ラブピースクラブはフェミニストが運営する日本初のラブグッズストアです。Since 1996

banner_2212biird

幸せな毒娘 Vol.20 被害者からサバイバーへと⑨ 男性嫌悪は実在しません

JayooByul2023.04.21

Loading...

 大学を無事卒業した後、私は就職ビザをもらうためちゃんとした昼の仕事を探さなければならなくなりました。そこで始めたのが空港の仕事でした。空港の仕事は多様な言語がしゃべれないといけなかったため、だいたい高時給。それにガールズバーやキャバクラのようにしょっちゅう偉そうにする幼稚な男の相手をしなくてもすむし、セクハラにあうリスクも少なかったです。何よりガールズバーで稼いでいたのとほぼ同じ金額が稼げて、たばこの環境にもさらされずすむなど、いろいろとメリットが大きかったです。前もってこういう仕事を知っていたら夜の仕事なんて視線もやらなかったのに、と後悔しましたね。余談ですが、きっとこれが男性が女性の経済力を奪おうとする (または女性は安時給で働かせる) もっともな理由なのではありませんか。

もちろん空港で働けるようになったからって女性と韓国人への嫌悪や差別から逃れたわけではなかったので、私の海外移住の計画は8月から3月へと、そしてまた1月へと徐々に短縮してしまいました。貯金が少し足りなくてもとりあえず日本から離れないと死んでしまう、そう感じたからです。日本で生活している8年間、私のうつ病は極限に達しました。私の父のように誰か私に物理的な攻撃をして来なかったとしても、私自身が私を殺してしまうかもしれないという恐れが常にありました。

そのときの私の毎日は、一日はものすごい怒りがわいてきて、頭の中で銃ですべての男を撃つ想像をしたり、またその翌日は何の感情も感じず暴言を吐かれてもどなりちらされても無表情や笑顔のまま頭を下げたりと、波の多い日々でした。しかし殺意がわいた日は、その殺意を誰にも相談することができず、ただ自虐をすることでつらさをこらえるなど、自分がぐちゃぐちゃに壊れてしまってる気がしました。

「このままじゃ自殺してしまうかもしれない」

正直それを恐怖には思っていませんでした。でもある日、海外からのお客さまに「Thank you」といわれ涙が止まらなくなった瞬間、私はやっと自分が完全に壊れきっていたことに気づいたのです。その日は、お客さんにあいさつをしただけで過剰サービスだとどなられた翌日でした。そして「ありがとう」の一言は何年つとめていても日本人のお客からは一度も聞いたことのない言葉だったので、海外の客からの優しくてあたたかい笑顔が氷のように固まっていた私の心を刺激してしまったかもしれませんね。

それからの移民の準備は早かったです。私の姿を何年もそばで見てきたオヨメは私たちが早く日本を出ることに同意してくれました。日本を出てからの私の心の病気は日々驚くほどよくなりました。何の治療も、カウンセリングもいりませんでした。女性が人間として尊厳さを保ちながら暮らせる国に移住しただけ、それだけで10年以上私を苦しめて来たPTSDが治ってしまったのです。夜もよく眠り、今は悪夢もみません。オーストラリアに来た8年間痴漢にあったことは一度もなく、男のどなる声もなかなか聞かないので、ひょっとしたらそれは治ったのではなく、「忘却」かもしれませんが――とにかく大事なことは今、私がここで幸せに「平凡な生活が送ることができている」ことではないでしょうか? オーストラリアの国籍を手に入れた今は、もっと早く出ればよかったとオヨメのほうが言っています。

もちろんオーストラリアもあくまで「マシ」なだけであって、女性の人権が完璧に守られている国ではありません。しかしオーストラリアの女性たちは、私が過去の話をすると誰もが「オーストラリアではそういうことは絶対許されないよ」と、女性の味方になってくれます。こういった女性同士の連帯がどれだけ大事なものなのか、私は日本とオーストラリアでの生活で深々と気づきました。女性たちの連帯は被害者を救います。被害者を生存者へと変えてくれるのです。

アジアの男性たちはいまだにこの社会が女性優越社会だと言いはります。しかし私たちはより客観的な事実を見る必要があります。

だいたいの男性は女性が手に入らないときに女性嫌悪をします。

でも女性は男性とのつきあいが長くなるほど、男性嫌悪になる傾向があります。

しかし後者のように、「恐怖からただただ避けたいだけのこの気持ち」は、果たして嫌悪と言えるのでしょうか?

男性は女性を強姦し、搾取し、殺すという事実を述べることが、付き合ってくれないから、ただセックスがしたいからと女性を殺してきた男性たちの嫌悪と同一なものと見なしてよろしいのでしょうか? それこそがまた新たな女性へのガスライティングなのではないのでしょうか?

男性は凶悪犯罪を行うから嫌われる。しかし女性は何もしていなくても「体重が50㎏を超えてるから」「おしゃれをしないから」「25歳を超えてしまったから」とけなされます。女は正常でも嫌われ、男は罪を犯さないだけでいい男だと高評価なのが現実です。

そんな世の中で「男性嫌悪」とは本当に実在するのでしょうか?

Twitterフェミのせいで男性嫌悪がひどくなってる?

こういった男性嫌悪はスマホを閉じれば消えるけれど、女性への嫌悪は現実でも続きます。男性に暴行を振るわれることが怖くて、そして会社からクビにされるのが怖くて、Twitterの外の世界では「それは性犯罪だ! この犯罪者め! 死ね!」という怒りを噴出することすらできないからです。

現実でも多くの女性たちは毎日のようにレイプされ、殺され、暴力にさらされ、昇進の機会を奪われ、社会進出のチャンスも失われています。そういった社会システムを築いた男たちのせいで、やむを得ず搾取されることを選んでしまう女性は2023年の今も実在します。

女性の人権が100%守れる国はどこにもありません。それは私と多くの女性たちの経験から証明されています。女性は「男尊女卑社会」を証明する、決して否定できない「生きた証拠」なのです。ですから、女性が置かれた現状を否定することは女性の存在を否定することと同じなのです。虐待者をかばい、加害に加担するのとまったく同じなのです。

みなさんにもう一度聞きたいです。

男性嫌悪は本当に実在しますか?

Loading...
JayooByul

JayooByul(じゃゆびょる)

JayooByul (ジャヨビョル)日本のお嫁さんとオーストラリアで仲良くコアラ暮らしをしています。堂々なるDV・性犯罪生存者。気づいたらフェミニストと呼ばれていました。毒娘で幸せです。

RANKING人気コラム

  • OLIVE
  • LOVE PIECE CLUB WOMENʼS SEX TOY STORE
  • femistation
  • bababoshi

Follow me!

  • Twitter
  • Facebook
  • instagram

TOPへ