続・安倍内閣の女性閣僚たち…
改造後の安倍内閣の女性閣僚たちの顔ぶれにたまげた前回から1か月も経ないで、内2人が辞任した。小渕優子前経済産業相、松島みどり前法相の辞任に、同情は全く感じないが、ん?よく考えると、小渕さん、松島さんは、選択的夫婦別姓賛成派。居残った高市早苗総務相、山谷えり子国家公安委員長、有村治子女性活躍担当相は、選択的夫婦別姓反対派。その上、高市総務相&稲田朋美自民党政調会長はネオナチ団体代表と、山谷国家公安委員長は在特会関係者と記念撮影をしていたことが明らかになっている。小渕・松島同時辞任(10月20日)の2日前(10月18日)、女性3閣僚は秋季例大祭に合わせて靖国神社を参拝してもいる。何で彼女たちについてはこうも静かなのだろう(涙)。
それでも、「女性の活用」(あれ?最近聴かなくなった?)だか「女性の活躍」だか知らないが、さわやかワーキングマザーイメージの小渕さんという看板が外れ、「女性って言われてもねえ」とさすがに多くの人も気がついてくれるのではなかろうか。甘いか…。
選択的夫婦別姓は「女性の活躍」への本気度の試金石
ひーっと言ってばかりいても始まらないので、地道にウオッチ。国会論戦で結構「女性の活躍」のメッキがはがれているのに、報道を漫然とみていても詳細がわからないものである(「野党は「うちわ」「SMバー」といったことばかり問題にするな!」と非難されるのは気の毒な気がする。そういう話題だけに飛びついているのはマスコミなので)。たとえば、安倍政権が「女性の活躍」を掲げながら選択的夫婦別姓については消極的である矛盾が頻繁に指摘されている(10月8日参議院予算委員会社民党福島みずほ議員、10月16日参議院外交防衛委員会無所属糸数慶子議員、10月15日衆議院内閣委員会10月24日衆議院法務委員会民主党郡和子議員、10月28日参議院法務委員会みんなの党行田邦子議員、同共産党仁比聡平議員…抜けていたら教えてください。会議録はこちら参照。http://kokkai.ndl.go.jp/ )。皮肉なことに、松島前法務大臣も上川現法務大臣も、以前は、選択的夫婦別姓に積極的だった。ところが、所管大臣になるや、判で押したように「我が国の家族制度の在り方の根幹に関わるものである」「(世論が二分しているとして)国民の理解をしっかりと得ながら進めていく」などと、何十年も繰り返されたフレーズを口にするばかり。易々と自分の政治的信念を引っ込める、これぞ「活用」された女性のなれの果てかあ!?と毒づきたくなる。
フェミの人の中にも、「法律婚しなければいいじゃない?選択的夫婦別姓なんて、生ぬるいことを求めるのがアマい」なんておっしゃる方もいないではない。なんかこう、前からも後ろからも矢が飛んでくる気がする(愚痴)。いやいや、抵抗勢力からは、「我が国の家族制度の在り方の根幹に関わる」ほどのことと認識されているのである。別姓の選択というほんのささやかな多様化すら認めない強固な信念を持つ人々が、閣僚の中に多数いる現実を直視してほしい。でも、言わせていただくと、夫婦別姓の選択の自由すら認められない偏狭な社会で(しつこいようだが、別姓を望まない夫婦まで別姓にしろということではない。あくまで別姓を望む夫婦にそれを可能にするということだ)、活躍しろって言われても、無理。制度制度っていうけれど、制度は、個人がイキイキ生活(この際「活躍」と言ってもいい)することを支えてくれるものであるはずで、憲法(24条)が依拠する個人の尊厳と両性の本質的平等という基本中の基本の価値と整合しないものであってはならないのである。夫婦同姓の強制と、96%以上の妻が夫の氏に改姓するという圧倒的不平等は、この基本的価値に整合しない。そして、日本も批准する女性差別撤廃条約にも違反する。同条約は、締約国に婚姻及び家族関係に係る全ての事項について女性差別を撤廃するよう求め、特に、男女平等を基礎として、自由に配偶者を選択し及び自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利(16条1項(b))、夫及び妻の同一の個人的権利(姓(略)を選択する権利を含む)(同(g))を確保するよう求めているのだ。
おお、今回は我ながらなんか弁護士らしいことを書いて、気分が高揚してきたっ。皆さんついてきてくださいっ。が、あえなくもうボリュームいっぱい。さらに詳しく理解を深めたい方は、日本学術会議が今年6月23日発表した「男女共同参画社会形成に向けた民法改正」と、夫婦別姓訴訟弁護団の各種主張書面、研究者の意見書をご一読いただきたい。
「世論」というけれど
そういうわけで、人権や平等の問題だから、世論の動向は言い訳にならない(それに、よほど反対の多い集団的自衛権や特定秘密保護法は強行したくせに…)。日本政府は、女性差別撤廃委員会からも、条約の締約国たる義務は、「世論調査の結果のみに依存するのではなく、本条約は締約国の国内法体制の一部であることから、本条約の規定に沿うように国内法を整備するという義務に基づくべき」と指摘されている(2009年8月7日最終見解 http://www.gender.go.jp/whitepaper/h22/zentai/html/shisaku/ss_shiryo_2.html)。
とはいえ世論調査でも、今や52%が選択的夫婦別姓に賛成という結果もある(10月22日付毎日新聞朝刊、反対48%)。そして、内閣府による調査(直近では2012年12月実施)も子細にみれば、回答者の年齢層が反対の割合が多い高齢者に著しく偏っていることがわかる(60代70代が回答者数の約47%と半数近くに上り、60代70代の合計は20代30代の合計の2.2倍以上)。50代以下はどの層でも賛成が40%を超え、反対の割合は20%台に留まる。これから婚姻による改氏の問題に直面する年代は、主に20代から30代であるが(平成25年における平均初婚年齢は男性31歳、女性29.4歳、厚労省「人口動態調査」における統計参照)、過去の調査と比較すると、これらの世代では着実に賛成割合が増加傾向にある。特に、婚姻改姓の問題に直面する可能性の高い女性についてみると、20代においては賛成53.3%・反対16.1%、30代においては賛成48.1%・反対16.1%とさらに賛成割合が高くなり、反対の割合が極めて低くなる。また、この調査には、通称をどこでも使えるようにする法改正には賛成であるという第3の選択肢がある。この選択肢を併せると、法律婚による氏の変更に関する救済措置に必要性を感じている率は、全体でも59.5%に上る。20代30代の女性では、それぞれ83.2%、83.3%と、実に8割以上が何らかの形での夫婦別姓を賛成しているのである。
世論調査の分析だけでも一回分とりたいくらいのボリュームになるのでこの辺でおさめるが、仮に世論調査を参考にするとしても、婚姻改姓に直面する当事者になる女性たちの意見を尊重すべきではなかろうか。彼女たちに「活躍」してほしいなら、なおさら。
恨み節?いやいやとんでもない、へこたれません。働きかけていきますよ、粘り強く!