女性政策を重点…(苦笑)?
いやはや~。安倍政権の女性閣僚たちの顔ぶれに唖然とした10月、そのうち2閣僚が辞任してやれやれと首をふりつつ、しかし、え、なんだって、女性の活躍?そんなこというなら、選択的夫婦別姓くらい実現してみなさいって!と息巻いた11月、そして今月は総選挙なり。いやーなんか動きが早くて、なんだかついていけませんね。いやもちろん喰らいついていきますけど。
今なぜあえてここで選挙?選挙でなくて暴挙でしょっ。というのは岡野八代教授の至言である。あれれ、「財政の健全化」待ったなしだから、消費税増税が必要なのではなかった?財務省は、教員=人件費を浮かせるため、35人学級→40人学級案を戻すとか言っていなかった?え、それで700億円かけるの、意義のわかんないこのタイミングの総選挙に!?との叫び、いや悲鳴があちこちで聞こえた。
でも叫んでいても、もう決まったこと。それなら、今一度代表を送るという選挙の意義に立ち返ろう、という岡野教授に大賛成。
よおし…、女性政策はどこもかしこも力を注いでいるらしい。おお!自民党など、「地方創生」と並んで「女性の活躍」を特出ししているではないか。女性に活躍してほしいからには、女性を当然個人として尊重するつもりですよね(前回参照)?女性がずーっとその姓で自分を自分として認識し、他の人ともその姓のもと関係し、そしてその姓で仕事上のキャリアも築いてきた。結婚するならその姓を諦めろとか(憲法13条に由来する氏の変更を強制されない自由の侵害)、逆に姓を維持したいなら結婚を諦めろとか(両性の合意のみに基づいて成立する婚姻・憲法24条1項の侵害)、そんなこといつまでもいわない=選択的夫婦別姓は当然認めますよね?
意気込んで読んでみた。うーむ。書いてない。どこにも。しつこいようですが、女性の権利や平等の問題である選択的夫婦別姓は、「女性の活躍」への本気度の試金石なんですってば…(涙)。
なーんて、驚いて嘆いたふりをしてみたが、まあ嘆いてはいるが驚いてなんかいない。だって、自民党の公約を発表した稲田朋美政調会長(福井1区)は、選択的夫婦別姓に反対する議員としてすぐさま思い浮かぶような方。政権自体、安倍首相を筆頭に、反対派が多数を占める。その政権が謳う、女性の輝く社会って…あ、無理ゲー?
そもそも、女性の活躍推進法案自体、唐突な解散で廃案になった。この法案自体、女性の多くを占める非正規労働の待遇に目をつぶり、ほんの一部の女性しか恩恵を与えないごまかしではないかetc.の問題がある。しかし、最高裁の判決(妊娠をした女性が受けた降格処分につき、本人の承諾がない降格は原則として均等法に違反するとして、原告敗訴とした二審判決を破棄、差し戻しした最高裁第一小法廷平成26年10月23日判決)を受けて、折角問題意識が高まったマタハラ問題への対処など、国会で議論が進展するのでは…という期待もあった。しかしこの唐突な解散により、それもとん挫。
なんかこう、集団的自衛権とか特定秘密保護法とか、「ウケない」政策や法案を強行したことを忘れさせる作戦として、見てくれが良いキャッチフレーズとして「女性の活躍」が使われているだけ?という気がしてならない。
目標と現実違い過ぎ、女性候補者少なすぎ
安倍政権の女性閣僚など、「女性だからといって、女性の視点に立っているとは到底思えない…」と嘆息せざるを得ないが、しかし、女性の中の多様性を反映させるためにも、女性の議員がもっと増えなければならない。
女性政策を重点にするというからには、今度の選挙にも女性候補者をたくさん擁立しているはず…ん?新聞報道(毎日新聞2014年11月25日朝刊)によると、11月25日現在で、自民党の一次公認291人中、女性は24人と何と1割にも満たない。民主党の候補予定者(11月26日現在)177人中女性は27人、15%にとどまる。
ここで問題。
Q:政権公約に「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」という公約を掲げる党は?→A:自民党。
Q:10月中旬、次期国政選挙から女性候補者を30%程度とすると表明した党は?→A:民主党
(まあ、こちらはまさかこんなに早く選挙になるとは予想していなかっただろうから、準備が間に合わなかったものと若干下駄を履かせてあげるとしても…いやしかしそれにしても準備しなさすぎっ)。
セクハラ対策への請願採択せず
オヤジ議員が極端に多い空間は、いびつだ。女性の権利侵害への意識が鈍麻しているからこそ、2014年6月に塩村都議が受けたようなセクハラ野次だって日常茶飯事なんだろう。そんなキモい空間に、女性だって行きたくなくなる(決死の覚悟をした女性か、名誉男性化した女性を除く)。悪循環だ。しかし、いびつな空間ではザッツオーライなセクハラ野次でも、外の目にさらされれば、強く非難された。それで議会は変わる…と思っては甘い。11月21日、都議会は、女性蔑視野次の調査委員会設置を求める請願を、賛成少数で不採択とした(東京新聞2014年11月22日夕刊)。
反対した都議の一人は、東京新聞の取材に「「議会として既に信頼回復に関する決議をしており、後は議員個人の良識に委ねるべき問題だ」と語ったそうな。ええ~っ。顎が外れる。セクハラが起こった企業が「会社として既に信頼回復に関する決議をしており、後は被用者個人の良識に委ねるべき問題だ」で済みますか?男女雇用機会均等法及びそれに基づく指針により、職場におけるセクハラ対策として、事業主には、相談があった場合、事実関係を迅速かつ正確に確認し、適正に対処することが義務付けられている。都議会は事業主でないもんね、と居直っている場合ではない。「都議会の信頼回復のためには事実を調査・把握し、過程および結果を都民に公表することが必要」との請願は常識的、というより、請願を受けなくても都議会自らすべきところ。大体、「議員個人の良識」が全くあてにならないことが明るみになったにもかかわらず、この居直りは一体…。
世間の注目がクールダウンしたら、すぐこれだ。しっかりウオッチして、次の選挙では反対した議員を落とさないと。共産、民主、みんな(「かがやけ」に改称)、生活者ネットワークの各会派が請願の趣旨に賛成し、自民、公明、維新が反対。澁谷知美東京経済大学准教授から教えていただいた以下のリスト(敬称略)を記載する。都の有権者の皆さん、早速メモしてください!
◆反対した自民、公明、維新所属の議会運営委員会メンバー
(2014年11月21日現在)
村上英子(自・渋谷区) 高木けい(自・北区) 中嶋義雄(公・世田谷) 林田 武(自・西多摩) 鈴木隆道(自・目黒区) 崎山知尚(自・荒川区)長橋桂一(公・豊島区) やながせ裕文(維党・大田区) 山崎一輝(自・江東区) 早坂義弘(自・杉並区) 北久保眞道(自・北多摩第一) 菅野弘一(自・港区) 神野次郎(自・昭島) 小磯善彦(公・町田) 谷村孝彦(公・北多摩第一)
◆賛成した共産、民主、かがやけ、生活者ネットワークの議会運営委員会メンバー(2014年11月21日現在)
大山とも子(共・新宿区) 清水ひで子(共・八王子)石毛しげる(民・西東京) 両角みのる(か・八王子) 西崎 光子(ネ・世田谷) かち佳代子(共・大田区) 尾崎 大介(民・北多摩第三) 斉藤あつし(民・小平)
都議会の女性議員(2014年11月21日現在)、126人中25人、割合は、19.8%。
国会(参議院)241人中38人、15.8%、解散前の衆議院に至っては、2014年1月1日現在480人中39人で約8%、「列国議会同盟(IPU)」が3月4日発表した報告書で、189か国中の平均を下回る127位と指摘された少なさである(2014年3月5日11時48分朝日新聞ウェブニュース)に比べたらつい「多い」と思ってしまうこの割合でも、女性差別の撤廃を志向するには到底足りない数字ということがわかる。
いわんやさらにがくんと少ない国会では…。そしてまた、女性候補自体が少ないこの選挙後だって期待できるわけがない。そんな状態で、堂々と「女性の活躍」掲げますか…(涙)。