11月22日に東京都(イイノホール)で行われた「女性に対する暴力に関するシンポジウム」(内閣府主催)と、11月23日から25日にかけて千葉県(幕張メッセ他)で行われた「DV根絶国際フォーラム・第10回全国シェルターシンポジウム2007」(特定非営利活動法人 全国女性シェルターネット主催)に仲間数人と参加しました。
「女性に対する暴力に関するシンポジウム」では、内閣府が募集した「女性に対する暴力に関するシンポジウム企画委員会」(以下「企画委員会」)から「若い世代における『恋人からの暴力』に関する調査」の結果が報告されました。最近「デートDV」と呼ばれるようになった内容も含まれています。この調査結果は、11月10日付けの新聞各紙等で既に報道されたものです。新聞での取り上げられ方はさまざまで、調査した企画委員会の真意が伝わらない報道の仕方をされた感もあったとのことでした。
大きく取り上げられた項目は、携帯電話に関し恋人からされた行為「Q5:あなたは、携帯電話に関して、次の行為を恋人からされたことがありますか?」という質問の回答と、恋人からされた行為「Q6:あなたは、次の行為を恋人からされたことはありますか。あてはまるものをすべてお選びください。」という問の回答。
Q5の回答では「電話に出なかったり、メールにすぐ返信を出さないと怒られた」と答えた人が、女性32.2%、男性45.3%
Q6では「恋人が急に機嫌が悪くなったり、優しくなったりして、いつも気をつかわされる」を選んだ人が、女性25.4%、男性42.2%
これらを受けて、
「不機嫌な恋人に『いつも気をつかう』男性は42.2%」(産経)、
「若い恋人、携帯に束縛感も『出ないと怒られる』男性45%」(読売新聞)
といった見出しがつけられたようです。
この話を職場の同僚にしたところ、「恋人に気をつかうのが嫌なら、つきあうな! 相手に気をつかうのが恋人だろ!」と一喝。なるほど、確かにそういう見方もありますね・・・。
私自身は、こう考えました。
そもそも、女性は小さい頃から「気をつかう」ように躾けられて大きくなった。「気のきかない女」にはならないように、「気のきく女性」「気がつく女性」になるように育てられていると思うのです。ですから、女性は基本的にいつも気をつかっている。わざわざ「気をつかおう」と思わなくても、知らず知らずのうちに自然に身についた技(?!)で、当たり前のように気をつかって日常生活を送っている。だから、恋人がそばにいるときに「気をつかわされる」なんて思わない。それは、「いつも常に気をつかっている」から。
その一方で、男性は「気のきかない男」にならないように・・と躾けられて育っているだろうか? 家族に、女性に、男性がいつも気をつかうように・・・なぁんて育てられ方をしている男性が、どのくらいいますかねぇ? ほどんどいないんじゃないかなぁ。
ってことで、いつもは気をつかわない男が、恋人といるときに気をつかわされる事態が発生すると、「気をつかわされる」という自覚症状が生まれる。アンケート結果を私はそう分析しています。根拠となる具体的な数値は、残念ながら持ち合わせていませんが・・・。
Q6には、恋人が「避妊に協力してくれない」と回答したのが、女性12.3%、男性0.0%。「嫌がっているのに性的行為を強要される」女性9.2%、男性0.0%という回答もあり、数値は低いにしても、こちらのほうがよほど深刻で大きな問題だと思うのですが、いかがでしょう。
「デートDV」は、残念ながら、現時点ではDV防止法の適用対象に当てはまりません。DV防止法は夫婦や元夫婦、事実婚に限られていて、恋人同士の関係に拡大するかどうかが、今後の課題の一つとなっています。
また、同じくDV法の範疇に入っていない問題として、セクシュアル・マイノリティのパートナー間のDVも挙げられます。先の「シェルター・シンポジウム」の「セクシュアル・マイノリティのDV被害者支援分科会」において、次のような問題が指摘されました。
DV被害相談を受ける側にセクシュアル・マイノリティのパートナー間のDVがあまり認知されていないこと。セクシュアル・マイノリティの人への差別や偏見があること。MtF(身体の性が男性で心の性は女性)がシェルターに保護を求めてきても、他の被害女性へ与える影響があることから対応できないこと。DV防法の同性愛者等セクシュアル・マイノリティのパートナー間の暴力にも適用されるべきであること、などなどです。
誰もが尊重されて人権を守られる、そんな関係を、恋人間だけでなく、家族間、職場の同僚間、社会全体でつくっていけるといいですね。