ひとりでカナダ大学生やりなおし~アラフォーの挑戦 Vol.15 「心療内科」で見つめ直し中の子供時代②
2023.12.22
心療内科では箱庭療法が重視されており私も毎週患者さんと一緒に作品を作っています。箱庭療法とは、ユング心理学の流れを受けて発展し1965年に心理学者河合隼雄が導入したもので、砂の入った箱の中に人、動植物、乗り物、建物などのミニチュアを置き、自分の無意識を遊びながら表現するという心理療法です。大事なのは子供の心に戻って素直な気持ちで作品作りをすることなので、箱庭に触れる前にまずトランプやジェンガなどのゲームをします。その後やっと砂を触りだし地形を作ったり、自分がなんとなく気になったミニチュアを砂の上にのせて行きます。作り終えたら題名をつけ、登場人物は誰なのか、どんな気持ちなのかなどをリスニングしてから写真をとり、翌日箱庭療法に詳しい心理士さんに分析してもらいます。心理士さんは手弁当で専門家のところに1年通ってトレーニングをしたという方なので、大変知識が豊富で勉強になります。教えてもらったのですが、空間認識の心理学では箱庭内を右上、右下、左上、左下に区切りそれぞれ象徴する意味合いがあるとしています。簡単に言うと左が母、右が父、上が意識で下が無意識。なので、ミニチュアを箱の中のどこに置くか、がポイントになってくるのです。①の写真で言うと、起源を表す左上から流れてきた川なのに、最後が心もとなく途切れているところが未完成の気持ちを表しているそうです。桜と虹はともに「儚さ」のシンボルとのこと。②は高校生の時の友達とのお別れをテーマにしているのですが、友達の行く先に死神やお墓があることは悪い意味合いではなく、むしろ「再生」と考えてよいらしい。③のカメは、陸に上がったり海に潜ったりすることから意識と無意識を繋ぐ存在らしいです。
箱庭はそれによって患者さんの内面を知ることができるばかりか、患者さんが自分の無意識と対話することで人格的成長を促す作用があるそうです。また、箱庭療法は自分ひとりでやるものではなく、セラピストに見守られながら遊ぶようにやるものなので、安心感が育まれ癒されるという効果もあるらしく、私の場合は①を作った日の夜ものすごくよく眠れたのを覚えています。気になって調べてみたところ、箱庭療法アプリもあるんですね。どうぶつの森などのゲームにも、箱庭療法的作用があるのかもしれません。
私にとって生まれて初めて作った①は亡くなって日の浅い、両親の飼い犬をテーマにしたものだったので親に見てもらいたい気持ちが強く、母に見せたところ一瞥して「ふーん」と言っただけでした。「やっぱり、こういう親なんだよなぁ。」と思いました。成績や給料出世などの実益的なことでない、私の内面的な機微にはあまり関心がないのです。もしくは、母の方が犬の死にはショックを受けていていまだに苦しんでいるので、凝視できなかったのかもしれませんが、いずれにしても、私は悲しさというものを親に見せた覚えがほとんどなく、おそらく小さい時からこのように、行動療法でいうところの「消去(注)」をされてきたからなのだと思う。一方、これらをカナダにいるボーイフレンドに見せたところ「なんて感動的でラブリーな作品なんだ!ストーリーを教えてくれる?こことここのコントラストがシュールレアリスティックな印象を与えているところがすごくいいと思う。また次を作ったら送ってね!」といった反応をしてくれたので、とても幸せな気持ちになって、やっぱりたとえ他に何もなくてもこの人は私のkeeperなんだなぁと思いました。
もうひとつ今学んでいるのは交流分析という心理療法で、精神分析を口語的につかえるようにしたもの、と言われており治療以外にも教育などで取り入れられている手法です。とっても簡単にいうと、ひとりの人の中には3つの自我状態(1)親:親から与えられた自我 (2)大人:大人に成長するにつれ完成する自我(3)子:子供の頃から持っている自我 があり、人格とはそれぞれの比重でできていると言え、個々の場面で出てくる自我状態を分析することでその時起こっている心理動態の理解をしていきます。人との交流でわきあがってくる自我から出る言動というのは、幼少期に親からほしかった反応を引き出す言動のパターンもしくは、欲しくない反応を引き出す言動パターンなのです。なぜなら、子供は親からいい反応をもらえないときには次に、親からなんでもいいから反応をしてもらうための行動をするからです。子供が欲しいのは親の時間、親が与えるべき愛は子供のためだけの時間であり、愛=時間なのだと書物に書いてありました。これはすごく腑に落ちました。会っているだけ一緒にいるだけで愛が育まれるわけではなく、自分の一番大切な持ち物=時間を与えないといけないということはなんだか自分に足りない考えだった気がしました。そういえば数年前、仲の良い友達に「さざんかは、ケチだよ。」と言われたことがありずっと心に残っていました。当時は言われたことに対し反発心がありましたが、金銭的なことでなく時間的なことを言っていたのだと今では思い、図星だったからこそ心に残っているのだと思います。
注:行動療法の基本原則で、好ましいことをした際には褒美を与えてその行動を「強化」し、好ましくない行動をした際には無視をして「消去」するというのがあります。
①テーマ:お別れ 三途の川を渡る愛犬と、ドナルドダック夫婦(私の両親)
②テーマ:お別れ 中学~高校まで一番仲の良かった友達との終了を表しています。
③テーマ:休憩 3連休前日に作ったのでこうなったと思われます。