『週刊金曜日』8月26日号(1101号)に掲載されていた記事を読んで、我が目を疑った。「高い投票率の区内高校の教育内容を警察が電話質問 横浜市青葉署が教育干渉か」という見出しで、その事実は語られていた。神奈川県横浜市の青葉区内の一部の投票所で、18歳の投票率が高かったことから、警察が学校へ教育内容について電話で質問をしていたというのだ。この事件、大手マスコミで報道されただろうか。私の知りうる範囲では、報じられたニュース番組、新聞記事を見たことはない(関東では報道されたのかも?)。
週刊金曜日の記事によると、教育関係者からの通報で、大山奈々子神奈川県議が調査にあたったという。青葉署の生活安全課の職員が7月15日に区内の県立高校3校に電話し、「(青葉区内の)18歳の投票率が高いが、何か特別な取り組みをしたのか」「政治的中立性についてどう指導したのか」などといった質問をしたらしい。青葉区の一部の投票所で18歳の投票率が73.49%だったことを警察が「問題視」したようだ。
総務省の速報(2016年7月11日発表)によると、7月の参議院議員選挙の18歳、19歳の投票率は、それぞれ51.17%、39.66%だ。この投票率、私自身は「思ったよりもかなり低いな」という印象を受けていた。あれだけ世間で「18歳選挙権」と騒いでいたから、もっと高い投票率になるのではないかと思っていたからだ。横浜市青葉区の投票率を見たとき、自分のクラスの投票率が73%弱だったことを思い出した。私も密かに県警から調査されているのかも(?)と思うとぞっとする。週刊金曜日の記事には「他の県でも同じような事例があったと聞いている」との教育関係者の証言も載っていた。警察による教育干渉は全国でどのくらい行われているのだろうか。
19歳の投票率が4割弱だったのに比べて、18歳の投票率が5割を上回ったのは、学校教育の影響ではないかと考えられる。全国各地で選挙管理委員会が18、19歳の人に投票してもらおうと、若者向けのポスター等さまざまな工夫をしていたこともあるだろう。校内に「投票へ行こう」というポスターがあちこちに貼られていた。現役の高校生で有権者だったのは、高校3年生の4月から7月上旬生まれの人たち。一学年のうちの4分の一強の割合だ。それでも投票率は5割を超えた。もし投票日が年度の終わりの頃、つまりは、現役高校生3年生の大半が18歳になっている状態での投票であったならば、もっと高い投票率になったのではないかと推測する。
第24回参議院議員選挙に関連した警察の不穏な動きは、大分県警による不法侵入での監視カメラ設置が記憶に新しい。あの事件で大分県警は「公職選挙法で選挙運動が禁止されている自治体の特定公務員『徴税吏員』の出入りを録画するのが目的だった」と言っていたそうだが、果たして本当にそうだったのか。徴税吏員などという言葉、これまでほとんどお目にかかったことがない(私だけ?)。とってつけた感が満載だ。県警はカメラを設置した署員を建造物侵入容疑で書類送検する方針だというが、上からの命令で設置したのでは?と思ってしまう。本当のところ、どうだろう。「トカゲのしっぽ切り」に終わらせようとしていないか、各級議会での追及、そして全容解明が待たれる。
自民党がHPで「密告フォーム」で市民からの通報を求め、警察も選挙違反があれば通報するよう求めていた。監視カメラによる監視にとどまらず、隣近所に住む市民同士がお互いを監視する社会を推し進めているような気がしてならない。戦時中の「隣組」のような状態が、情報化社会の下、新たな形態として蠢いている。こちらとしては、ツイッターやSNS等を用いて、情報発信・情報共有してつながっていくしかあるまい。たとえ、それが「監視」されていても。いま監視されるべきは市民ではなく、警察や権力者なのだから。