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映画・ドラマに映る韓国女性のリアル(5) 女性の連帯による復讐劇 ドラマ「ザ・グローリー」

成川彩2023.05.02

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世界的なヒットとなったNetflixシリーズ「ザ・グローリー~輝かしき復讐~」は、主人公ドンウン(ソン・ヘギョ)が高校時代に受けたいじめの復讐を果たすドラマだった。その復讐の重要なパートナーとなるのは、ヒョンナム(ヨム・ヘラン)。夫の暴力に悩んでいたヒョンナムは、自らドンウンの仲間になりたいと申し出て、互いにそれぞれの復讐に協力する。



ドンウンは高校時代、5人の男女から深刻ないじめを受けていた。その中心にはヨンジン(イム・ジヨン)がいた。ドンウンの復讐は、ヨンジンをメインターゲットとして、他の4人を巻き込んでいく。韓国では学校での暴力を略して「学暴」と言い、近年社会問題となっている。過去の「学暴」が告発され、活動が難しくなる芸能人も少なくない。ヨンジンは気象キャスターで、ドンウンへのいじめが世間に知られると困る芸能人同様の立場だ。



ヒョンナムはヨンジンの家の家政婦だった。ドンウンがヨンジンの家のゴミを持ち出していることに気づきながら半年間黙っていた。ドンウンは復讐の手がかりを集めるため、ゴミを探っていたのだ。ある日、ヒョンナムに見つかったドンウンは「お金なら差し上げます」と言うが、ヒョンナムは「お金じゃない。通報もしない」「手を貸すから、私を助けて」と答える。半年間ドンウンを観察した結果、何かをやり遂げる人物だと感じたのだ。

ヒョンナムはドンウンの指示通り、尾行したり写真を撮ったりして、5人に関する情報を集める。代わりに学校の教師のドンウンは、ヒョンナムの娘に勉強を教え、留学への道を開く。父親の暴力から守るためだ。



何よりドンウンの復讐の原動力となったのは、ドンウンと同じように高校時代に5人からいじめられ、死んでしまったソヒだ。ソヒの分まで復讐を果たすという信念が、ドンウンの支えとなった。

ドラマの中では、ドンウンがヨンジンに語りかけるような独白がよく出てくるが、こんなセリフがあった。「被害者たちの連帯と加害者たちの連帯、どっちがより強固だろう?」。被害者たちの連帯という意味では、ドンウンの大学の先輩で医師のヨジョン(イ・ドヒョン)も別の事件の被害者としてドンウンの協力者となる。男性のヨジョンの存在はドラマを盛り立てる「ロマンス」を担っている面もあったが、そのほかのドンウンの協力者たちは主に女性だった。高校時代のドンウンを助けることができなかった保健の先生がヒョンナムの娘をかくまってくれたほか、ドンウンの家主のおばあさん、工場勤務時代の同僚ら、女性たちが力を貸してくれる。



「ザ・グローリー」パート2が3月に配信される直前、ソウルで開かれたトークイベントには脚本家のキム・ウンスク氏も参加した。「シークレット・ガーデン」「太陽の末裔」「トッケビ」「ミスター・サンシャイン」など数々の大ヒットドラマを手がけた脚本家だ。

キム氏は、パート1を見た視聴者のコメントについて、「『神を信じる者と神を信じない者の戦いだ』というコメントは、正確な指摘だった。私自身、それをエンディングまでの大きなあらすじとして考えていた」と話していた。「パート2の最後まで見たら、ああ、神はいるんだと感じると思う」というキム氏の言葉を念頭にパート2を見てみたら、高校時代、誰の助けも得られず孤独だったドンウンに、連帯して一緒に闘ってくれる人たちが現れたことそのものが、「神はいるんだ」と感じられるポイントだと感じた。逆に加害者たちの連帯はもろかった。それぞれ大事なのは自分だけで、簡単に裏切り合う。

近年の韓国ドラマには、女性の連帯がよく登場する。例えば「椿の花咲く頃」。主人公のドンベク(コン・ヒョジン)は孤児で、シングルマザー、スナックを営んでいるという理由で偏見にさらされ続け、縮こまって生きてきた。ドンベクは韓国語で「椿」という意味だ。ドンベクのすべてを受け入れるヨンシク(カン・ハヌル)の愛のおかげで、どんどん自信をつけ、花開いていくドンベク。

ドラマ終盤では、連続殺人の犯人にもひるまない。ドンベクが犯人の頭をビールジョッキで殴ると、それを見た近所の女性たちはモップやダイコン、瓶などを手に一斉に犯人に襲いかかる。一歩遅れて到着したヨンシクはじめ男性警察官たちは、犯人の身柄確保のためむしろ女性たちを止めに入る。男女の対比が際立った場面だった。

危篤のドンベクの母を助けるのも、近所の女性たちの尽力が大きかった。移送して最善の治療を受けられるように近所の人たちが力を合わせるが、中心になって動いたのは女性たちだった。ドンベクが母につきっきりの間、ドンベクの息子の面倒を見たり、冷蔵庫を整理したり、家族のように支えてくれる。

さらに4月に配信されたばかりのNetflixシリーズ「クイーンメーカー」は女性の連帯がメインと言ってもいいほどだ。主人公ファン・ドヒ(キム・ヒエ)は、女性弁護士オ・ギョンスク(ムン・ソリ)をソウル市長に当選させるため、選挙参謀として活躍する。もともとドヒは財閥オーナー家を支えるフィクサーだった。一方、ギョンスクはその財閥によって解雇された女性労働者たちの解雇撤回を訴えて闘う人権派。当初敵対していた2人は、オーナー家の悪事に怒り、連帯するようになる。

一人一人の力は小さくても、連帯すれば大きな力になりうる。#MeToo運動を経て女性の連帯がよく描かれるようになったという面もあるが、#MeToo運動そのものが女性の連帯によるものだった。

Netflixシリーズ「ザ・グローリー」パート1、2   独占配信中

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成川彩

成川彩(なりかわ・あや)

韓国在住文化系ライター。2008~2017年、朝日新聞記者として文化を中心に取材。2017年から韓国に渡り、ソウルの東国大学大学院で韓国映画について学びつつ、フリーのライターとして共同通信、中央日報など日韓の様々なメディアに執筆。2020年からKBS WORLD Radioの日本語番組「玄海灘に立つ虹」で韓国の本と映画を紹介している。2020年、韓国でエッセイ『どこにいても、私は私らしく(어디에 있든 나는 나답게)』出版。

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