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TALK ABOUT THIS WORLD フランス編「セックス・リセッションと少子化の未来」

中島さおり2022.10.06

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子どもを欲しがらない若者が増えている。

私は2005年に『パリの女は産んでいる』という本で、フランスの出生率の高さや、子どもを3人は持ちたいと思っている女性が多いことなどを書いたが、あれから20年近くが過ぎ、フランスも様変わりしたようだ。
当時、幼児だった私自身の娘もちょうど20代前半だが、「子どもはいらない。持ちたくない」と言い出し、彼女を育てることを優先した私としてはなんとなく面白くなく思ったりする。

フランスでは「仕事か子どもか」の選択は迫られなくなって久しい。家庭と仕事の両立は可能だし、スタンダードになっている。だから欲しいけれどあきらめるのではない。欲しくないというのだ。

最近、調査会社ifopが、雑誌ELLEのために実施した調査によると、18歳から49歳の女性の13%が、子どもは全く欲しくないと回答した。社会の変化ははっきりしている。この数字は2006年には2%だったのだ。しかも3歳以下の子どもの母親の12%が、母親になったことを後悔しているという。
子どもを持ちたくない主な理由は、子どもがなくても幸せ(50%)というのが一番大きい。ほんの20年前は子どもは幸せのシンボルのようであったのに。親になる責任を持たず自由でいたい(49%)という理由も続く。私の娘なども、「ママのような良いお母さんにはなれない。悪いお母さんだとかわいそうだし」とやんわり子育てよりも情熱を注ぐことがあるし、親になる責任を引き受けたくないと言う。しかし若い間はとかくそう思うものだし、その点は年齢を重ねるにつれ、変わる部分もあるかもしれないとは思う。

しかし「地球環境の変化(39%)」というのは本当に今の若い世代特有の理由だろう。地球環境が激変するかもしれない、そんな時代に生きなければならない子どもを、産んで良いものかというのはもっともな理由だし、私たち親の世代は立てなかった問いである。

実際、フランスの出生率は、2015年から2020年の5年間で下がり続け、2021年に少しだけ上向いて、1.83に落ち着いている。今後、どう変化するかが注目される。

若い人々の変化といえば、中絶数が激減している。2021年の中絶数は全体としては前年と変わらないのに、25歳以下において大きく減っている。特に18、19歳で低くなっている。

これは避妊知識や手段の普及というよりも、性行為自体が少なくなっていることに原因があるようだ。2022年4月の調査によると、15歳から24歳の43%が、2021年にセックスを一回もしていない。また44%は相手が一人だけ。私が若かった時代のフランス人のような活発な性生活とは大きなコントラストを示している。これはアメリカなど諸外国でも軌を一にした動きで、「セックス・リセッション」と呼ばれている。

ピューリタニズムへの回帰ではなく、インターネットの普及により、関心が他へ向いているからだという。実際、ある調査によれば、18歳から38歳の36%が、セックスしないでストリーミングを見る選択をしている。しばらく前は、二次元彼女などと交際している日本人を不気味に思ったりしていたが、ひょっとしたら日本はこの点において先進国だったかもしれない。

フランスも少子化に向かっているのだろうか。

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中島さおり

中島さおり(なかじま・さおり)

エッセイスト・翻訳家
パリ第三大学比較文学科博士準備課程修了
パリ近郊在住 フランス人の夫と子ども二人
著書 『パリの女は産んでいる』(ポプラ社)『パリママの24時間』(集英社)『なぜフランスでは子どもが増えるのか』(講談社現代新書)
訳書 『ナタリー』ダヴィド・フェンキノス(早川書房)、『郊外少年マリク』マブルーク・ラシュディ(集英社)『私の欲しいものリスト』グレゴワール・ドラクール(早川書房)など
最近の趣味 ピアノ(子どものころ習ったピアノを三年前に再開。私立のコンセルヴァトワールで真面目にレッスンを受けている。)
PHOTO:Manabu Matsunaga

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