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眠りが浅いせいか、明け方に二度寝をすると、ばんばん夢を見ます。
ベッドの横には窓があって、夢うつつで外の風景が変わります。草原になったり港になったり、昔から夢に出てくる街になったり。
ある朝は、暗い倉庫街が広がっていました。ウチは5階ですが、その時は1階になっていました。
するとそこへ、大きなトレーラーがやってきてその側面が開きました。きらびやかな光と共に現れたのは金髪の美少年たちでした。そう、竹宮惠子や萩尾望都の、袖口がすぼんだフリルのシャツを着たあの人たちです。

彼らは倉庫街に降りてくると、ビールケースやトロ箱みたいなところにそれぞれ腰を掛けて足を組み、物憂げな顔でじっとこちらを見つめています。
私は「どうしたん、どうしたん、何しに来たん」と言いながら窓から飛び出し、「どこから来たん? なにかの公演の途中で寄ったん?」と大阪弁で聞いて回ります。
どうやら彼らは、ロシアから来たらしいということがわかりました。
「へーそうなんや、ま、とりあえず皆で飲もか」
と私が手をあげると、ワインや料理を持ったボウイが次々と現れて、すっかりパーティー会場に様変わりしました。

そのあと場面が切り替わり、私はベッドの上に二日酔いで臥せっています。もちろん美少年もトレーラーも跡形もなく去った後のようです。
すると同居人の若い男子(架空の人物)が、アイパッドを持ってやってきました。
「昨日のお代、立て替えといたからちゃんと払ってよね」と電子マネー決済の画面を見せます。そこには30万円の数字が。
「ちょっと待って」と財布を見ると中身がありません。
「ないわーごめん、後で払う」と答えたら、「だって茶屋ちゃん、酔っぱらってあの子たちに、パンツ見せてくれたら1000円あげる、って大盤振る舞いしてたから」と呆れた顔で昨夜のふるまいを教えてくれました。

というところで目が覚めました。
なんていうことかしら…とどんよりした気分になりました。ただのスケベ爺じゃない? そしてやりかねないわ…
ああ、気を付けないと!

見たとたん反省させる夢ってなんなのかしら。体に悪い。
でもこれは常日頃、私が気にしていることで、若いスタッフの男の子をそういう目で見ないようにしなくちゃ、とか、恋愛話は一切もちかけない、とかそういうことで、でも年を取って認知症になったら、街角で知らない男の子のお尻を触って、怒鳴られたりどつかれたり蹴られたりするんだわ、きっと。という心配と願望が結実した夢だと思いました。
それにしても生きているうちに過去の産物になるとは思わなかったわ、私のエロティシズム。ジャニー喜多川の性加害のニュースに触れているときに、一番しっくり来た発言が近藤真彦の「みんな知ってたでしょ?」でした。

そうです、折に触れて知っていました。知っていて、ずっとそれが「子どもへの人権侵害」という言葉に置き換わらなかった。真相はわからないという言い訳で、あろうことかエロコンテンツとして消費していた部分も大きい。

小学生のころは、夜寝るときに裸のトシちゃんやマッチに遊んでもらう夢をみて興奮していました。どんな遊びだったのかというと、あまり覚えていないのですが、子供番組に出てくるようなカラフルな部屋で、テニス? 大きな黄色いゴムボール? トシちゃんの胡坐の上に座る? とかそんな感じだったと思います。どんな感じだ。
高学年になって登場した光GENJIは子どもっぽく見えて、対象がフミヤに変わっていったかなー、という具合です。

その頃に出されたという暴露本を知ったのは20代になってからだと思いますが、その時も流していただけで、そんなに問題だと思いませんでした。子どもの頃からずっと、男性アイドルは性的対象として見るか見ないかだけで生きてきたように思います。
時は流れて、闘うひとたちのおかげで意識も変わり、自分のことにカマけていただけの私は罪悪感を覚えます。

マッチの「みんな知ってたでしょ?」という問いかけは、ファンの人のみならずけっこう多くの人たちに過去を振り返らせたのではないでしょうか。
性虐待を受けていた子どもたちを放ってきた自分。
ここで、そんなもんじゃない? べつに私は悪くないし、と開き直るか、ああ、さすがに大人になってからそれはないよな、と思うかどうかは分かれ目だわ、と思います。

性的なことは、自分がその時代に生れ落ちて生きてきた中で適応したりできなかったりの結果だから、ある程度しょうがないとはいえ、他人に、ましてや子どもたちに自分のそれを強要するのはお門違いだと知っていたい。

ジャニー喜多川の児童虐待、市川猿之助のパワハラ/セクハラ、キャンドル・ジュンのモラハラ、Colaboへの攻撃、トランスジェンダーの女性たちへの差別。
リアルに、そしてネット上で止まないくっきりとした性暴力に、自分の罪悪感や時代の変化への怯えをごまかすような加担はしたくない。

というか、私が夢を見て、ほんとに窓から落ちて死んだら、あの人は昔の天国へ旅立ったのだと思ってもらってけっこうです。って、なんだそれ。

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茶屋ひろし

茶屋ひろし(ちゃや・ひろし)

書店員
75年、大阪生まれ。 京都の私大生をしていたころに、あたし小説書くんだわ、と思い立ち書き続けるがその生活は鳴かず飛ばず。 環境を変えなきゃ、と水商売の世界に飛び込んだら思いのほか楽しくて酒びたりの生活を送ってしまう。このままじゃスナックのママになってしまう、と上京を決意。 とりあえず何か書きたい、と思っているところで、こちらに書かせていただく機会をいただきました。 新宿二丁目で働いていて思うことを、「性」に関わりながら徒然に書いていた本コラムは、2012年から大阪の書店にうつりますますパワーアップして継続中!

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