定時制高校に赴任して、少人数のクラスで一人ひとりの生徒と深いつきあいができる教育環境だと思っていたら、ある生徒からセクシュアリティについて相談を受けました。同性に関心が向いてしまうが性転換をすることには抵抗があるので、いろいろとセクシュアリティについて学びたいという相談でした。
その生徒ととの関わりについては来月に項を起こすことにしますが、性転換手術の拠点であった埼玉医大が、担当医の退職に伴い性転換手術を中止したという先週末の報道は、セクシュアル・マイノリティの子どもたちにとってはツライ報道でした。
「退職後に開業医として活躍して、後継者も育てていってくれるといいよね」と私の友人の一人は言っていましたが、本当にそう願って止みません。
さて、定時制高校に赴任して1ヶ月が経ちました。GW明けに生徒に「GWはどこかに遊びに行った?」と何気なく聞いたところ、「ずっと仕事だった」という答えが多くの生徒から返ってきました。
全日制の高校に勤務していたときには、GWはいつもの休日より多くの宿題プリントを生徒に課していたのですが、「定時制高校には休日課題がない」ことの意味を、今回のGW明けに生徒から学んだしだいです。全日制との違いに、対応に苦慮する日々がもうしばらく続きそうです。
そのGW中には、フランスで右派のサルコジさんが大統領になってしまいました。人権と平等を重視する政策を打ち立てたロワイヤルさんが初の女性大統領となるかと期待していましたが、残念でした。EUもまた右寄りの道へと歩みを進めていくのでしょうか?
そして日本では、十分な審議を経ないまま、国民投票法が成立してしまいました。また一歩、戦争のできる国へと進んでしまいました。この流れを何とか止めたいものです。近い将来、投票権を手に入れることになる生徒には、「社会の動きをよく見極めて、自分の考えをしっかり持つようにしよう」と話をしたところです。憲法をめぐっては、公務員への圧力が今後更にかかってきそうです。自治労・日教組潰しを狙った動きとして、注視しておく必要があるでしょうね・・・。
この国民投票法、そして、今日衆議院を通過した、「イラクへの航空自衛隊派遣延長」。やっぱり安倍さんの訪米土産の一つだったんでしょうか。その点に関連して、辻元清美さんが週刊金曜日5月11日号で鋭い指摘をされていました。
辻元さん曰く、「安部首相に訊きたいことがふたつある」。一つは「シンゾーはジョージに対し、『お宅に押しつけられた憲法がイヤだから私が変えます』と言ったの」かということ。「ホントにそう言ったのなら、それで強固な日米同盟を謳うのはヘンだし、言えないなら、安倍さんの『主張する外交』の正体見たり、となってしまう」。と辻元さんは指摘する。
そしてもう一つは、「安倍さんは『戦後レジームからの脱却』をかかげているけれど、これは地球規模の大変な作業。アメリカが中心になって作った第二次世界大戦後の枠組みを壊すという意思表示である。シンゾーはジョージに向かって『お宅の作った戦後レジームから脱却します』と言ったのですか」ということ。「もしそう言ったのなら、やはりそれで強固な日米同盟はおかしいし、言えてないのなら、単なる内弁慶」。
確かにそのとおりですよね?。でも、こんな視点で安部さんの訪米を報道したメディアがあったでしょうか。定時制に勤務するようになって、夜になかなかTVをゆっくりチェックする時間がなくなりましたが、どうもそんな報道はほとんどなかったような気がします。
教育基本法の「改正」の前も、何万人規模の教育基本法「改正」反対集会をしてもほとんどのメディアが報道しなかったように、(その一方で、「日本人拉致問題」の集会が開かれれば、50人しか集まらなくても報道していましたが・・・)メディアの偏った報道は、それを受け取る側が取捨選択して見極めていかなければ、為政者側の都合のいい方向へと、いとも簡単に流されてしまいます。
5月15日付けの朝日新聞によると、フランスの大統領選挙でサルコジ夫人が投票を棄権していたということを、サルコジさん側近がメディアに掲載差し止めを求める圧力をかけていた可能性があると報道されていました。大統領選のさなかに、もしこの事実が報道されていたら・・・選挙結果は違っていたかもしれません。
働いた後に登校して、学校で数時間学び、ゆっくりと情報を取捨選択している時間がなかなか確保できない定時制の生徒たちにも、メディアを批判的に読み解く力は、ぜひとも育んでいきたい力だと思っています。