本音なのではないかとさえ思える。来年度以降に提供される人とその保護者もほとんど知らないのではないか。本校3年生に、除外申請しなければ自衛隊に個人情報が提供されることを知っているか聞いてみたところ、残念ながら知っている生徒は1人もいなかった。個人情報を提供されたくない人は5月31日までに市役所に申請する必要があることを伝えた。何人かの生徒は申請書に記入して本人確認の写しを取り、後日市役所に申請しに行っていた。
 
それにしても、いくら自衛隊法と住民基本台帳法は問題ないといっても、個人情報保護法と憲法には違反しているだろう。憲法第13条のプライバシー権が侵害されているし、憲法前文の平和的生存権を脅かしていることになる。しかし、この自衛隊への個人情報の提供について一部を除いて新聞でもテレビでもほとんど報道されていない。ネットで検索してもあまり出てこない。かろうじて報道されていた記事をいくつか挙げてみよう。
 
奈良県では高校生が、自衛隊に名簿を提供するのは憲法等に反するとして、奈良市と国を相手取り裁判起こしていた。(2024年3月29日朝日新聞デジタル)素晴らしい行動力のある高校生だ。もっと大きく取り上げられてしかるべきニュースだったと思うが、それほど注目されなかった。長崎新聞では2024年4月16日に除外申請についての記事が掲載され、4月24日には長崎県内21市町村のうち18市町村で自衛隊に情報提供してることが報道されていた。同じ日の長崎新聞の記事によると「防衛省によると、全国の自治体の対応状況は19年度は閲覧が851自治体、提供が719自治体だったが、22年度には閲覧534、提供1068に逆転している」とのこと。私たちの知らないところで自衛隊に提供される個人情報が確実に増えている。
 
防衛費を増額し、武器を共同開発し、武器を輸出できるようにし、自衛官候補生の個人情報を手に入れ……。「戦争が廊下の奥に立っていた」日が、確実に近づいている。
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深井恵

深井恵(ふかい・めぐみ)

九州某県の高校日本語教員。
日教組の「教え子を再び戦場に送らない」に賛同して組合加入。北原みのりさんとは、10年以上前(ジェンダー・フリー・バッシングがひどかった頃)に組合女性部の学習会講師をお願いして以来の仲。

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