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 18歳で選挙権が持てるようになった今、10代のかれらの選択や行動がこれからの社会を変えていく機動力になっていってほしいと切に願っていました。でも、結果は彼らだけでなく、ほとんどの世代の過半数が現政権を支持したようです。報道やメディアによって、私たちが知る権利が規制、統制されているとしか思えないけれど、今後ますます巧妙に操作されていくのでは、と不安がぬぐえません。

 さて、今回は思春期真っただ中の「中学生」たちのこと。18歳なんて、選挙なんて、自分にとってはまだまだ先のこと、遠いことだと思っていることでしょう。この人たちと接する機会はめっきり減っていたのですが、昨年から中学校での出前授業を引き受けています。「中学生に向けて、性やデートDVをテーマにぜひやりたい」という、ある自治体の男女共同参画市民会議の意欲と熱意に動かされました。

 実のところ、中学生に対しては、私の中に「個別で面接するならまだしも、学年や学校全体での講話となると、個々の成長度、発達や成熟の温度差がやたら大きいし、焦点の絞り方が難しいしなあ・・」という苦手意識がありました。心身ともに成長期なんだけど微妙に中途半端な時期、まるでお子様もいれば、身体も心も高校生並み、という生徒もいますよね。「難しいなあ」という思いがあったといえます。

 高校生になると、そういうことをほとんど気にせず、直球ストライクゾーンで話ができます。15の春を越えたとたん、なぜか彼らは変わります。高校生になったとたん、恋愛や性の問題は、まだ未知の世界の生徒たちでも興味津々に聞いてくれます。いずれ自分の身に起こるかもしれない、との受け入れ態勢ができるのでしょう。その意味で、直球勝負で「性」や「暴力」を取り上げることができます。

 性暴力の4割は、10代とそれ以下の子どもたちが被害者です。その事実を考えれば、できるだけ早い時期に正しい知識と情報、「自分を大切にする」「自分を守る」権利について学ぶことが重要です。それなのに、中学生への性教育やデートDVへの取り組みはまだまだ十分ではありません。
せっかくその機会を提供してもらえるなら「やってみるか」という気持ちで準備したデートDV中学生バージョン。
 「恋」を含めて、思春期の交際、友だちや家族、学校の中での人間関係での「お互いを尊重する関係」に焦点をあてています。そして、「恋」する前に、これからのために、今は実感がなくても、知っておいてほしいこと、考えてほしいことを込めています。

 さらに、思春期には自身のセクシュアリティの葛藤や自覚が芽生えてくることも増えます。そのことを開示する生徒は「以前に比べると増えている」と現場の先生は言います。
 その意味で、男女の異性愛にとどまらない視点と同性への関心、同性間の関係、恋心も含めて心配りが必要です。それと親との葛藤、虐待被害。盛りだくさんですが、シンプルかつ山場を作らないと集中してもらえません。常に生徒の動向を見ながらのライブですね。

 先日、実施した中学の生徒(今回は2年生)による感想文冊子が届きました。
 「男女ともにお互いを尊重する関係について考えよう~恋する前に知っておきたい思春期の交際~」
 どの生徒の感想も、私の予想を超えた受け止め方が文面にあふれています。感動です!
 一部を皆さんにシェアします。侮るべからず、中学生! 私自身の反省を含めて。
 (どれも丁寧な長い感想文を一部抜粋・修正しています。原文ママを心がけました)

<女子の感想>
 *DVは暴力をふるうこと以外にもまだまだたくさんあったということをはじめて知りました。相手のことも自分のことも大切にするためには、ただ好きだから、だけではいけないということをあらためて感じることができました。好きだからしかたない、好きなら当たり前という感かくはまちがいで、好きだから大切にできるようにしたいと思います。もしも友だちから相談されたら「それは好かれているからだよ」と言うのではなく「それは相手がまちがっている」とはっきり言えるようにしたいです。自分にも相手にもよりすぎるのではなく、自分は自分、相手は相手といった区別をきちんとつけられるようしたいです。たとえ、仲のよい友だちでも交際相手でも、誰にでも自分と相手の境界線があることを意識して、好きでもその境界線をお互いにこえることのないようにして過ごしていきたいです。

 *暴力はとてもこわいものだけど、もしふるわれても逆らうことができないのは、少しわかる気がしました。・・大切な人に暴力をふるってしまうのはどうしてかわかりません。私は周りの大切な人を尊重することを大切にしていきたいと思いました。私は友人関係でトラブルになったことがありました。相手をたくさん傷つけてしまいました。私自身もとても傷つきました。今は仲直りしてたくさん遊んだり話したりしています。今回、改めて相手のことを考えて傷つけないようにしようと思いました。友だちや好きな人の大切な時間を奪って束縛することはとても最低なことだとわかりました。大切な人だからこそ、束縛するのではなく、尊重し楽しい時間を過ごせるようにしたいと思います。

 *私はそのことについては知っているし、親族にそれでトラブルになっていた人がいるので、ふりかえる感じで聞いていました。数えきれないほどの人がいる中で出会い、つきあうことになったのに、感情の乱れで大切な人を傷つけるのは悲しいことだなと思いました。

 *将来彼氏ができるかどうか、わからないけど、自分のため、相手のためにいいよ、いいよとなんでも許すのではなく、きびしく、いけないことはいけないと言うことができるようにしたいです。

 *デートDVを知ったから、これから先、友情や恋愛に役立てていこうと思ったし、自分が相手にされたらいやなことは絶対したくないと思いました。直接目を見て話すことだけでなく、LINEなど目を見ない会話も毎日気をつけて接していきたいです。

 *“自分らしさ”を大切にしていきたいと思いました。・・もしデートDVにあったら、自分から離れようと思いました。今日聞いた話をいかしながら生活していきたいです。

 *今回はまだ内容が難しいと思ったけど、成長するにつれ講座内容がよくわかるようになる時がくると思うので、しっかり覚えておきたいです。


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<男子の感想>
 *ついつい友だちにそういうことをしてしまったり、親などに暴言をはいてしまったりすることがあるので、これからは今まで以上に気をつけていきたい。今日の内容はわからないところもあったけれど、理解できたところは直したり気をつけたりしていきたい。

 *僕はまだ付き合ったことがなくて話の意味の深いところまで理解するのは不可能でした。けれど「つきあっているから」「彼女だから」~~していいというのは違うというのはわかりました。

 *今までは「男だから」「女だから」という考え方をもっていたけど差別と一緒になるのでそういう考え方をもたないようにしたいです。

 *今ぜんぜん異性に興味がないし、異性といても誰にも好きという感情が出ないしドキドキもしないから、自分がどうなったのか心配です。しかも、最近男子といるほうがおちついて安心できるような気がします。男子といたほうが何倍も楽しいです。だから自分がゲイなんじゃないかと思っていて心配です。もっと女の人にも興味をもつように、恋愛小説とか読んでみたい。今日のこうざはおもしろかったです。

 *これから高校、大学、成人となっていく中で必ず異性との交流があるけれど、相手の意思を思って交流をしていきたいです。中学高校と思春期でイライラすることがあるけど、みな同じなのでカバーしあって生活していきたいです。


 どの感想も一部抜粋ではなく、全文を読んでいただければ、彼らの言葉の意味がもっと伝わるのに、と残念です。
 中学生に出会うと、1~2年のうちは女子のほうが体格も精神年齢も男子を上回っているように思います。感想にもそんな成長の進捗度性差が見え隠れしていますね。苦手意識のあった中学での講座でしたが、少し私を楽にしてくれた彼らに感謝しています。

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具ゆり

具ゆり(ぐ・ゆり)

フェミニストカウンセラー
フェミニストカウンセリングによる女性の相談支援に携わっている。
カウンセリング、自己尊重・自己主張のグループトレーニングのほか、ハラスメント、デートDVやDV防止教育活動など、女性の人権、子どもの人権に取り組んでいる。
映画やミュージカルが大好き。
マイブームは、ソウルに出かけてK-ミュージカルや舞台を観ること。

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