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遺伝子組み換え作物を口にしている自覚はありますか?

深井恵2012.10.11

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先月のコラムで、株式会社立の広域通信制高校の問題点について書いたが、昨秋から文科省が行った調査で、その7割が法令違反であることが明らかになったらしい。2012年8月19日付けの朝日新聞東京本社の記事にもそのことが報道されていた。構造改革特区法が禁じている「特区外での教育活動」がその違反点という。同朝日新聞の記事によると、株式会社設立による高校は21校。全て通信制で、21校のうちの少なくとも15校が、200を超えるサポート校で単位認定のための試験を、子どもたちに受けさせていたらしい。文科省はこの「単位認定のための試験をサポート校で実施したこと」が特区法違反に当たると判断している。

しかし、そもそも全国どこからでも申込みが可能な広域通信制高校が、「特区限定」であるという位置づけに無理があった。サポート校にはグラウンドも体育館も調理実習室もなくてよい。教える側の担当者は教員免許がなくてよい。こういった学習環境で子どもたちへの教育の質の保障を担保できるのか、年に1回から月に1回程度のスクーリングで単位を認めていいのかと問題点を感じていたが、それら広域通信制高校の7割が法令違反状態と知り、納得した。同記事に文科省担当者の「脱法行為であるうえに教育の質も低く、高卒資格を売り物にしたビジネスになっている」というコメントがあったが、まさにその通り。だが、「株式会社立」という最初の段階で、既に利潤追求のビジネスが大前提だった「特区」のはずだ。教育を利潤追求の対象として「特区」として認めたこと自体が、大きな大間違いだったのではないか。

文科省は今後法令違反をしている株式会社立の広域通信制高校に対して規制に乗り出すらしいが、全国各地にいる子どもたちが、遠く離れた本校へ行かなければならない回数が格段に増えることになり、交通費や宿泊費などの保護者負担が増えることが懸念される。また、株式会社立の広域通信制高校は、高校授業料無償化の対象になっていないままだから、卒業までに必要な諸経費は私立大学レベルの金額になりそうだ。不登校や高校中退者に対して公教育の通信制高校が手を引き、経済的負担の大きい株式会社立の通信制高校を受け皿として位置づけることは、公教育としての責任を放棄していることに他ならない。文科省は法令違反として規制をかけるだけにとどまらず、不登校や高校中退者に対する教育を公教育としてどうとりくむか、新たな政策を進める必要があるのではないだろうか。

話は変わるが、先月友だちと一緒に東京・渋谷で映画『モンサントの不自然な食べもの』(監督:マリー=モニク・ロバン 2008年・フランス、カナダ、ドイツ・108分)を観た。モンサント社については、「ラウンドアップ」という除草剤のメーカーであることと、その除草剤に対する耐性を持たせた遺伝子組み換え作物(以下「GM」)をつくり、除草剤と耐性種とを抱き合わせて買わせる・・・ということくらいしか認識していなかった。以前、雑誌『週刊金曜日』にも記事が掲載されていた。今回のこの映画の上映情報も同じく『週刊金曜日』で知った。お菓子のパッケージに「遺伝子組み換えでない」という表示は時々目にするものの、「遺伝子組み換えである」という表示をこれまでに見たことはない。しかし、形を変えて、おそらくは既に自分の口に入ってきているであろうことは想像に難くなかった。自分が既にどのくらい消費しているのか、考えるのも恐ろしいが、現実を直視するつもりで観に行った。

映画の内容は、想像を遙かに超えるGM作物が席巻しているものだった。枯れ葉剤やPCB,牛成長ホルモンから始まって、バイオ産業になっていくモンサント社の歴史。モンサント社が急成長した政治的背景に、ブッシュ政権下の「規制緩和と小さな政府」があったこと(・・・このフレーズ、どこかで聞いたことあるよね)。モンサント社の農薬を撒いた付近の住民に、小児がんが発症したり、水鳥たちが死んでしまったり。モンサント社と利害関係のない科学者が本当に安全なのか調査した実験データを示したところ、解雇される等して職を追われたり。政府の役人と安全性を確認する役所の職員とモンサント社の人間が「回転ドア」のように入れ替わっていたり。メキシコの在来種のトウモロコシが絶滅の危機に陥り、GMトウモロコシが席巻していたり。

2012年9月29日(土)の朝日新聞の別冊「be」にも遺伝子組み換え表示に関する記事が掲載されていた。その記事によると、日本が輸入している穀物の半分以上がGM(しかも「推計」)であること(輸入量の多い順に、トウモロコシ、大豆、菜種)。主な原材料でなければ、GMが含まれていても表示義務はないこと。油や醤油など精製や加熱の過程でDNAやタンパク質が変成するものは、科学的にGMかどうかを調べることができないということで、これまた、表示義務から外れているということ等、「遺伝子組み換えでない」を文字通り信じてはいけないことが分かった。

輸入したトウモロコシの大半は、飼料として使われているようだ。GMトウモロコシを食べて育った牛や豚を食べれば、人間も間接的にGMを食べたことになる。大豆は大半が製油として使われているらしい。サラダ油は菜種から作られていると思っていたが、サラダ油の原料は菜種の他に、大豆、トウモロコシ等もあるそうで、GMであることを表示する義務のない油に、GMトウモロコシやGM大豆、GM菜種が用いられている恐れがある(調べようがないのが怖い)。

和食に欠かせない大豆(味噌、醤油、豆腐、納豆、油揚げ等々の原材料。枝豆も大豆。)だが、大豆の国内自給率は5%程度。実に9割以上を輸入している(・・・これで「和食」と言えるのか?!)。大豆の輸入先は7割以上がアメリカ。そのアメリカでは大豆の9割近くがGMだというのだから、自覚のないまま、もう既にGMを食べているんだろう。ビールや発泡酒、第3のビールの原材料を見ても、コーンスターチや大豆たんぱく、小麦のスピリッツ(・・・小麦の精神?!・・・じゃないか)等、GMが用いられていても不思議はないものばかり。

モンサント社はGM小麦にも開発の力を入れているようで、近い将来、パンもうどん(讃岐うどんのおいしい「コシ」を出すには、ニュージーランドの小麦が一番だとか?!)もGMだらけになりかねない。米は大丈夫なのだろうか。小規模な面積で個人の農家が各家庭ごとに行っていた米作りも、農業従事者の高齢化や広い面積を企業が一括して作付けしていく方策が進んでいくと、GM作物と除草剤セットでつくったほうが効率的だと判断し、日本の米もGMが一般的・・・などという日はこないだろうか。日本のTPP参加が進もうとしているが、TPP参加はGM穀物を日本国内で席巻させることになりはしないか。そんな日が来ないことを祈りつつ、個人で減農薬による米作りをしている知り合いからお米を買って、少しでもGMに対抗しようとしている今日この頃である。

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