「あなたのおかげで、殺さなくてすんだ」〜手紙を送ってくれた読者の方へ
お手紙、週刊女性編集部から確かに届きました。美しい字で丁寧に書いていただいたお手紙、何度も読みました。記事を担当した週刊女性記者の加藤さんと泣きました。
読者から直接手紙をいただけることは物書きにとって一番嬉しいことですが、あなたからの手紙はそれ以上のものがありました。
のこぎりで夫を殺さなければいけないほど追いつめられた背景に何があったのか。殺人者にさせられてしまった女性の背後には、同じような思いをしている女性が無数にいるだろうという想像に苦しみながら書いた原稿でした。だからこそ、「私は彼女と同じだ。夫を殺すことだけ考えて生きてきた」あなたが、「人生を取り戻す」と私の原稿を読んでそう感じて下さったこと、行政の支援を求められたことを、そしてそれを伝えて下さったことに深く感謝したいのです。
昨日、加藤さんが直接届けてくれたお手紙、今日も大切に読み返しています。本当にありがとうございました。行政の支援が行き届いたものでありますように、そして恐怖を感じない生活を送られることを心から願っています。私もいつか必ずお目にかかってお話しをしたいです。その日までお元気でいらして下さい。
北原みのり
先週、週刊女性と私宛に読者の女性から手紙が届きました。匿名で住所も記されていないものでしたが、どうしても返信したい思いでここに記しました。
週刊女性の記事はこちらから読めます。
https://www.jprime.jp/articles/-/22155
今年3月、夫をのこぎりで殺害した75才の女性の裁判を傍聴した記事です。50 年に渡る夫からのハラスメントに耐えてきた事実は、あまりにも悲惨なものでした。それでも、酒を飲んで暴れる、妻に敬意を払わず暴言を吐くというような夫からのDVやモラハラに苦しむ女性は決して少数ではありません。夫の死をどこかで願ってしまう孤独はどれほど残酷なものでしょう。
先月、この記事をネットと本紙に掲載したところ、想像を上回る反響が届きました。その殆どが女性に同情的なもので、そして「私ももしかしたら彼女だったかもしれない」という声でした。そういう中、先日編集部に郵便で手紙が送られてきました。このような内容でした。
“たまたま郵便局で手にして泣きながら読んだ。ＤＶ被害者で、夫を殺したいと思い生きてきた。でも記事を読み、初めて役所に行きＤＶ被害の相談をした。夫に盗られて使えるお金がなく週刊女性は一冊しか買えないけど本当は百冊買いたい。記事が一人の女性を救ったことを知ってほしい。「人生を取り戻すぞ！！」”
この記事は当初オンライン限定の予定でしたが、ネットで記事を読む習慣のない女性、美容院などで週刊女性をたまたま目にする女性たちにどうしても読んでほしいという私の依頼を担当の加藤さんが粘り強く編集部に交渉してくださったおかげで紙面に掲載されました。このようなお手紙をいただき、リアル雑誌の意義を改めて実感することにもなりました。
今も理不尽な暴力に苦しんでいる多くの女性たちがいます。その暴力に耐える必要などないのです。今からでも、いつでも、人生を取り戻すことができます。そういうことを何度でも何度でも声にし、ＤＶのない世界、性暴力、性差別のない社会を一緒につくっていきましょう。
最後に改めて読者の方に。書いて下さったように、いつか必ず私に会いに来てください。安全な空間で、安心して、おおきな声で笑って、週刊女性１００冊買いに行きましょう。
