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震災から4年……被災地の女性たちは、今。 相談の現場から。

具ゆり2015.03.20

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東日本大震災、福島第1原発事故から4年が過ぎました。
震災がきっかけで、東北の女性支援の人たちとのつながりが生まれました。震災後、初めて東北新幹線に乗りながら、緊張していたこと、どこかで身構えていたことが思い起こされます。被災者でありながら支援に携わる彼女たちとの出会い、直接聴く当事者の話、震災後の町の様子と移り変わりに思うこと、今月はそのことを書こうと思いながら、指が重くて進みません。
3月に入って、ドイツのメルケル首相が来日し、リーダーとはかくあるべし、との思いを強くしたばかり。おりしも、今年は3.11後の3月14~18日に仙台で「国連防災世界会議」が開催され、国内外からのべ4万人以上の参加が見込まれているといいます。
さて、被災地だから、女性だから、と問題をひとくくりにはできません。
ただ、震災という突然のできごと、地震だけでなく津波や火災、原発事故、放射能、被害はさまざまです。大切な人を失うだけでなく、家も物も、あたりまえだったものを突然失ったり、奪われたのです。誰だって、私だって、おかしくもなるでしょう。
「東日本大震災被災地における女性の悩み・暴力相談事業」というホットラインが、内閣府主催、岩手・宮城・福島の3県共催で実施されていることをご存知でしょうか。
「女性の心のケア ホットライン・いわて」(岩手県内限定)2011年5月開設
「東日本大震災 心の相談 ホットライン・みやぎ」(宮城県内限定)2011年9月開設
「女性のための電話相談 ふくしま」(福島県・全国対象)2012年2月開設
(いずれもフリーコール。「ふくしま」のみ全国からつながる)
長引く被災による生活不安やストレスの高まりから、女性が悩みを抱えること、DVや暴力被害を受けることが懸念されました。今その活動は、相談に留まらず、被災地に寄り添った支援活動に広がって、被災地域と全国の女性団体が連携した相談事業として実施されています。
「女性相談」の現場では、それまでは水面下で起こっていたさまざまな女性の悩みや暴力、DV被害の相談がますます顕在化しています。
交際相手からの暴力・ストーカー行為をはじめ、性暴力・セクハラ、避難によるストレスと生活環境の変化、経済的な問題、夫婦関係の破綻、それまでの親子関係(虐待)、補償の金銭問題による親族や地域の人間関係・あつれき、心身の不調など、主訴の背景にはさまざまな問題が複合的にからんでいます。
その事例報告が、今回の国連防災世界会議パブリック・フォーラム「つながりを力に~被災地の女性たちの声に応えた支援活動の広がり~」で各実施団体によって発表されました。
『東日本大震災「災害・復興時における女性と子どもへの暴力」に関する調査報告書』(2013年12月発行、東日本大震災女性支援ネットワーク)には、今回の震災をふまえ、災害と女性・子どもへの暴力についての詳しい調査・分析・報告がなされています。
阪神・淡路大震災および新潟県中越地震などの教訓から、災害と女性、子どもへの暴力、ジェンダー視点からの防災など、災害時の教訓から学んだことや女性支援を明確にうたった支援活動がさまざまな形で継続的にしかも全国的に行われたことが大きいと述べています。
「災害時の女性への暴力」について、①災害以前から存在していた構造的な格差がより拡大される ②性別・ジェンダーに基づく規範が強まる ③性に基づく暴力への許容度が高まる などの要因が複雑にからまり、経済的にも社会的にも弱い立場にある女性が搾取の標的になりやすいと報告しています。
さらに、相談では、暴力に関しては「DV」相談が最多で、「性暴力」「虐待」「セクハラ」「ストーカー」が続くといいます。
「DV」は、震災後に深刻化したり、再発するケースもみられること、無料ホットラインの存在が広く周知されたことで、初めて相談につながったケースもあること。
「性暴力」は、生活の場(避難所の居住スペースや共用スペースなど)での性暴力、子どもへの性暴力(女児、男児とも)、顔見知りの加害、対価型、報復を恐れるなど、継続支援や介入の必要なケースが見られることが報告されています。相談現場で実感することばかりです。
震災直後から避難所で起きるかもしれない性暴力やセクハラ、パワハラ、DVなどをもっとも懸念していた女性たちはいたのです。でも、あの非常事態のさなか、残念ながら被害、犯罪を未然に防げなかったのは事実です。今後の「災害時の女性への暴力」対策が現実的に生かされなければなりません。そこにはジェンダーの視点が欠かせません。「災害とジェンダー」の声をあげていくほかありません。
その他、電話相談として社会的にも大きな成果を生み出しているのが「よりそいホットライン」(社会的包摂サポートセンター)です。24時間体制であらゆる生活の悩みを受け付けており、全国ラインと被災地専用ラインがあります。特に「DV・性暴力女性相談」は女性専用の専門相談で、被災地と全国からの深刻な暴力被害の相談に昼夜を問わず取り組んでいます。
震災によって、女性の人生や生活は大きなダメージ、影響を受けました。その深刻さは重篤さを増しているといえます。子ども、小さな赤ちゃんを抱えた子育て期の女性たち、高齢者や障害や病気を抱えた人、介護やケア役割を抱えた人たち・・・そして思春期、中高生、10代、20代の女性たち・・・さらに、何の問題もないと思われている人たち・・・。
「電話相談」は、誰でも、いつでも、どこからでもつながることができる手段です。
簡単に自分のことを話さない、話せないのは、被災者だけの問題ではありません。
悩みや不安、問題を抱えた人が、誰かに話したい、聴いてほしい、わかってほしい、どうしたらいいかわからない・・・行き場のない気持ち、揺れ動く気持ちを誰かに支えてもらいたいとき、ホットラインは重要な役割を果たしているといえるでしょう。
そんなことぐらいで、と言われないか? いつまでもそんなこと言って、と言われないか? 傷つきたくないし、怖いし、もういいや、どうせわかってくれる人なんかいない・・・
でも、電話なら、かけてみようか・・・そこでつながることも多いのです。
被災の程度の違いがあるため、被災者同士で寄り添えなかったり、対立したりする場合もあるようで、同じ土俵で語りあえない温度差、難しさを感じます。ガマンして、泣かないで、あきらめて、無理に笑って、心配かけないように。そうして心を閉ざし、不調になり、心身ともに消耗していく状態が続いている場合もあるし、そうなれば当然、日常生活にも仕事にも人間関係にも支障をきたしていくことになりますよね。
その一方で、少しずつ気持ちを整理したり、切り替えたり、生き方を定めていこうとしている人たちもおられます。少しずつ、その人のペースで動かれます。
人は比べられない。比べるからしんどくなる。違うんだから、と自分で認めていくしかないのです。
電話相談には、相談者が特定されない、お互いの匿名性が保証される、顔の見えない安心感があります。専門の相談員が聴いてくれる、社会的サポートとして重要な支援の役割を果たしているのです。
ただ、原則1回限りの相談なので継続性がないという制約上、問題の解決までは行き着かないもどかしさ、限界も抱えています。
電話相談は、電話という安易なツールだからこそつながれること、つながった相談者に必要なサポートと情報提供ができること、心理的ケア、サポートだけでなく、医療や法律、福祉、行政などの専門機関を紹介したり、直接支援や面接相談、カウンセリングにつながるチャンスにもなるというメリットがあるのです。
震災から4年、まだそれぞれに必要な寄り添い方、支援、情報、回復のための時間が必要です。私も、自分のペース、自分のスタイルを守りたいものです。
【追記】
長くなりました。最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。
次回は「声が聞こえない、見えない」といわれる若年女性たちへの調査と提言をした報告が入手できたので、思春期、10代、20代の人たちと震災について、続きが書けたらいいなと思っています。実は、書くのは苦手、へとへとです。いつも四苦八苦なんです。
担当のRさん、今月も締め切り守れずにごめんなさい~。

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具ゆり

具ゆり(ぐ・ゆり)

フェミニストカウンセラー
フェミニストカウンセリングによる女性の相談支援に携わっている。
カウンセリング、自己尊重・自己主張のグループトレーニングのほか、ハラスメント、デートDVやDV防止教育活動など、女性の人権、子どもの人権に取り組んでいる。
映画やミュージカルが大好き。
マイブームは、ソウルに出かけてK-ミュージカルや舞台を観ること。

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