自民の歴史的な大敗となった東京都議会議員選挙。共謀罪法案の強行採決、森友学園・加計学園問題に加えて、豊田議員のパワハラ報道、稲田防衛大臣の問題発言等々、選挙直前になってさまざまな問題が浮上して、都民がNoを突きつけた結果だ。
しかし、小池都知事の支持率そのものは下降気味な中で行われた都議会議員選挙。積極的に「都民ファーストの会」を選んだというよりは、「非自民」を選んだ結果の選択肢が「都民ファーストの会」だったであろうことは否めない。
小池さん自身、直前まで自民党員であったわけで、「都民ファーストの会」の議員一人ひとりがいったいどのような政策を考えているのか、どのような主義主張をする議員なのか、全く以て不明である。
そもそも都議会議員とは、都民のことを一番に考えて行動する人のことだと思うが、そうではないから、いまさらながら「都民ファースト」などという名前が「ウケ」たのだろうが、よくよく考えると、情けない日本の政治のありようを映し出していると言える。
都議選と言えば、安倍首相の秋葉原での街頭演説に対するヤジもかなりの盛り上がりを見せていた。ひと昔前にはやった「帰るコール」ならぬ、「帰れコール」。大小さまざまな横断幕・プラカードに、「許さない」「やめろ」と抗議の声が繰り返された。そのときの「こんな人」発言がまた、支持率を下げることにつながった。
あの秋葉原の光景をニュースやYou Tubeで見て、これまで何度も行われてきた「内閣支持率」の世論調査(「安倍内閣を支持する」が過半数を超える)は、嘘だったのではないかと疑った。そもそもこれまでも、自分の友人や知人には、誰一人支持する人はおらず、「世の中いったい誰が支持してるんだろ・・・」と常々疑問に思っていた(類は友を呼ぶで、同じような価値観の人ばかりが友人知人に多いのかもしれないが)。
「口は災いの元」と言えば、稲田防衛大臣の「防衛省、自衛隊、自民党として・・・」云々も開いた口がふさがらなかった。確か、稲田さんは弁護士だったはずだが、そのあたりは専門外なのだろうか。あんな発言をしてもなお、防衛大臣でいられることが不思議だ。
もう一つ「口は災いの元」だったのが、豊田真由子議員。録音されていた豊田議員のパワハラの言動は衝撃的だったが、あの音声を聞いていて、「この人は、こんな暴力をどこで学んだんだろう」と、ふと考えた。生まれ育った家庭環境かもしれない。あるいは、官僚時代の職場で身についたのかもしれない。力関係・上下関係があれば、強い立場の者が弱い立場の者に対して、身体的にも精神的にも暴力をふるってよいというメッセージを、目の当たりにして過ごしてきたのではないか。
暴力は学習して身についていく。自分が気に入らない時には、大声で怒鳴っていい、力でねじ伏せてもいい、そんなメッセージが、映画やドラマを始め、実際に起きている紛争や日常生活の中であふれている。その暴力は、男性から女性へと向けられることのほうが多い。
また、こうも考えた。あの手の言動は、男性議員なら珍しくないのではないか。女性議員だから珍しくてニュースになったのではないか。また、豊田議員の暴力を訴えた秘書も、豊田議員が女性だったから訴えたのではないか、男性議員からだったら訴えていなかったのではないか。つまりは、性のダブルスタンダード。「女性があんな言動をするなんて」といったジェンダー・バイアスが、豊田議員の言動をめぐる報道に見え隠れしていた。
男性からの叱責には耐えられるが、女性からの叱責には我慢できない(・・・今回の豊田議員のケースはあくまで暴力であって叱責ではないが)という男性が、実はまだまだ多いのではないか。男性が上司なのはいいが、女性が上司なのは嫌だと思っている男性はいないだろうか。
豊田議員を弁護するつもりは全くない。しかし、豊田議員が女性だったから、ここまで大きく取り上げられ、何度も何度も繰り返し報道されたのではないかと思えてならない。繰り返し報道されたことによって、まねする子どもたちがいたと、小学校に勤めている知人から聞いた。子どもたちがまた、暴力を学んでしまった。
とんでもない発言が続いて惨敗した自民と、聞き心地の良い言葉で圧勝した都民ファースト。今後、国政レベルで「国民ファースト」なる政党が現れるのか。都知事から首相狙いの行動に出るのか。「レディー・ファースト」は、本当の意味での女性尊重ではなく、女性差別の裏返しであるが、「都民ファースト」はそうではないかどうか。「巧言令色鮮なし仁」。今後の動きを注視していく必要があろう。