YURIさんのフェミカンルーム80 刑法性犯罪規定改正案、可決!
2023.07.11
ラブピ読者のみなさん、こんにちは。
7月ですね、暑い夏は苦手です。若いころから頭と顔から吹き出る汗に困っていたのだけど、最近「多汗症」の記事を読んで、ただの汗っかきじゃないのかもと気づいたばかり。
6月16日、「刑法性犯罪規定」の改正案は衆参両院で全会一致で可決されましたね。
早々と7月13日に施行されます!
ジェンダーギャップ指数世界サイテーレベルのこの日本で「不同意性交罪」の刑法が実現!
この「不同意」とは「意に反する性行為」! 処罰されて当たり前だろ、という事件でも、これまでの刑法では「暴行・脅迫、抗拒不能」要件の高いハードルに阻まれてきた。泣き寝入りを余儀なくされてきた被害者たちの無念を忘れてはならない。
この改正で、性交同意年齢16歳への引き上げ、公訴時効の延長、グルーミング罪や撮影罪の創設などなど、大々的なアップデートができた。わたしたちの#MeTooの声が政治を動かしたんだ! って、誇らしく思っている。
その一方で、人権と多様性を認めない時代に逆行するような悪法を、数の力で押し切られて強行に成立した法律もある。相変わらず強引な国会運営を見せつけられ、苦々しい。
2017年に110年ぶりに改正された刑法性犯罪規定には、3年後に見直すとした付帯決議があった。検討会に続いて法制審議会の専門家討議にはやきもきしたものの、ほぼ反映された改正だと思う。
「当事者の声を反映した法律を」「私たちのことを私たち抜きで決めないで」そう訴えて、ロビー活動を続けてきたSpringの山本潤さん。被害者支援をしてきた法律家、専門家委員の皆さん、お疲れさま! みなさんの熱意と苦労と貢献があってこその快挙です。
個人的には、潤さんの一途な思いが報われたね、実を結んだね、と労ってあげたい。
この間、検討会と法制審議会の議事録はSNSでアップされてきた。その進捗状況や課題、問題になっていることが迅速に可視化できた。ここで何が話されて、どんな議論がなされているのか、個々の委員の発言からその意図、考えを知ることができた。オンタイムの情報発信によって、政治や法律が身近になった。
まさにPersonal is Political。「私」の問題として考えることができた。
私たちの声は決して小さくはなかった。その声はもう無視できない時代に入ったのだ。
2019年に地元でフラワーデモを開催してから4年が過ぎた。
フラワーデモでは「#性暴力を許さない」声をあげ続けてきた。
「刑法改正」はわたしたちが#MeTooで訴えてきた目標のひとつ。ホッとしている。
とはいえ、残念ながら性暴力や性虐待の事件はいまだ後を絶たない。それ、被害者が後を絶たないことでもある。同じような事件や裁判がいまだ繰り返されていて呆れるばかりだ。
事件の報道のたび反吐も怒りもでるが、事件化や報道が増えたのも事実。
元ジャニーズJr.の告発に見られるように、闇に葬られてきた男の子たちの性被害も表ざたになってきた。
「性」のことは、隠すから余計に語れなかった。
「悪いのは自分じゃなかった、隠さなくてもいい」そうわかるだけでも、当事者も社会も変わっていく。いやまてよ、変化はすでに起きているじゃない。
それに、これがまだまだ序の口だとしたら・・・。
加害者を放置してきたツケは大きいが、犯罪をなかったことにはできない。
被害者の権利を守れ! 加害者には相応の処罰を!
「もう黙らない」という声で、明らかにされる真実は今後も増えていくだろう。
この改正刑法が「性暴力のない」社会への大きな役割と変化をもたらすと信じたい。
どんな膿が出てくるのか、出していけるのか。性を搾取してきた社会がどこまで変わるのか、この先を見つめていきたい。
ところで、前回のコラム(No.79)を読んだA美さんから手紙が届いた。
フェミカンおつきあいは7年あまり。当事者でフラワーデモにも参加してくれてます。
(手紙を一部紹介します)********
お元気でお過ごしですか? ラブピ―のコラム読ませて頂きました。
具さんと出会って7年が経ったということは、7年間入院していない!! ということですよね・・・すごいことです!!
最初の頃は、具さんと約束したカウンセリング予約の日が待ち遠しくてたまらなかった・・・
それが今では、次の予約まで日が開いても、そわそわして落ち着かないということがなくなりました。 少しは成長出来たのかな!?
●月にカウンセリングを受けてから特に変わりなく毎日を過ごせています。
コラムを読んだら無性に具さんの声が聞きたくてたまらなくなりました。
A美
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A美さんが「7年間入院していない」ことは、彼女がトラウマを乗り越えてきた軌跡と回復を物語っている。この30年、トラウマに苦しめられ半年に1回入院を繰り返してきたのだから。
自分を被害者化するのに1年かかったA美さん。「過去を過去のものにしたい」その主訴にたどりついて取り組み始めたトラウマカウンセリングは、100回近くになった。彼女との道のりは、私にとっても決してたやすい道ではなかった。
10代で、正確には中学生の時に被害を受けてからカウンセリングに至るまで、すでに30年が過ぎていた。この間、半年に1回の入院を繰り返してきたという。なんてこと・・・。
被害直後から、当然ながら彼女にはさまざまな症状が出ていた。引きこもり、リストカット、パニック発作、そして摂食障害。その症状は悲痛な叫びの代わり、あげられなかった悲鳴の代わり。それがどこから来ているのか、何を訴えているのか、当時の医者も家族も気づかなかった。聴かなかった。子どもの自分に何が起きたのか、わかるはずもない。せめて「何かあったの?」と、ひとことでも誰かに聞かれていたら、自分からは言えなかった彼女のその後は、もしかしたら何かが変わっていたかもしれない。
自分の部屋で、深夜に起きた性暴力の加害者は、身近な人間だった。再被害を恐れた子どもにできたことは、夜になると家を抜け出して外で夜を明かすことくらいだった。
長年の精神科治療と入退院を繰り返してきたA美さんが、ワンストップセンターと地域の女性相談を訪れて私とつながったのは、再びの被害を受けた後だった。
面接当初、うつむいて黙り込んでしまうA美さん。長い沈黙には手をこまねいたが待つしかない。ラポールをもてるまで、目を見て話ができるようになるまで、あの沈黙をよく待てたもんだと今でも思う。正直言うと、どうしたものかと、私も困っていたのよ。今じゃA美さんとのカウンセリングエピソードになったけどね。
話さない、話せないんじゃない、いろんなこと考えてなかなか言葉にならなかっただけなんだよね。沈黙には意味がある、って教えられた。おかげで修行できました。
一進一退を繰り返しながら隔週続けていたトラウマカウンセリングは、5年を過ぎるころから主訴は母娘関係となり、今はゆっくり自分の人生を取り戻している。コロナでオンラインになり3年対面していないけど、画面の向こうではにかみながら笑いかけてくれる。
「アイツに死んでほしい、私の人生を返してほしい」と泣いてた日は過去になりつつある。
A美さん、少しどころか、いっぱい成長してるよ!
いつかあなたを見送る日が来ることでしょう。でもそれはお別れじゃないからね。
コラムに書くのをOKしてくれてありがとう。
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<おまけ>「YURIさんのフェミカンルーム」近況報告
個人ルーム「ウィメンズカウンセリングさらん💛」開設です。(連絡先まだ非公開)
ゆるやかに、カウンセリングとスーパーバイズを続けています。
有料ですが、ご相談に応じます。
シニアサロン、CR、おとなの性教育など、面白くて楽しいこと、まだやりたいです。