「女性の活躍推進」って?
4月4日、安倍首相は、経済財政諮問会議と産業競争力会議の合同会議で「女性の活躍推進や経済成長の観点から、十分な管理体制の下でのさらなる外国人材の活用の仕組みを検討してもらいたい」と述べ、女性の就労を促すため、家事介護などの分野で外国人労働者を受け入れる制度の検討を指示した(JCast ニュース4月7日配信)。経済財政諮問会議の民間有識者から、家事介護で外国人の活用の提言があったとか。民間有識者って?伊藤元重東大大学院教授、小林喜光三菱ケミカルホールディングス社長、佐々木則夫東芝副会長、高橋進日本総研理事長。家事や介護のリアリティをご存じなのか…?
いやでも、決めつけてはいけない。まずは、民間有識者4名の連名のペーパーを確認しよう。
中長期的には、人権が保障され、外国人にも生活しやすい環境の確保が目指すべきグローバル化の姿とある。育児・介護中のため就業できない女性が220万人強もいるとして、外国人活用は「持続的成長のためのグローバル化の課題」だとする。人権保障、生活しやすい環境の確保…いよいよ移民を認めるということかな。と思いきや、安倍首相は合同会議の最後に、政府は移民政策の導入を検討しておらず、そう「誤解されないように」配慮するとした上で、冒頭の発言をした。冒頭の発言を今一度読む。サポートをお願いしながら、あくまで、外国人は管理すべき対象のままだ。
外国人→「治安が不安」で「管理」?
この件、異論が噴出しているらしい。さもありなん、私も落ち着かない。ネットで検索してみた。ん?私の違和感とは違い、「治安」を心配する異論が飛び交う。ネットだけではない。田村厚労相が「幼児の人間形成期を外国人が担うことは問題があるのではないか」と疑問視したとか、谷垣法相と古屋国家公安委員長が「治安」に与える影響を懸念したとか…。「外国人」というと、活躍ではなく「活用」、その上で「治安」を不安がり、「管理」する。
「女性の活用」というスローガンも、似たようなもの?少子化で労働人口の減少が避けられないから、女性も働け、だけど、一方で、女性が結婚しても自己の姓を名乗り続けたくても夫婦別姓の選択すら許さないよ、それに、もちろん、賃金格差は放置…。
男性支援でなく女性支援?
それに、「女性支援策」って?男性は眼中になし?
正直、女性の活用促進で外国人労働者受け入れ検討なんてニュースに、疑問をもつ女性ばかりではないだろう。毎日へとへとに疲れ、育児介護を担ってくれるサポーターが来てくれるなら嬉しい!と、朗報と思う女性だっているはずだ。
うっすら思い出す。東南アジアにいた女性が、「あっちはいいのよ、家政婦を雇うなんて普通だから。安くて。日本に戻ったら、何もかも自分。ストレス溜まってしかたない」と話していたこと。「格差問題を考えたことある?」という質問は飲み込む。「そうなんだ?、大変だよね?」と相槌を打つだけだ。慣れない外国で家事育児の負担を背負い、大変だったろうなあ、とも思うからだ。
朗報と思っている女性(シングルでなく、夫がいる女性)に、夫の活用は考えないのか?と尋ねてみたらどうだろう。「仕方ないの。夫は残業でたいへんだし、夫の稼ぎのほうが大きいから仕事辞めるなんてとんでもない」というところだろうか。
1995年、「家族的責任を有する男女労働者の機会及び待遇の均等に関する条約」が批准され、これを受けて、育児介護休業法が制定された(2004年、2009年に改正)。しかし、育児介護を含めた家事の平均時間は1日あたり男性42分、女性は3時間45分。35歳から39歳の女性は実に約5時間、この年齢の男性は41分で、その差は4時間以上(総務省『平成23年社会生活基本調査(生活時間に関する結果)』)。女性だけに介護育児を負担させたうえで働けというのは無理な話だ。しかし、性別役割分業打破!男性も育児介護を!と啓蒙しても空しい。仕事が終わらない、自分がやらなきゃどうする、あるいは、リストラされたくない。夫の事情がわかっている妻は、不満があっても、我慢する。残業時間の規制など、人間らしく働けるような規制が必要である。
分断ではなく
保育園に入所できないと異議申立てが今年も各地で相次いでいる。外国人を「管理」しつつ資源として「活用」する前に、保育園待機児童問題などやるべきことはある。公的な育児介護支援をしないで、私的に外国人家政婦を雇って解決しろというのは、違うだろう。
世界経済フォーラム(WEF)の調査で、経済社会における男女平等の度合いで日本は136国中105位。政府は指導的地位に女性が占める割合を2020年までに30%程度へ引き上げる目標を掲げた。その目標にけちをつけるつもりはない。しかし、安い労働力として外国人を「活用」して、「指導的地位」の女性の「活用」を達成する。そんな女性たちの分断を、私たちは望んでいない。そう思いたい。