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デートDVについて保護者とのワークショップ

深井恵2007.02.16

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柳沢厚労相の「女性は子どもを産む機械」発言。卒業前の生徒たちに、政治の話をするのにカッコウの材料となりました。
政治家の日頃の発言をよく観察しておこう。今回の柳沢発言をめぐって、誰がどんな立場の発言をしたのか、どの政党がどんな主義主張をしたのか、じっくりニュースや新聞報道を分析して、あと1,2年後に選挙権が手に入ったときに、誰に一票入れるのか、どの政党に一票入れるのかを判断する材料の一つとしよう。ってなことを話し、「だから自分はこの人、この政党に、一票入れる」と言える大人になってほしいな・・・なんて思った次第です。

先日、最近注目されはじめた「デートDV」について、先日保護者の方とワークショップを開催しました。仲間数人で、DV朗読劇を行い、そののち、数人のグループに分かれて、子どもたちをDVの加害者にも被害者にもしないためにはどうすればいいのか、そして、もし、DVの加害者や被害者になった子どもから相談されたらどうすればいいのか・・といったことを協議しました。

朗読劇のシナリオを以下に紹介します。

場面1
ナレーター:   エリコとシンゾウは付き合い始めて間もない高校生カップルです。
エリコはバスケットボール部のキャプテンをしている活動的な女の子。
シンゾウはルックスもよく、後輩からも慕われ、生徒会長もしています。
そんなシンゾウにエリコが憧れて告白。二人は付き合い始めました。
付き合い始めた当初、シンゾウはエリコに優しかったのですが、最近では何かにつけイライラし、エリコをハラハラさせています。
今日は日曜日。二人のデートの日です。午前中に部活のあったエリコは、シンゾウとの待ち合わせの時間に十分ほど遅れてしまいました。
シンゾウは既にイライラし始め、今にも爆発しそうです。
シンゾウ  : (イライラして時計を見ながら)ったく、遅刻しやがって。何やってんだ、エリコは!
エリコ   :  (慌てて走ってくる)ごめん、シンゾウ。遅刻しちゃって。部活の後片付けに時間かかっちゃって。
シンゾウ  : 何もたもたしてんだよ。10分も遅刻だぞ。オレを待たせるなよ。ケータイですぐに連絡入れろよ。おまえが、いつ、どこで、何をしてるのか、オレが知るのは当然だ。どうせ部活の後に、男子バスケ部の連中と仲良く話でもしてたんだろ。
エリコ   : そんなことないよ…。
シンゾウ  : それに、何だその格好は。外に出かけるときはGパンにしろっていつも言ってるだろ。ミニスカートなんかはいて来るなよ。他の男に足を見せるな。
エリコ   : (小さい声で)…えーっ、たまにはかわいいスカートはきたいよ。
シンゾウ  : まさか、他の男ともだちがいるんじゃねぇよな。おい、おまえのケータイ貸してみろ。
エリコ   : いや。
シンゾウ  : 貸せって。それとも何か。他の男とメールのやりとりでもしてんのか。
エリコ   : そんなことしてないよ。
シンゾウ  : だったらいいだろ。貸してみろ。送受信と履歴のチェックしてからすぐ返してやる。
エリコ   :  やめてよ。シンゾウのケータイ、私はチェックしたりしないじゃない。
シンゾウ  : オレは、必要なことはちゃんとおまえにいつも伝えてる。俺のケータイをおまえがチェックする必要はない。いつもおまえは連絡不足なんだよ。
(無理やりエリコからケータイを取りあげてケータイをチェックする)
シンゾウ  : 誰だ、この男は? オレ以外の男とメールのやりとりしてんのか。おいっ、エリコ。お前はオレの女なんだぞ。オレ以外の男とは付き合うな。メールのやりとりもだめだ。オレといる間はお前のケータイはオレが預かる。いいな。何だその顔は。殴られないと分からないのか。
ナレーター :  シンゾウはエリコの顔を殴り、エリコは顔にあざができてしまいました。殴っただけでは気がすまなかったシンゾウですが、エリコが黙りこくってしまったので、少し態度を変えました。エリコは怖くて逃げることができず、シンゾウの後をついて行ってしまいました。
シンゾウ  : エリコ、さっきは殴って悪かった。ごめん。オレ、エリコのことが好きだから、お前が他の男と話をしているだけで嫉妬してしまうんだ。お前を愛してるんだ。だから我慢できなくて…。
エリコ   : …うん、わかった。私こそごめんね。遅刻したり、他の男子とメールやりとりしたりして…。
シンゾウ  : うん。わかってくれればいいんだ。殴ったオレも悪かった。そうだ、エリコ。店でアイスクリームか何か食べようよ。殴ったお詫びに、オレがおごるからさ。な、いいだろ。
エリコ   :  …え、いいよ、…いらない。
シンゾウ  : そんなこと言わないでさぁ。な、な、ちょっとだけ、つきあってよ。おまえイチゴのアイス好きだったよな。おれが買ってくる。ちょっと待ってて。
(シンゾウはアイスクリームを二つ買って戻ってくる)
シンゾウ  : お待たせ。はい、イチゴのアイス。おいしいぞ。
エリコ   :  …ありがと。(ちょっと食べて)うん、おいしい。ありがと、シンゾウ。
シンゾウ  : おいしいだろ。よかった、エリコが気に入ってくれて。機嫌直してくれた?
エリコ   :  …うん。もう、大丈夫。心配かけてごめん。
シンゾウ  : よかったぁ。だからエリコが好きなんだ。
ナレーター :  それから二人は、映画を見たり、ウィンドー・ショッピングをしたりして過ごしました。夕方になって、そろそろ帰宅しようという時になり、シンゾウがエリコを自宅に誘いました。
シンゾウ  : なぁ、エリコ、オレんち、寄ってかない? 今日、家族誰もいないんだ。もう少し二人で過ごそうよ。
エリコ   : ええっ。もう遅いよ。
シンゾウ  : 少しだけでいいからさ。な、いいだろ。十分だけでいいからさ。
エリコ   : うーん。じゃ、十分だけね。
シンゾウ  : うん、十分だけ。やったぁ、うれしいな。
ナレーター : シンゾウの部屋でしばらく話をしたり音楽を聞いたりして過ごした二人でしたが、そのうちシンゾウが落ち着きなく何だかそわそわしてきました。
シンゾウ  : エリコ、オレのこと好き?
エリコ   :  うん、好きだヨ。
シンゾウ  : 愛してる?
エリコ   : うん、愛してる。
シンゾウ  : だったらさぁ、オレ、エリコとしたいことがあるんだ。
エリコ   : 何?
シンゾウ  : それは…。
エリコ   : それは?
シンゾウ  : …なぁ、エリコ。オレとセックスしよう。
エリコ   : えっ?
シンゾウ  : …だからさ、エリコ、オレとセックスしよーよ。な、いいだろ。
エリコ   : えっ、そんな。いきなり言われても…。
シンゾウ  : いいだろ。…それとも、オレのこと愛してないのか。
エリコ   : そんなことないよ。愛してる。愛してるけど…。
シンゾウ  : だったらいいだろ。セックスさせろよ。
エリコ   : …うん…、わかった。でも、その前に…
シンゾウ  : その前に、何だ?
エリコ   : その前に…コンドームつけて。
シンゾウ  : 何言ってんだ。女のくせに、オレに指図するのか。コンドームなんてつけてちゃ感じねぇんだよ。オレのこと愛してるんならコンドームなんて言うなよ。おまえはオレの女なんだ。オレの言うとおりにすればいいんだ。オレはコンドームなんてつけないからな。
エリコ   : いや、やめて…
ナレーター : エリコの気持ちを無視したシンゾウは、コンドームをつけずに無理やりセックスをしてしまいました。
場面2
ナレーター :  エリコはシンゾウのことが怖くて仕方がなくなったのですが、怖がる一方で、まだシンゾウのことが忘れられません。どうしたらいいのかわかならいまま、シンゾウから離れられずにいました。そんな日が続いたある日、エリコは担任のツジモト先生に思い切って相談することにしました。
エリコ   :  ツジモト先生、話したいことがあるんですが…。
ツジモト  :  どうしたの、エリコさん。
エリコ   :  相談したいことがあるんです。
ツジモト  :  そう、職員室じゃ何だから、教育相談室かどこかに移ろうか?
エリコ   :  はい、職員室よりそのほうがいいです。
ナレーター :  ツジモト先生はエリコを連れて、周りを気にせずに話のできる教育相談室へ場所を移しました。
ツジモト  :  …エリコさん、何かあったの?
エリコ   :  ………
ツジモト  : ゆっくり考えてからでいいよ。
エリコ   :  …実は、私、いま、同じ学年のシンゾウくんとつきあってるんですが…
ツジモト  :  ああ、あの生徒会長してるシンゾウ君? 礼儀正しいし、成績もいいし、後輩にも人気あるみたいね。素敵な彼氏じゃない。
エリコ   : そうなんですけど、シンゾウ君、私に暴力を振るうんです。
ツジモト  : ええっ、あのシンゾウ君が? 信じられないわね。あなた何か彼を怒らせるようなことしたんじゃないの?
エリコ   : いえ、ただちょっと、待ち合わせの時間に遅れたり、他の男子とメールの交換したりしただけなんですけど、それでシンゾウ君怒っちゃって…
ツジモト  : 遅刻は良くないわね。ちゃんと謝ったの?
エリコ   : はい、すぐに謝ったんですけど、その後殴られて、強引に部屋に連れて行かれて……無理やりセックスされて…
ツジモト  : ええっ、部屋になんか行ったの? どうして逃げないの? のこのこついていくあなたにも落ち度はあるわね。部屋に上がったらセックスに合意したも同然よ。困ったわね。私一人で解決できる問題じゃないわ。お母さんには話したの?
エリコ   : いえ、まだです。
ツジモト  : お母さんに話さないでどうするの、こんな大事なこと。お母さんにだけは先生から電話で行っておくわ。
エリコ   : いいえ、母には言わないでください。絶対に、絶対に、それだけはやめてください。
ツジモト  :  何言ってるの、こんな大事なこと。お母さんに言わないで誰に言うの。
エリコ   : ええっ、先生、そんなことされたら困ります…
ツジモト  : 他の先生方には、今回は内緒にしておくわ。でも、お母さんにだけはどんなことがあっても言わないとダメよ。
エリコ   : そんな…。
ナレーター  : さて、みなさん。もしみなさんが子どもからこんな相談を受けたらどうなさいますか?


ワークショップでは、「親子の会話を頻繁に行っていくことが大事」「メディアにあふれている間違った情報や、ジェンダーの視点で情報をチェックして子どもと話をすること」「相談機関には警察や婦人相談所、民間団体などがあるので、何かあったら相談できること」などなど、明日からすぐにでもとりくめる、身近で貴重な意見が多く出されました。
子どもたちをDVの加害者にも被害者にもさせないとりくみ・・・柳沢発言のようなことばを、口にしないし考えもしない、そんな大人にしていくために、私たちに何ができるのかを考えたワークショップとなりました。

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