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ある日はときめくお知らせがありました。これから一週間、ブログ(当時はアメブロを使っていました)の活動を頑張り最もアクセス数が高かった3人にある番組の出演チャンスを与えてくれると言う話でした。その番組は色んな駅とご当地の名物を紹介する企画で、ちょうど○○区を取材することになっていたそうです。それで○○区のローカルアイドルと名乗っていたこのアイドルグループが取材依頼をされたようでした。その時はテレビに出演することがデビューに繋がるすごいことだと思っていたので、絶対に頑張って出演してみせると思っていました。努力する事には自信がありましたから。

それから撮影会やレッスンを終えると、毎晩家に帰りパソコンを開いてひたすらブログのペタ(足跡)を付けたりと、アクセスを増やすために何時間もかける日々が続きました。そして出演者発表の日。努力に報われアクセス数トップを達成した私は、結果発表をとても楽しみにしていました。4期生として入った仲間の皆も私の出演を確信していたと口を揃えました。しかし、放送出演が決まった3人の中に私の名前はありませんでした。

一人はグループのリーダーとして活動をしていた人で、実力派だったため仕方がないと思いました。しかしもう一人はアイドルにしては度を越えているグラビアの活動を積極的にしている子で、最後の一人はAKBのあるメンバーにとても似せている―それで社長が個人的に推している子でした。番組に出る子は最初から決まっていたんだと思いました。彼女たちは番組に着ていく衣装らしきものを貰いましたが、そこでもう一つの疑問が湧いてきました。そのユニフォームがちゃんとしたユニフォームの形になっていなかったのです。社長によるとユニフォームは元々布みたいな状態で渡され、自分で直して着るものだと言われた。その状態のまま売られる服なんて今まで見たこともなかったので、私もいつかあんなものを渡されるのかなぁと心配になりました。宣材写真も自腹、レッスンも自腹で特にブログの宣伝などをしてくれてる訳でもないし、私たちが稼いてるお金は一体どうやって使われているんだろう、と疑問だけが膨らみました。

事務所では2,3か所撮影スペースがあり、ほぼ毎日のように撮影会が開催され一人一回10時間から12時間程の拘束時間がありました。他の会社の撮影会に出されたり、有料チャットに出されたりすることもありましたね。交通費などが支給されるわけでもありませんでしたし、事務所が私たちのために使っているお金はほぼゼロ。もちろん撮影会で売れない子もいましたが、大体は満員となり、特に週末は一人当たり少なくとも一日7~10万円の売り上げを上げている状況だったので、そこまでお金を惜しむ理由が分かりませんでした。

それでも最初は良かったのです。給料として私が得た全体の収入の3割が貰えると思っていたので、何も疑いませんでした。一回撮影会に出れば、三割だとしても一日に2万円から3万円。週末はそうやって固定的な収入が得られて、平日も他の活動をしていたため、収入は私の予想より高いはずでした。好きな仕事をしながら、バイトで稼ぐお金と同じような金額を貰えるはず、でした。

しかし活動から数週後、私より早めに活動を始めた女の子たちから聞いた話は衝撃的なものでした。その二人は既に2,3か月活動をしているのにも関わらず、給料が貰えてないと言っていたのです。給料の支払いが遅れ社長に問い合わせたところ、三菱銀行の口座を開かないと給料がもらえないんだとか。訳が分かりません。振込手数料を払う事すら惜しかったのでしょうか。でも問題はそれだけではありませんでした。給料を貰っている子でさえ、受け取る金額が間違っていたのです。撮影会が毎回「満員御礼」になり、売れていた子でさえも受け取った金額はわずか2万7千円だったとか。目上の人にモノが言えない日本の文化のせいもあったかもですが、すぐ「弁護士」を口に出す社長を恐れ、誰一人その事についてちゃんと話せなかったようでした。私はまだ自分の目で確認できてないことだったのもあり、もし自分の給料もおかしいのであれば話し合ってみようと思っていたため、不安を抱きながらも活動を続けていました。

しかし活動を続けることもそんなに簡単ではありませんでした。全ての撮影会は半分は私服でも、残りの半分は水着になることが必須。なので、変なファンがついてしまう事は必然と言えるものでした。一回は「次回はもっと卑猥なビキニでお願いします」と言うコメントを付けられ、思わずブロック削除してしまったことがあるのですが、それを社長に話すと「嫌らしいコメントや悪いコメントも無関心よりは良いことだ」と、次回からは削除する前に自分に相談をしてから行動するようにと優しく注意されました。その時は確かに私の考え方が甘かったのだと思いました。

それから数日後。私たちはそもそも多くの注目を浴びていたグループでもなかったのですが、 地元アイドルに関する放送が流れた後、その少ない世論ですら否定的に変わりました。先ずアイドルにしては衣装が下品だとか、完全にAKBの某メンバーに似せている偽物だとか。それでも社長は「アンチファンのファンのうちなんだから、とても良いリアクションである」と私に言い聞かせるのでした。確かに、知名度が全てな芸能界なんだから、そうかも知れないと思いました。もしかしたら私は、本能的な不安を疑いながら頭の中の肯定回路を必死的に回していただけかも知れません。私は、夢を叶えたかったのです。

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JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

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