同性カップルを認めることは多様性尊重への一歩 2月はフェミ的に嬉しいニュースが相次いだ。 まずは、2月12日、東京都渋谷区が、同性カップルを「結婚に相当する関係」(パートナーシップ)と認め、証明書を発行する条例案を3月議会に提出することを表明。可決されれば4月1日に施行され、証明書は2015年度内の開始を目指すという。報道(日経新聞webニュース2015年2月12日13時53分)によれば、桑原敏武区長は、「多様性のある社会をつくっていくことが、活力を生む」と強調したとか。大きくうなずく。 続いて、2月15日には東京都世田谷区の保阪展人区長、2月18日には横浜市の林史子市長が同性カップル支援について前向きな発言。目を通した限りでは新聞各紙も好意的で、おお、時代は前進しているとじーんとする。 公にパートナーとして証明する制度がないと何が困るのか?不動産屋で、東小雪さん・増原裕子さんカップルは、同居の部屋を借りようとした際、「大家さんに理解があるかわからないから」と書類に書いた「妻」を「友人」に書き直すよう求められたとか(毎日新聞2015年2月27日朝刊)。パートナーであることを隠せといわれるなんて、悲しいこと。病院での面会も「家族でない」と断られることもあるそうだ。同性カップルと公に認められる制度がないこと自体が、同性カップルが「日陰」でこっそり隠れていなければならないような存在と位置づけ、「同性愛ってなんかフツーじゃない」といった差別を助長してしまう。少数者のことも認める制度、大歓迎! 同性カップルを認める国や地域は、ヨーロッパや北南米など32か国と47地域だとか(上記毎日新聞中の紹介。2014年5月現在、国際NGO・ILGAによる)。ん?日本でも、自治体にとどまらず国レベルで同性婚を認めたらいいのでは?
憲法改正は必要ない 2月18日の参議院本会議で、安倍首相は、同性婚について、「現行憲法の下では、同性カップルの婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べたとか。それだけではなく「同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、我が国の家庭のあり方の根幹に関わる問題で、極めて慎重な検討を要する」とも(朝日新聞デジタルニュース2月18日20時01分)。え、そんな大ごと!? 憲法24条1項を読んでみよう。「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。」ここの「両性の」をもって同性は想定されていない?憲法がつくられたとき、同性婚を排除するつもりはなかったのでは。 そもそも!アツく語れば長くなる、頑張ろう…と思ったら、おお、ここをどうぞクリックしてほしい。このEMA日本(同性結婚を目指すNPO法人)の見解の通り、憲法24条1項は、個人の意に沿わないかたちで「家」のために結婚させられたり、あるいは結婚できなかったりということはもう今後はなし!戸主の同意なんかいらない、当事者同士が合意すれば結婚できるんだ、ということを明らかにするために、「両性の合意のみに基いて」と掲げた。女性が男性より下位に位置づけられていた家族関係は平等ではない、女性も尊厳のある個人として対等なんだ、ということも明確にした。同性婚を禁止する意図なんて全然なかったのだ。 それなのに「憲法上禁止されている」なんていう名目で、同性婚の法制化をさぼるなんて、首を傾げる。 あるいは、「憲法上同性婚は禁止されているから改憲しよう」とか? 磯崎陽輔首相補佐官が、「憲法改正を国民に1回味わってもらう。『憲法改正はそんなに怖いものではない』となったら、2回目以降は難しいことを少しやっていこうと思う」と述べたというニュース(2015年2月22日朝日新聞デジタルニュース12時54分)…十分怖い…。1回目は一部の野党も含めて合意が得やすい環境権や緊急事態条項などを対象とし、9条などの難題は2回目以降に提起する考えって。「同性婚を可能に」なんてことも口実にして憲法24条もいじられるのではないか…と気が気でない。「気にしすぎ!」と笑い話になるといいのだけれど。
最高裁大法廷回付!! 護憲というと、憲法9条を真っ先に思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、憲法は9条以外のどの条文も大切。ちょっと堅苦しい言葉使いだけれども、じっくり読めば、自由と平等がこんなにもしっかりと保障されているのだと感動する!婚姻の自由と両性の本質的平等を定めた24条のほか、個人の尊重原則を掲げ、幸福追求権を定める13条、法の下の平等を定めた憲法14条…。そういわれてもとっつきにくい…とお嘆きのそこのあなたには、谷口真由美さんの『日本国憲法 大阪おばちゃん語訳』文藝春秋社、2014年を読んでほしい。読み易いけど憲法の各条文の意義がばっちりわかって1,100円+税なんて、とてもお買い得、是非! 憲法は「高尚な理想」を掲げているのかもしれないけど、日常と関係ない…?そんなことはない。市民社会や家族のルールを決める民法その他の法律などは憲法に適合していないといけない。裁判所に違憲と判断される法律は憲法に合致するように改正されなければならない。違憲と判断されるには訴訟の様々な手続のシバリにより、実際にはとてもハードルが高いのだけれど、しかし、憲法は私たちの日常を縛るルールが憲法からみておかしければ改められるということ。憲法は「抽象的で縁遠い存在」なんてことはない。 2月18日、個人的にも超ビッグニュースが!夫婦同姓しか認めない民法750条は憲法24条や13条etc.からおかしい!と訴えていた夫婦別姓訴訟についても、女性のみに6ヶ月の再婚禁止期間を定める民法733条が違憲だとする訴訟についても、最高裁は審理を大法廷に回付する決定をした。私も所属する第二東京弁護士会は、2月26日、会長声明を出した。 私は夫婦別姓訴訟の弁護団事務局長。大法廷回付のニュースを受けて、たくさんの女性たちが涙目で喜んでくれ、エールをくれる。その一方、とある男性弁護士より、「打越さん、すごいね~、最高裁大法廷回付。でもさ、違憲なんて出たら困るよ。女房が『別姓がいい』なんて言い出したらいやだもん」と言われもした。「話し合ったらいいのではないでしょうか」と言ったら「いやだいやだ」とのこと。う。妻が本当は自分の姓でいたかったかなどと言われるとしたら…と予想して反発しているわけだ。どうしても同姓でいたいなら、自分が妻の姓に改姓すればいいのでは。しかしそれも「いやだいやだ」。少なくとも司法試験前には憲法の人権保障と平等をじっくり勉強したはずの弁護士の中にも、そんな本音を吐露するひとがいる。ふーむ、ある意味参考になる、反対派ってもはや理屈ではないのだということが実感できて。でも、民法は、妻の気持ちを確認せずにオレ様の姓を名乗らせたことを直視したくないから「いやだいやだ」という心情よりも、憲法の人権や平等にのっとった規定にならなくては。最高裁判所には、改正を待ち望み、大法廷回付を涙目で喜ぶ少数者に寄り添う判断をしてほしい。 そのためには、感動に酔いしれてはいられない。更に頑張らなくては。応援をよろしくお願いします(別姓訴訟を支える会)。