先月30日、兵庫県宝塚市も同性カップルをパートナーとして認める公的書類を発行することが決まった。渋谷区、世田谷区に続いて、全国で三例目だ。条例を制定した渋谷区では公正証書が必要だが、カップル側の公正証書作成の負担をなくすために、要綱を制定した世田谷区にならって、宝塚市も要綱の制定にしたという。
2015年11月30日の神戸新聞によると、宝塚市の中川市長は「宝塚が生きやすい一歩を進めるため、欠かせない施策。今後は国が同性婚を認めるよう、他の自治体と協力して働きかけたい」とも発言したそうで、今後、更に全国各地の自治体で同様の気運が高まり、国が同性婚を認める方向で動いていくことを期待する。
宝塚市で同性カップルをパートナーとして認める公的書類を発行することが決まった前日、神奈川県海老名市の市議が、同性愛者を「生物の根底を変える異常動物」などと書き込んで、炎上したことが話題となった。同市議はすぐに発言を撤回し、謝罪して投稿を削除。市議会議長から厳重注意を受けた。市のホームページなどには、200件近い意見が寄せられ、その大半が差別発言の市議を批判する意見だったという。
数年前に同様の差別発言があったなら、このような展開になっていただろうか。テレビ番組ではまだまだ「笑い」の対象として登場させられている側面がなきにしもあらずの性的少数者だが、今回の市議の差別発言への人々の動きは、社会が確実に性的少数者への理解を深めていることの表れとして受け止めた。
そして、先月のコラムにも書いたテレビドラマ「偽装の夫婦」も、同性パートナーと一緒に生活を始めるという展開になっている。主人公の男性同性愛者は意中の男性との生活を始めたし、主人公の異性愛者の女性も、告白された同性愛者の女性と暮らし始めた。性的少数者への理解を啓発するような台詞も、ドラマの随所に表れているし、「女っぽい男」や「男っぽい女」といったステレオタイプの同性愛者像を払拭し、「普通にどこにでもいる姿格好で、同性愛者の人たちもあなたの隣で生活している」と視聴者に受け止めさせているような気がしている。
しかし、残念だったのは、主人公の男性同性愛者が、同性愛者であることが職場にバレて、職場を去らなければならないという展開になってしまったことと、「違いよりも共通点が多い」云々の啓発につながる言葉を主人公が発したときに、なぜかいわゆる「オネエ言葉」に切り替わってしまっていたこと。あの台詞も、普段通りの言葉遣いのままで言わせられなかったのかなぁ・・・実に惜しい、本当に惜しい。最終回はどのような展開になるのか。「やっぱり異性愛に戻る」という展開になったりするのか。それとも同性カップルでハッピーエンドになるのか。気になるところである。
「偽装の夫婦」が大人の同性愛を描いている一方で、「トランジットガールズ」は10代20代の同性愛を描いている。同性を愛していいのか、どんなふうに愛せばいいのか、自分自身が同性愛者かもしれないと気づき始めた若者の悩みに、寄り添っているように思われる。設定が義理の姉妹の同性愛なので、姉妹で愛し合っていいのか・・という、同性愛者の本来の悩みとは違った意味合いが入ってくるのが面倒な展開だが、今後の展開が非常に気になる。ハッピーエンドは難しいか、仲良し姉妹で終わるのか、全く先が読めない。
テレビ番組だけではなく、学校現場でも性的少数者への理解を深める職員研修が、当たり前に導入されてきている。当事者の方に来ていただいての講演や、生徒の中に性的少数者がいるものとして教壇に立つといった心構え、実際に性的少数者であることを打ち明けてきた場合の対応など、さまざま角度からの研修が行われるようになった。多様性を認めていた夜間定時制高校での経験を活かして、全日制高校でも生徒理解や生徒指導に引き続き臨みたい。