今月は書きたい話題が三つあります。
一つ目は、先日発行された北原みのりさんの著書『アンアンのセックスできれいになれた?』(朝日新聞出版社1300円+税)について。この本、おもしろくて一気に読みました。『アンアン』という雑誌を私は一度も手にしたことがないのですが、北原さんのこの本で、アンアンの歴史を学べた気がしています。上野千鶴子さんが『不惑のフェミニズム』という本を出しましたが、『アンアン』も「アラフォー」。北原さんの『アンアン』分析によると、日本の女性がこの40年間で解放されてきたのかと思いきや、どうもそうではない。時代が進めば少しずつでも女性は解放されていくのではないかと、楽観視してきていた私ですが、むしろ、ここ数年でさらに逆行しているということ。詳細はぜひ『アンアンのセックスできれいになれた?』を買って読んでのお楽しみってことで。
二つ目は京都教育大学集団準強姦容疑事件に関する京都地裁の判決(7月15日)についてです。この事件は2009年2月25日、京都市中京区の居酒屋で、酒に酔った女子学生を居酒屋店内の空き部屋に連れ込み、6人の男子学生が集団で性的暴行を加えたというものです。加害者の男子学生に対して大学側は、除籍や退学扱いにせず、無期限停学とし、教員に必要な人権感覚を身につけるための更生プログラムを受けさせたとのこと。そして、この大学側の対応に、加害者男子学生のうち4人が大学から受けた無期停学処分を不当だとして訴訟をおこしました。その判決で京都地裁が男子学生の言い分を認め、処分無効・各人10万円の慰謝料支払いを大学に命じたのです。
その判決に対して、木村涼子さん(大阪大学大学院)が発起人となり、緊急声明を出し広く一般市民に訴えました。緊急声明の内容は、1)「被害を訴えた当事者」不在の〈被害者非難〉について、2)大学の対処の正当性について、3)被害者保護の必要性についてです。
「セクシュアル・ハラスメント」という言葉が流行語大賞をとってから20年余り。企業や学校ではハラスメント対策が浸透しつつあり、セクハラ防止研修やセクハラ予防教育が進められています。しかし、今回の京都地裁の判決は、それらの対策を後退させてしまいかねません。この判決を受け、大学側は控訴しました。教育に関わる者の一人として、今後の動向に注視していこうと思っています。
そして三つ目は、先月のコラムで触れた「上関原発建設反対キャラバン」についてです。
8月15日(月)~19日(金)「上関原発建設反対キャラバン」に参加しました。このキャラバンは、現在国内で唯一原発の新規立地が計画されている山口県上関町に原発建設をさせず、脱原発をアピールするものです。キャラバンの行程は「長崎コース」と「広島コース」があり、「長崎コース」は長崎県の爆心地公園を出発し、佐賀県、福岡県を通って山口県上関町まで。「広島コース」は広島県の平和記念公園を出発し、山口県に入り上関町まで歩き、この二つのコースが、8月28日に上関町で行われた「8.28さようなら上関原発全国集会」で一つになりました。私が参加したのは、長崎の爆心地公園から諫早市、大村市、佐世保市を通って、佐賀県の伊万里までの20?×3日間歩く行程でした。
原発建設反対の横断幕やのぼりを掲げ、「子どもたちを放射線から守れ!」と書かれた黄色いTシャツを着て、脱原発を訴えながらひたすら歩きました。車のクラクションやライトでキャラバンを応援してくれる市営バスやタクシーの運転手さん、ファミリーレストランの窓を開けて声をかけてくれた部活帰りの高校生、わざわざ店の外まで出てきて声をかけてくれる美容院の人等からの声援をうけました。吉尾耕牛宅跡の前や、波佐見焼きの窯の横を通ったりして、長崎の町並みを楽しみつつのキャラバンでした。筋肉痛にもならず、マメもできず、3日間で9万歩余りが「日本一周歩数計の旅」に新たに加わりました。
このキャラバン参加要請の際に、担当事務局に参加者として私の名前をFAX連絡したところ、直後に担当事務局から「女ん子かえ? 大丈夫かえ?」と問い合わせの電話がかかったそうです(心配してもらえない男性は、きつくても弱音を吐けなくて大変?)。男性しか参加できないような行事を企画するようでは、組合運動に広がりは望めません。8月の炎天下を3日間で60?歩くような内容を考えたのは、おそらく男性組合役員でしょう。最大80名から最小20名弱のキャラバン隊(一日参加や半日参加の方もいました)の中に、女性参加者は最大で5名(半日参加)。ジェンダーの視点で組合活動をチェックすることがいかに必要か、再認識したキャラバンでもありました。
このキャラバンの途中、サッカー女子日本代表チームが国民栄誉賞を受賞したというニュースが流れました。国民栄誉賞の副賞はなんと「化粧筆のセット」。趣味悪過ぎ…(と思ったのは私だけ?)。副賞を受け取った選手たちへのインタビューでは「ピッチでは使えませんが…」と言わざるを得ない状況でした。なぜ、東北の復興支援につながるような品(たとえば、福島の大堀相馬焼や会津焼、宮城の雄勝硯など)を副賞にしなかったのでしょう。熊本の化粧筆には何の罪もありませんが、いまこの時期の女子サッカーの副賞になぜ「化粧筆」なのか。「なでしこジャパン」というネーミングにもずっと不快な思いを抱いていたし、女子サッカーのユニフォームのピンクの部分にもレッドカードを出したくてしょうがない私には不可解でなりません。
サッカー女子日本代表は今回のアジア予選で快進撃を見せてくれました。その報道の在り方、扱われ方は、サッカー男子日本代表のそれと比してどうでしょうか。彼女たちの活躍が、女子スポーツの報道の在り方・扱われ方を変えていってくれるものと信じて、女子代表選手が多く所属している「INAC神戸」のスポンサーの商品「黒糖ドーナツ棒」をかじりながら今回のコラムを書いています。