毎月一度、ラブピスタッフHが話題の新商品をご紹介していくこちらのコーナー。
今月注目の新商品は、「NYTC PRONOUN PIN」!
当事者たちが立ち上げたトーイカンパニー「NEW YORK TOY COLLECTIVE」から届いた、オリジナルピンバッチです。
こちら、大ぶりの丸いピンバッチの中央にクリスタルをモチーフにした可動式のダイヤルがあり、「SHE」「HE」「THEY」から、自分に一番しっくりくる代名詞(プロナウン)を表明できるというもの。
実はこれ、近年英語圏でSNSからはじまりビジネスシーンでも見れるようになっている表現方法なんです。SNSのプロフィール欄やメールの署名欄に、「自分が他者から扱われたいジェンダーの代名詞」を記載する表現で、最近ではステッカーやバッチなどで表現する人も。「They/Them」、「She/Her」、「He/Him」などの記述をご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれません。
自分が自認しているジェンダーや相手が自認しているジェンダーは、見た目などから勝手に憶測で決められるものでなく、本人がどのように扱われたいかを尊重しようという考えから始まったアクション。
インスタグラムでは、シンガーのサム・スミスや、『クィア・アイ』でおなじみのジョナサン・ヴァン・ネス、アメリカの副大統領のカマラ・ハリスなど多くの著名人が、プロフィールにプロナウンス代名詞を記載しています。
一般的に、性自認が女性の人に対して使われる「SHE」、男性の人に対して使われる「HE」、女性・男性という枠組みに当てはまらないノンバイナリーの人などに対して使われる「THEY」などの代名詞があります。
theyというと、中学英語で止まっているスタッフHは三人称複数形・・・?と思いましたが、アメリカの辞典「メリアム・ウェブスター辞典」には、theyの項目に、新たに、男性でも女性でもない三人称単数形として使われるノンバイナリーの意味が加わっているそうで、英語圏では確実に認知が広がっている意味なのだとか。
余談ですが、単数形で使用されるtheyの歴史は古く、文章として残っているものになると1350年代まで遡れるそうです。おそらくそれ以前にも一般的に使用されていた、と言われています。(*1 ) またルネサンス期にも性別を問わない(あるいは隠す)代名詞として文献などに残されており、中世では珍しくない使用法でした。ところが、18世紀になると文法学者の間で単数形のtheyは誤りであり複数形として使用するべき、という宣言がなされ、その後現代に至るまで単数形のtheyは一般的な用法ではなかった、という歴史があります。(*2)(余談終わり)
自分に一番しっくりくる代名詞(プロナウン)は、自分が自認する/他者から認識されたい代名詞を記すことで、間違ったジェンダーで扱われること(ミスジェンダリング)を防ぐことができます。誰だって自分の性自認ではないジェンダーで他者に扱われるのは気まずさがありますが、特に多くの差別と向き合わざるを得ないトランスジェンダーやノンバイナリーにとって、ミスジェンダリングは気まずさだけでなく、「自分が受け入れられていない(存在が認められていない)のではないか」と苦痛を感じる行為です。
また、プロナウンはミスジェンダリングを防ぐと同時に「ジェンダーは見た目などから勝手に決め付けるものではない」というメッセージにもなるので、シスジェンダーでも、自分の代名詞を表すことはアライとしてLGBTQ+コミュニティへのサポートを表明することにもなります。
NYTCのプロナウンバッチがデザインだけでなく表現方法としても素晴らしいのは、中央のクリスタル部分が動くダイヤルになっていて、「SHE」「HE」「THEY」3つの代名詞から選択できること。
これにより、より正確には、「SHE」「HE」「THEY」の3つだけで単純に分類することのできないジェンダーのグラデーションも表現することができるようになっています。
ダイヤルを「SHE」と「THEY」の間にしたり、「HE」寄りのに「SHE」したり、などなど、自分にしっくりくる代名詞、ジェンダーのスペクトラムも表現できます。
さて、私はどの代名詞で表現しようか。バッチを通して、自分のジェンダーを見つめ直すキッカケにもなりそうです。
(*1 )参考: Oxford English Dictionary https://public.oed.com/blog/a-brief-history-of-singular-they/
(*2)ただし口語では現在に至るまで殆どの人が無意識に、知らない人を指す時などにtheyを単数形で使用しています。
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