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医療の暴力とジェンダーVol.24 防衛費倍増

安積遊歩2023.01.08

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岸田政権が今後5年間で防衛費を倍増するというニュースを聞いた。マスコミはそれらのニュースに対してなんの批判もなく垂れ流しているように見える。倍増を閣議決定のみで決めたという。なんのための国会なのか。選挙で選ばれた議員たちによる審議もなく、閣議決定で人殺しの予算を通していくとは…。怒りも憤りも通り越して、体調不良になりそうだ。

大体防衛費というのは、障害を持つ私にはまるで関係がない。歴史上、武器や武力で私たちの命を守られた試しはない。それどころか、どの戦争の中でも足手まといとみなされた障害を持つ人は、いわゆる敵ではなく味方によっても殺され続けてきた。だから、今回の5年間で防衛費倍増というニュースは、様々に最悪なニュースばかりの中でも特に最最悪のものだ。少なくても今まで政府は、こうしたことをするためには憲法が邪魔をしていると考え、憲法を変えようとしてきた。しかし今回はそれさえも無視しまくっている様にみえる。

安倍元首相の国葬のこともそうだが、民主主義の三権分立をまるで守らず、予算を通しまくるのは、独裁国家、そのものだ。台湾有事とか中国の脅威とかさまざまに言うが、もしそれらがあったとしても対話で解決するために民主主義がある。日本の政治は繰り返すが、三権分立で行われてきたはずだ。そのために、選挙というシステムもあるわけだ。選挙によって選ばれた議員がまったく蚊帳の外に置かれている閣議決定。莫大なお金が殺人に回ること、こんな重大なことを閣議決定で通してしまうその横暴さ、野蛮さに鈍感になりたくない。

最も自民党政権の数の力で、国会でもさらに承認されてしまうだろうという無力さと絶望感が人々に回っていることも確かだが、議員がもし一人一人自分の考えを組織の方針よりも先に正直に表現することができたら、どうなるのだろう。それでも防衛費は倍増されるのだろうか。この国の同調圧力の半端なさは自民党と言う組織のあり方から波及しているさえ見える。

クリスマスには娘がニュージーランドから3年ぶりにやってくる。娘は日本のコロナの蔓延を少し怖がっているが、私はそれ以上に自民党政府の暴走が怖い。コロナ対策で、自民党政権がしたことは徹底的なマスクの着用とワクチンの推奨はしていないというポーズを作りながらの強制。日本に住む多くの人はお上から言われることには従順となる。今回のコロナで思ったことは教育の中に自分で考えてはいけない、お上の言うことを聞きなさいというポリシーが脈々と受け継がれてきたなということ。

最近、子どもたちに三年前と比べて不登校が2、3割増えているという。マスクをして学校に行くことで、体調の変化もあっただろうし、それ以上に人間関係が表情が隠されたことで、悪化もしただろう。マスクの強制は小中学校の中にまだある。そのことを非合理的と考えた千葉県知事が22日、黙食をやめるようにと各市町村に通知を出したという。教育こそ自分で考えることを教え伝えなければならないのに、県知事の権威が必要で、その通知を出した人は千葉県にしかまだいないらしい。

大人の世界ではマスクによる過度な強制や制限は少しずつ無くなってはきている。しかし、学校の中ではそれが依然として続いていたのだということを知り、心から怖くなる。子どもたちが自分の身体の自由を楽しみケアする力を奪われていく中で、戦争に都合のいい人づくりが行われていると思うから。

それでなくとも教育は企業戦士作りを長い間目的として、競争原理が満ち満ちた場だ。障害があるとみなされたら、その競争原理に乗るのは難しいだろうということで、特別支援学校に排除・隔離される。多様な存在が共に生きることで様々な学びを得ることのできるはずの教育の場に、障害を持つ子を分断する法律が通ったのが1978年。養護学校義務化というその法律が通った時、私は子供たちに多様性を阻むことで戦争への道にならなければいいがと嫌な予感がしたものだった。

障害を持つ子は戦争を起こさない、戦争を止めるための存在であるとさえ私は思っている。なんといっても私たちは武器を扱えない身体を持っている。しかし、殺し合うことが正しいとされる社会の中では、障害を持つ人が生まれないようにという法律が各国にあった。日本においても障害を持つ人の存在は戦争の邪魔になると言わんばかりの旧優生保護法が1996年まであって、私たちの生殖の権利は脅かされ続けてきた。

防衛費倍増のニュースを聞きながら、私は自分が12月20日に出版した『このからだが平和をつくる ケアからはじまる変革』という本を友人・知人に読んでほしいと送りまくっている。

中国で天皇の軍隊として加害者だった父、そしてシベリアで捕虜となり被害者となった父。そして生まれた時から20代まで小作農の娘として戦争による貧しさを生き抜いた母。その2人が骨の弱い私を産み、平和への深い深い想いをこの身体に託してくれていたのだろうとさえ思っている。傷つけ合い殺し合う世界から、助け合い分かち合う世界にシフトするためにどうできるのかを、私の本を手に取ってさらに考えてほしい。


1/22に「このからだが平和をつくる ケアからはじまる変革」大月書店 出版記念で荒井裕樹さんとトークショーをします。 ぜひ見て、あるいは聴いてほしいので、申し込みください。予約が必要です。


会場参加用 https://0122konokarada.peatix.com
オンライン予約ページ https://0122konokarada-online.peatix.com/
また、それより約1週間前の1/16には、娘「宇宙のニュージーランド日記 懐かしき未来の国から」ミツイパブリッシング出版の、トークショーが青山ブックセンターで19時より行われます。こちらは、宇宙の新刊出版記念のトークショーで、写真家の安田奈津紀さんをお招きして行います。こちらへの予約は青山のブックセンターに問い合わせください。ただこちらはオンライン配信はありません。どちらのトークショーにも私たち親子は参加していますので、みなさんとお会いできるのを楽しみにしています。

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安積遊歩

安積遊歩(あさか・ゆうほ)

1956年2月福島市生まれ
20代から障害者運動の最前線にいて、1996年、旧優生保護法から母体保護法への改訂に尽力。同年、骨の脆い体の遺伝的特徴を持つ娘を出産。
2011年の原発爆発により、娘・友人とともにニュージーランドに避難。
2014年から札幌市在住。現在、子供・障害・女性への様々な暴力の廃絶に取り組んでいる。

この連載では、女性が優生思想をどれほど内面化しているかを明らかにし、そこから自由になることの可能性を追求していきたい。 男と女の間には深くて暗い川があるという歌があった。しかし実のところ、女と女の間にも障害のある無しに始まり年齢、容姿、経済、結婚している・していない、子供を持っている・持っていないなど、悲しい分断が凄まじい。 それを様々な観点から見ていき、そこにある深い溝に、少しでも橋をかけていきたいと思う。

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