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新たな米軍基地と元タカラジェンヌ東さんの告白の衝撃

深井恵2014.06.10

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先日、旅行先の箱根で衝撃を受けた。箱根に行ったのは、友だちが「喜多川歌麿の『深川の雪』が修復されて、箱根の岡田美術館で公開されているから、一緒に行かない?」と誘ってくれたから。その歌麿の作品の大きさに驚いた。縦199cm×横341cmの大作の肉筆画だった。「雪月花」三部作のうちの一つとされる「雪」だ。「月」:『品川の月』と「花」:『吉原の花』は、アメリカの美術館に所蔵されているという。『深川の雪』には27人の女性たちが絶妙な構図で描かれ、歌麿の画才が遺憾なく発揮されていた。
が、衝撃を受けたのは、歌麿の肉筆画ではない。西田美術館から旅館にたどり着いて、晩ご飯までの時間にテレビ番組を見ていたところ、「報道特集」で、新たな米軍基地の工事が京丹後市で着工されたと報じられていたからだった。
「えっ!?」と、まずは自分の耳を疑った。「いまごろ、なぜ、米軍基地を新たに国内に?」「そんなこと、いままで報道されてたっけ?」「自分自身の、新聞やニュースのチェックが甘かったか?」(・・・昨年6月に家出して以来、自宅で新聞を購読しなくなり、それまで続けていた「毎朝新聞を読んでから出勤する」という習慣がなくなった)。いや、毎日それなりにニュースは梯子して見ていたし、職場で新聞もパラパラめくっていた。にもかかわらず、いきなり「米軍基地、工事着工」の段階になって初めて知ったという事実。
中国では既に報道されて警戒感を強めていたとも、同番組の中で触れられていた。海外で報道されていて、国内でほとんど報道されていなかったとは。昨年12月に成立した「特定秘密保護法」も少なからず影響しているようだ。今後ますます「秘密」は増えていくのだろうか。こうしてコラムに載せることも、「特定秘密保護法違反」になる日が来るのだろうか。
関西で唯一の基地となる京都府京丹後市丹後町の米軍基地、通称「経ヶ岬通信所」。弾道ミサイルを探知する「Xバンドレーダー」というものを配備するらしい。レーダーがあるのだから、何かあったら真っ先に狙われそうな基地だ。弾道ミサイルを打ち落とせるとも思えないし・・・。そもそも弾道ミサイルなんかが飛んでこないように外交を進めるべきだろう。いったい税金をいくら投入するのかも気になるところだ。
以前、青森県の三沢基地のそばを通ったときも「米軍専用プライベートビーチ」や「米軍専用ゴルフ場」まで完備する力の入れようだった。
ほとんど報道されないまま、地元に十分な説明もないままま、新たな米軍基地が造られようとしている。米軍基地反対運動も起きているようだが、大半の人々はまだ知らないのではないだろうか。(現に、職場の隣の席の社会科の教員も知らなかった)。知らなければ行動は起こせない。「自分の地元にも米軍基地ができるかもしれない」という危機感とともに、知ったからには行動を起こしたい。「微力でも無力じゃない」と信じて。
話は大きく変わるが、『なかったことにしたくない ~実父から性虐待を受けた私の告白~』(東小雪著 2014年6月2日第1刷発行 講談社)を読んだ。
東さんと言えば、「東京ディズニーシーで結婚式を行ったレズビアンカップル」として報道されたあと、『レズビアン的結婚生活』と『ふたりのママからきみたちへ』とを同時発売(東小雪+増原裕子著 2013年12月27日初版第1冊発行イーストプレス)したことで存じ上げていた。その、元タカラジェンヌの東さんの告白本だった。
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こちらも衝撃だった。一つは、宝塚の「暴力」について触れられていたこと。東さんが体験した、宝塚音楽学校での予科生として、本科生から受けた「指導」という名の「暴力」について語られていた。
華やかな舞台の裏にはつらく厳しい練習の日々があるのだろう等と、勝手な想像をしてはいたが、そんな生やさしいものではなかった。極端に短い睡眠時間。ゆっくりとした食事も入浴もできず、精神的にも肉体的にもきつくなり、中には生理が止まってしまう人まで出てきていたという。「指導という名の暴力」は悪しき体育会系の先輩後輩の関係や、指導者による体罰にも通じる。そして、その「暴力」を受けた者は、次の後輩たちに「暴力」を振るう。宝塚音楽学校流の「指導」はいまも続いているのだろうか?
そんな悪しき伝統は、宝塚からなくなっていることを切に願う。タブーを告白してくれた東さんの心中を慮ると、私自身も「なかったことにしたくない」思いに駆られる。
そして、東さんの本を読んでのもう一つの衝撃は、実父からの性虐待により、その性虐待の記憶自体が封印されてしまっていたことだ。本人にも無意識のうちに。「サムネイル」という言葉で表現された、頭の中に存在する「ネガみたいな情景」。カウンセリングを繰り返しながら、徐々に封印が解け、つらい記憶と対峙して、回復へとむかっている東さんの体験が書かれていた。詳細は、ぜひ、東さんのご著書を読んでいただきたい。
これまで私が関わってきた生徒や知り合いの中にも、性虐待からのサバイバーが何人かいる。リストカットやオーバードーズ、自殺念慮、解離など、自己防衛の反応はさまざまだ。つらい体験を背負いながら、精一杯生きている。表には出てきていないサバイバーももっとたくさんいるのかもしれない。本人の記憶が封印されているケースもあるのなら、なおのこと。本の帯にある「生きづらさを感じている」人だけにとどまらず、多くの子どもたちに関わる教職員にとっても、東さんの「告白」は、非常に貴重な視点を与えてくれる。つらい過去と向き合い、本を書いてくださった東さんに感謝したい。

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