アジュマブックスのブックトーク 「ハヨンガ」の背景にある韓国フェミニズムの世界
2021.08.20
2021年6月18日アジュマブックスのオンラインイベントには多くの反響をいただきました。より多くの方に読んでいただけるようオンラインの内容をまとめました。
<出演>
チョン・ミギョン(「ハヨンガ」作者・元フェミニストジャーナル「if」編集長」
ソニョン(if books編集者)
大島史子(「ハヨンガ」訳者)
深沢潮(作家)
北原みのり(アジュマブックス代表)
通訳:梁澄子
※「ハヨンガ」とは、若い女性に買春をもちかける男性の隠語を、フェミニストたちが奪い、無意味化し、ついには自分たちの挨拶の言葉にしたというフェミニストの「勝利の言葉」を意味します。
●シスターフッドの出版社「アジュマブックス」、今日は日韓のフェミ話思いきりしましょう!
北原 こんばんは。アジュマブックスの北原みのりです。
今日は作家のチョン・ミギョンさんと、ハヨンガを出版したif booksのソニョンさん、作家の深沢潮さんと、訳者の大島文子さん、そして『咲ききれなかった花』の訳者でもある梁澄子(ヤン・チンジャ)さんが通訳をしてくださいます。今日は韓国からの参加者もたくさんいらっしゃいます。
最初にアジュマブックスの紹介をします。
私は1996年にラブピースクラブというフェミニストの視点で作った女性向けのセックスグッズショップを立ち上げ、以来25年経営してきました。25年を記念し、ずっと望んでいた出版部門を立ち上げました。そのきっかけとなったのが「慰安婦」の女性たちに絵を教えていた美術の先生が書かれた『咲ききれなかった花』とそしてこの『ハヨンガ』です。
ハヨンガに出会ったのは3年前、友人のフェミニストシンガー、チ・ヒョンにフェミニスト出版社ifブックスに連れていってもらったことがきっかけでした。面白い本がある、韓国の中で17年間ずっと続いたポルノサイトを、実際に攻撃して、無くして、国を動かしたメガリアというオンラインフェミニストたちの戦いをベースにした小説だと。これはもう絶対、日本語で読みたいと願いつづけ、それが今年、やっと叶いました。
作者のチョン・ミギョンさんは、if booksの前身の「if」という韓国初のフェミニズムジャーナルの編集長でもあります。今日はまずチョン・ミギョンさんに、韓国のフェミニズムの90年代から今までの歴史を伺います。チョン・ミギョンさん、今日はよろしくお願いします。
チョン・ミギョン:はじめまして。日本の読者の皆さん。『ハヨンガ』作家のチョン・ミギョンです。『ハヨンガ』が日本で出版されて、どんなに嬉しいか分かりません。女性を対象にするデジタル性犯罪は国際的に人権への暴力です。さらに外見が同じようという理由で、韓国と日本の制作物は国境を超えて消費されています。
女性の身体を同意なしに動画に表するあらゆる行為は、性的搾取であり、女性を死に追いやる社会的な殺人だと思います。こういう過激な言葉を使うしかありません。被害者たちの苦しみはどの言葉でも説明ができないからです。
韓国の読者たちはこの小説を最後まで読み上げることが大変だったと言います。重苦しい真実に直面することが、やさしいはずがありません。
しかし私たちがその真実から目をそらしたら、被害者たちの苦しみは私たちのことになるかもしれません。女性がどの社会に住んでも、安全に尊敬されながら、人間らしさを実現できるようにする、その目標を目指して、韓国と日本の女性たちが一緒に進んでいけば良いと思います。
もう一度日本の読者の皆様に感謝します。ありがとうざいます。
●「女性の欲望を明かにする」。それが韓国第3世代、90年代に生まれたフェミニズムでした。
チョン・ミギョン:まずはフェミニスト・ジャーナルifについて、ご紹介します。
私が4人目の編集長を務めた雑誌であり、韓国で初めてフェミニスト・ジャーナルという看板を掲げたたいへん勇敢な雑誌でした。
フェミニスト・ジャーナルifは1997年の夏号から始まり、2006年の春に完刊号、「完成」したということで「閉刊」とは言いません。完刊号まで10年間、合計36号発行した季刊雑誌です。
創刊号では「知識人男性のセクハラ」をテーマに特集を組みました。なぜそういう特集を組んだのかと言いますと、李文烈(イ・ムニョル)という男性作家がいるのですね。
この人は、超ベストセラー作家、韓国の大作家で、彼の本を持っていると、それは知識人の印と言われるような、そしてオピニオンリーダーでもある。この人が『選択』という作品の中で、伝統という名のもとに、女性を猛烈に嘲笑うという、そういうことをやってのけたのですね。
社会から尊敬される知識人男性のセクハラをテーマにしたというのは、もうちょっと広い意味でいうと、当時の社会文化的な流れを主導する知識人男性たちの根深い女性嫌悪と、女性卑下、ミソジニーをターゲットとして、それと戦うという第一歩だったと言えます。
この創刊号に載せた文を紹介したいと思います。
「フェミニスト・ジャーナルif創刊にあたって。女性は長い間、男性の欲望と男性の快楽の対象に過ぎなかった。今、女性は自らが自らの主人になって、女性とは何かという問いを改めて始めなければならない。私たちは誇らしく宣言する。ifはフェミニスト・ジャーナルである」
その後もいろいろな特集を組みました。
「オーガズムを求めて」という特集がありました。これは女性自らが自らのオーガズムを求めて旅をするという特集です。
「家父長制との全面戦」という特集もありました。これはフェミニスト・アーティストたちの作品を紹介して、蹂躙された女性たちについて、特集を組むというものでした。
「今、私たちは堕胎について語る」という特集もありました。韓国は非常に保守的な社会ですから、妊娠中絶に関してはタブー視する雰囲気がありました。ですから女性たちは、妊娠中絶の経験を話すことができなかった。そういう中でifが初めてこれを公論化した、公にしたと言えると思います。
「子供を産みたくない」という特集もありました。韓国も少子化が問題になっていて、これは国家的な危機だという風に、これまでのメディアですとか、政界は言ってきたわけですね。
ここで私たちは出産ストライキという言葉を初めて使いました。女性たちがこれに対して積極的に自分たちの意見を物申すという特集を初めて組ました。
ifはこういう特集を組むと、すぐに他のメディアに扱われて、記事化されて、また社会的な話題にもなりました。
このように大きな関心を買ったifですけれど、実は私たちは非常に楽しくフェミニズムをやりたい、語ろうという、楽しいフェミニズム、愉快なフェミニズムというのを志向していました。
ifというのは、女性の欲望というのを明らかにするというコンセプトだったんです。これまで犠牲とか献身の象徴だった「母」というイメージとは違う、女性が本来持っている、女性たちが本当に望んでいることとは何なのか? ということを、その中にある女性たちの悲しみとか、涙といったものを出しながらも、それを愉快で楽しいフェミニズムに転換させることで、世の中をひっくり返そうとしたのですね。
私がifで仕事していた時代は、韓国のフェミニズムの流れから言いますと、第三世代に位置すると言っていいと思います。当時は各大学に「総女性学生会」できて、活動していた時代ですし、またソウル女性国際映画祭が開幕した時期でもありました。そういった日常の中で、性平等を志向する様々な女性主義、フェミニズムの文化的な流れというのが作られていった時代です。
●第1世代フェミニズムから江南事件、デジタル性暴力まで
では韓国フェミニズムの第一世代というのは一体、いつなのか?
1920年代から30年代、当時全世界的に「新女性」というのが現れていたその時代に、やはり韓国でも近代女性主義の第一世代と言える人々が現れて活動しました。
それから第二世代と言えるのは1970年代から80年代の労働運動です。労働者の解放を通して女性解放を唱えた、女性労働者運動というのが第ニ世代と言えます。
そして2016年に一つの事件が起きます。これは『ハヨンガ』とも関係している事件です。地下鉄の江南駅というところで殺人事件が起きます。地下鉄の江南駅近くの建物のトイレの中に、ある男性が潜んでいて、不特定の女性をナイフで切って殺害したという事件です。
この殺人を犯した男性というのは、そのトイレの中に隠れていて、最初に3、4人の男性が先に入ってくるわけですね。しかしその3、4人の男性はそのまま見逃して、次に入ってきた女性を殺害したわけです。
このことを通して女性たちは、これは女性嫌悪の犯罪なのだ、ミソジニー犯罪になのだ、ということで、20代から30代の女性たちが、それこそ野火のように立ち上がって、新しい女性主義、フェミニズムのアクションを展開しました。その時に、その殺された女性は私なんだ、というハッシュタグをつけた運動を展開したのですね。
そして、それと同じような時期にデジタル性暴力の問題が起きます。
これは年齢・職業に関係なく、社会の隅々まで行き渡る犯罪でした。デジタル性暴力によって自ら命を絶つような女性がいたり、また非常に深刻な暴力に苛まれる女性がいる、ということが大きくニュースに出るようになりました。
そこで、このデジタル性暴力を根絶するための活動というのが始まりました。このデジタル性暴力も女性嫌悪の表れだという風に考えて、女性たちが活動をはじめたのです。
2016年以降のこういった動きを韓国フェミニズムの第四の波という風に見ることができると思います。
※江南事件で#MeToo #WithYouのポストイットはその後、女性家族省の図書館で展示され保管された(2019.8月時点)
●SNSから女が消されようとしていた。露骨なオンライン・フェミサイドと闘ったメガリアとの出会い
私が勤めていたifブックスが、メガリアで活動したオンライン・フェミニストたちの活動について収録した記録を出版することになったんですね。そこで私がその編集を担当することになりました(2021年9月「根のないフェミニズム」としてアジュマブックスから日本語刊行予定)。
私がそういう女性たちと出会って非常に驚いたのは、あのサイバー空間で、女性差別と女性嫌悪が、オフラインよりもオンラインで、余計に露骨に行われているという事実でした。
もう一つは、数多くの女性たちがそういったセクハラ的な発言に対して、不愉快だというような反応を少しでも見せただけで、「フェミ」と烙印を押されネット上で叩かれ、駆逐されオンライン上の活動ができないようにされていく。そういうことが起きていました。
オンライン上で活動している女性たちは、男性の名前を名乗って活動する方が楽だという風に言っていました。こういった女性たち、そういった雰囲気に抵抗した人たちの名が、まさにメガリアだったわけです。メガリアというのは新しいサイバー領土、サイバー上の領土を作ろうとする運動でした。その領土に、新たに作った領土に、市民たちを結集させようとしました。
メガリアとは新しいフェミニストたちの運動だったんですが、私が非常に驚いたのは、ミソジニーの現実という苦しい中で、絶対に攻撃に屈せず、積極的に抵抗し、女性たちが連帯して運動をした、その女性たちの爆発力が与える感動が、現実に残酷さに対する驚きよりも、私にとっては非常に大きかったと言えます。
●韓国#MeTooを牽引するオンラインフェミニスト集団「メガリア」の戦い
メガリアの運動はミラーリングと言って、これはこの運動方式自体が大変な議論を呼んだものでした。つまり、女性嫌悪的な発言を嫌悪するということなんですね。つまりこれまでの性差別的、また女性嫌悪的な言語を男性たちに逆にぶつけるというやり方ですね。
これに対して男たちは非常に憤慨しました。でもメガリアの運動を通して見えてきたのは、実は女性たちがこういう女性嫌悪的な発言に対して慣らされてしまっていた事実です。
そしてメガリアたちの活動の対象の中心にソラネットがありました。
ソラネットというのは想像を絶する女性搾取の現場でした。しかし男性たちにとってはよく知られていた世界でした。これをメガリアは、オンライン上でソラネットのユーザー男性を晒しつづけるという活動を行い、ついにはこのソラネットを閉鎖させました。
また最近のフェミニズムで、MeToo運動を外すことはできません。
MeToo運動は性暴力の被害者たちがSNSを通して告発をしていく運動でした。オンライン・フェミニストたちがハッシュタグを付けて、#○○性暴力という形で、その○○の中に、組織の名前を入れて、告発をする。その組織の中には、文化芸術界、例えば大学とか学校とか、様々な組織が、性暴力について告発されることになりました。
皆さんもよくご存知かもしれませんが、映画監督のキム・ギドクさんとか、詩人のコ・ウンさんなど、世界的に有名だと言われている男性芸術家たちが#MeTooで告発されました。どれほど長いこと、彼らが女性の体を搾取し、また女性のアイディアを搾取して、世界的に有名になってきたのかということが告発されました。また、さらに50年前の親族性暴力、親族による性暴力がやっと告発されるというようなことも起きました。
この#MeToo運動は韓国社会全般にはびこっていた性暴力を告発しました。どれほどこの社会に悲惨な状況があったのかということに対する驚きもありましたが、しかしそういった驚き以上に、そういう性暴力を受けて苦しんでいる人たちの声を聞く、そしてそれに共感する耳ができたということ、このことが大変大きな意味があったと思います。
こういう耳を作り出したのの1つに、先ほど紹介したメガリア、ソラネットを廃止まで追い込んだオンラインのフェミニズム運動があったと思います。こういったオンライン・フェミニズム運動が韓国社会を大きく変えたと思います。
※メガリアのマークは男性の小さなペニスをあざ笑う指の形になっている。こういった戦いには常に賛否両論がつきまとったが、そもそも「そのような」侮辱を女性に繰り返してきた男性たちの振る舞いよりもなぜフェミニストが攻撃されるのかという問題を、メガリアは社会につきつけた。
●if マガジンからフェミニスト出版社if booksへ
北原:素晴らしいお話をありがとうございました。
私が初めて韓国の「ソウル国際女性映画祭」に参加したのは2001年の第三回の時でした。同世代のフェミニストがいっぱいいて大変な活気があり感動したのを覚えています。if マガジンを紹介してくれたフェミニストシンガーのチヒョンが「マスターベーションの歌」「おじさん嫌い」という歌を楽しげに歌っていて、何なの、この面白いフェミストたちは? と衝撃を受けたものです。あの時から韓国フェミニズムの勢いや明るさや、そのどんなに悲惨であっても発信することを諦めない強さ、表現力に圧倒されてきました。
ifマガジンはグラフィック的にかっこよかったですね。しかも、一番最初の号が#MeTooっていう。知識人に対する告発っていう、非常に意義深い、今の世界に繋がる一歩だったんですね。それを10年間続けてこられて、しかも「閉刊」ではなく、「完刊」と!
実は打ち合わせの時にチョン・ミギョンさんが「閉経」も「閉経」と言わずに「完経」と言うのだと教えてくれたのです。つまり閉経した女性は、「完成」されたということを意味するんだよって!
ifマガジンも閉じたのではなく、やり遂げたのだと、完成されたその10年を自分たちは作ったのだっていうお話しに改めて触れることができて興奮しています。
今日はifマガジンのその後に立ち上がったフェミニスト出版社if booksのソニョンさんにも来ていただいています。
ソニョン:2017年に改めて出版社を立ち上げて、現在までに13冊の本を出版しました。『ハヨンガ』がその13冊の中の3番目の本だったと記憶しています。本格的なフェミニズム・ドキュメンタリー小説ということで、ifとしては初めての小説だったんですね。
それで当時かなり話題にもなりましたし、今回、日本でこの翻訳出版がついに成し遂げられたという意味で、大変喜んでいます。またifブックスではインドのフェミニズム出版物を韓国に紹介するようなこともやっています。
一番最近出版したものは「フェミニズムで書き直す昔話」という本なのですね。これは昔から伝わる「民談」といって、民の中で伝わってきた口承みたいなものですね。それから「説話」といって、昔からずっと口伝えで伝えられてきたようなものを、フェミニズムで再解釈するという本なのです。これ、思った以上に反応が良くて、書き直したいっていう女性が非常にたくさん現れたので、この書き直すプログラムというのも今、運営しています。
チョン・ミギョン:わぁ、いいわあ。
北原:書き直したい本、私たちもいっぱいありますよね。
次に深沢潮さんにお話を伺いたいと思います。さっき私、日本だとなかなか勝利の本が無いっていう風に言ってしまって後悔しています。深沢さんの最近の『乳房のくにで』では、女の人たちが戦って変えていこうっていうというような希望が書かれていました。
※北原が参加した2001年第三回ソウル国際女性映画祭のポスター。あまりに感動してこのポスターは20年近くラブピオフィスに展示していました。See The World Through Women's Eyes! は私が00年代していたポッドキャスト「婆星」のテーマでした。
●日本の読者は堪忍袋の緒が切れている状況。社会を変える、動かす物語がわたしたちには必要なのかもしれない。
深沢:こんばんは。深沢潮です。「ハヨンガ」本当に面白かったです。「面白い」はいろんな意味がありますが、「ハヨンガ」は様々な「面白い」要素が詰まっていました。
まず知らない世界を知る面白さが「ハヨンガ」にはありました。悲惨なエピソード、辛い描写の底辺に明るさ、常に前向きであるという部分があります。また友人同士の会話、特にインターンの様子やキャラクターには思わず笑ってしまうこともありました。
またこの小説は複数の登場人物が出る群像劇になっています。登場人物たちの物語が最後にむかってどんどん一つになっていくっていう群像劇の面白さと、盛り上がりという構成も素晴らしかったです。
さらにミステリー的な要素もあります。一体犯人は誰なんだとか、この事件がどうなるのかというサスペンス的なところもあって、本当に良く練られていると思いました。時間をかけて取材をされ、時間をかけて物語を作ってらっしゃるというのが分かりました。
自分が日本の文芸界に身をおいていて思うことですが、個人が克服する話が多いのですよね。構造や社会を変えていくという物語は、特に女性が主人公のものは、そんなに多くはないのですよね。
以前は私自身も、個人が克服する物語が中心だったのですけど、一歩進んで社会を変えていく物語を書きたくて「乳房のくにで」を出しました。「ハヨンガ」も個人の克服だけではなく、世の中に対して戦い、勝利を獲得していって、世の中に影響力を及ぼすという話なので、そこが今、日本の読者に求められている物語なんだなと思います。
日本の読者は今、堪忍袋の緒が切れた状態なんです。そうすると女性たちはこういう物語を提示されると、生きる力が湧いてくるんです。さっきチョン・ミギョンさんが仰ったように、例えばSNSでフェミニスト的な発言をすると攻撃を受けることは、日本もまさに全く同じです。そこに今、耐えている人たちに本当に読んでほしいなと思います。戦っていく、シスターフッドを通して獲得していくフェミニズムというのが、まさに小説の中に描かれていますよね。
最後に個人的に、キャラクターづくりがすごくお上手だなと思ったのは、ちょっとアライっぽい男の子が出てきますよね(シヒョン)。彼はフェミニズムに理解がある優しい同僚ですよね、でもやっぱりボーイズクラブ的な発想があったり、ホモソーシャル的で、仲間との間で、女性を卑下する仲間の言動をも黙って見過ごすみたいなところが、ごく普通の韓国男性です。そのキャラクターは、本当にリアリティーがありました。
●フェミニズムの一歩は、女性たちが助け合う小さな集まりから。
北原:チョン・ミギョンさん、今のお話し聞いていかがでしたか?
チョン・ミギョン:メガリアの女性たちの戦いについて、私は女性たちの話を聞く「耳」が現れたっていう風に言いました。つまり「連帯」のことを言いたかったのです。私がこういう小説を書けたのはやはり、ifでの経験があったからだと思うのです。ifで女性たちが集まって、そこでお互いの傷を治癒し合う、そういう過程があった、その経験があったから、今回こういう小説を書いたのだと思うのですね。
私がよく女性たちに言うのは、どんなに小さな集まりでもいいから、女性たちの自助的な集まり、お互いを助け合うような集まりから、まず始めましょうと、そういう風に声をかけるようにしています。
北原:次に訳者の大島史子さんにお話をいただきます。間近で翻訳作業をみるのは初めての経験だったのですけど、そもそもやっぱり、日本語を縛るジェンダーというのが、どれほど私たちの思考も縛っているのかということに気づかされました。
例えば本の中でデートDVを受けるシーンがありますが、その時に女性が『やめろ』って言う。それを大島さんが『やめろ』って訳したけど、日本語だと『やめて』っていうような、女性がお願いにする言葉の方が「自然」に読める。『やめろ』とテキストで記すと、発言の主体が男のように読めてしまい読者が混乱するのではないか、というような議論もありました。登場人物の言葉遣いというところから、性暴力を表現する難しさを実感しました。
大島さん、お話しお願いします。
●女性の言葉「やめて、やめろ問題」に苦労した翻訳
大島:『ハヨンガ』翻訳者の大島史子です。翻訳をしてみて、日本語のジェンダー縛りというもののえげつなさ、厳しさを改めて実感しました。さっき仰っていた、まさに『やめて、やめろ問題』なんですよね。
「女言葉」とは女性が使うべき言葉とされているけれど、実際の女性が実はそんなに使ってない言葉で、「女言葉」を本当に頻繁に目にするのは、翻訳小説とか、あと映画の字幕や吹き替えです。
これまで私は「女言葉」とは、いわゆる「てよ」「だわ」など、語尾に特徴があるものだと思っていたのですけど、それよりも『やめろ、やめて問題』から分かるように、命令や禁止や、あと怒りを、断固として表現する言葉が、女性には禁じられていることを翻訳を通し理解して、これでもう日本社会に対する怒りが湧いちゃったのですけどね。今まで騙されていたような気分になったのですね。
ですからさっき深沢さんが、このキャラクターがすごいリアルだったって仰ってたシヒョン君。彼は主人公の一人、ジスの理解のある男友だちです。初めて「ハヨンガ」を韓国語で読んだ時に、ジスとシヒョンの会話が生き生きとしていてすごく楽しかったのです。対等な関係で、ちょっと罵り合えるくらいの。ところが翻訳したとき、始め、伝統的な女言葉を使った吹き替えみたいな訳し方をすると、二人の関係のバランスがすごく崩れちゃうということに気がつきました。ですからジスはちょっと乱暴な、でも若い女性であれば普通の言葉遣い、シヒョンはキャラクターにあわせて柔らかに表現したんですね。
また、『やめろ』『やめて』、というのは本当にちょっと苦しかったんです。それはヒジュンというキャラクターの発する言葉なのですけど、デートDVの場面で、その場で、拒否と禁止と怒りの言葉ですよね。それを『やめろ』だと女性の言葉と思えないっていう意見を聞いて、でもやっぱり『やめて』がダメだって思ったのは、『やめて』っていうのがちょっとポルノ的表現になり得るからなのですね。ポルノの中で性暴力に遭った女性が『やめて』っていう風に、お願いしてしまう。お願いするその場面がポルノとして消費されている。『やめて』って女性が言うことで男性が興奮する、みたいなポルノの世界のレイプカルチャーがあって、だからヒジュンに、そこで『やめて』とはとても言わせられない、というのもありました。
「ハヨンガ」を読んでいただければ分かる通り、女言葉を極力廃しています。だいぶ皆が皆、ぞんざいな言葉を使っているというか、特に女子高生2人の会話が出てくるのですけど、そこは私の知っている10代の若い子たちの会話をちょっと思い出しながらやってみたりとか、でもこれ伝統的に訳すとすればきっと正しいお嬢様言葉を使うのだろうなと思いながら・・・、そんな風に訳していました。
それでも自分の中の、わきまえといいますか、女性にこんな言葉遣いをさせていいのか、文字に残してしまう女性の言葉は女言葉でなきゃいけないのではないかという規範意識みたいなものも自分の中にもあったなっていうのに気づいて、それと戦ってたのですけど、勝ったのは、やっぱりこれがアジュマブックスだったからだなっていうのは思っていて、『やめろ』っていうその表現も、全力で肯定した北原さんや編集の小田さんにも感謝してます。そんな感じです。
●韓国のミソジニーと徴兵制には関係がある?
深沢:私は「ハヨンガ」を読んで、ミソジニーの強さの背景に韓国社会における軍隊、徴兵制度が影響しているのではないかと感じました。
チョン・ミギョン:2000年代の初め、女性を「味噌女」とネーミングすることが流行りました。味噌女というのは利己的な女という意味で、高級シャンプーで髪を洗い、食事より高いスターバックスコーヒーを手に、高級な靴を履く女子大生というイメージです。
じゃあその高いブランド品は誰が買った? 女性たちの食事はだれが食べさせている? という疑いが持たれました。それは基本的には軍隊に行って復学した男たちに奢らせているんだと。
軍隊から復学した学生たちは貧しい格好をしていて、お金も持っていないです。女性たちからすると同じ大学で学んではいるけれど年齢的には年上です。そういう先輩男性たちに女性たちがたかり、お金を使わせる。それがこの味噌女たちのイメージでした。
私も韓国社会でミソジニーを生産する大きな要因は、やはり軍隊に服務してきた男たちだと思います。
今はだいぶ弱まりましたが、男性たちが入隊する前に、軍隊から帰ってきた先輩たちが、童貞を捨てさせてあげると性売買の施設に連れて行ったりする。徴兵期間は性欲を我慢しなくちゃいけない期間だからということで、休暇になると性売買のところに行くと。またガールズグループが軍隊で露出の多い格好で舞台に立つというようなことが、テレビに普通に出てくるといったこと、こういったことがやはりミソジニーを生産していると思います。
韓国社会では徴兵制があり、軍隊文化があり、そして軍隊に行ってきた男たちの視線があるということが、間違いなくミソジニーと関係していると思います。
深沢:徴兵があることへの不満や理不尽な構造への怒りが、女性への嫌悪にすり替えられてるということは、国にとっては都合がいいことだと思います。
チョン・ミギョン:多くの場合、社会的な軋轢の本質がジェンダーの問題に置き換えられてしまう、すり替えられてしまうということがあると思います。
韓国では軍加算点というのがあって、軍に行ってきたら就職が有利になったりするとか、加算されるわけですよね。この軍加算点は違憲だという判決が韓国で出ました。この違憲判決に対して男たちの不満というのがあって、それがまた最近かなり吹き出しているのですね。それがまた、ジェンダーの問題にすり替えられてしまうということがあります。しかしこの問題の本質は徴兵制にあるわけです。国家が強制的に徴兵するという形ではなく、軍隊を維持するにしても、希望する人たちが行くとか、そういう制度に変えるということが実は重要なのに、問題がすり替えられてしまうというのはやっぱりあります。
北原:そうすると素朴な疑問として、日本の男は軍隊行っていないですけど・・・なぜ? という・・・・・。「ハヨンガ」で不思議だったのは、「キムチ女」「味噌女」という言葉、しかもキムチってソウルフードですよね、そういう言葉をなぜ同じ国の女性に当て嵌めて貶めるのか。その感覚が、実は分からないことではありました。
大島さんも、こういう女性を貶める言葉そのものが軍隊と関係あるんじゃないか? ということを仰っていましたたね。
大島:軍隊の休暇で性売買をする伝統があるとチョン・ミギョンさんが仰りましたが、韓国の徴兵制度を視点にいれると、「ハヨンガ」のなかでペク・チョルジンのヒジュンに対する性暴力が、別の文脈から見えてきます。また軍隊に行ってないシヒョンがジスとも友達になれるし、女性の側にも立てるっていうこともやっぱり分かるんです。
あとジスの年上の同僚であるユ・サンヒョクとかが、ジスやシヒョンに何かというとお前たちは軍隊に行ってないだろっていう言い方をしますよね。
そういう韓国の徴兵制度とミソジニーが「ハヨンガ」の中では絶妙に描かれていると思いました。
●社会が変わるのに、何パーセントの人が変わればいいのか? メガリアの答えとは。
北原:元々『ハヨンガ』は、その前にメガリアの女性たちが自分たちの戦いの記録を残した『根のないフェミニズム』の著者たちに触発され、そこから取材がはじまっとのことですが、メガリアの女性たちは『ハヨンガ』に対してどのように仰っていましたか?
ソニョン:小説の構想は彼女たちにも見てもらい意見を聞いていました。実はシヒョンが誰かと恋愛をするというエンディングが最初にあったのです。そこにメガリアの女性たちがすごく反対したのです。それでですね、エンディングの内容が変わって、恋愛のない小説になったのですけれど、これも私は社会の反映だと思いまいた。
大島:私、今、ちょっと納得しちゃった面があります。私も最初、シヒョンいい子じゃない? って思ったのですよね。だからジスがシヒョンに対してアウトをつきつけたときに、これでシヒョンが拗ねちゃって、ミソジニーの側に行っちゃったらどうしようって思っちゃったんですよね。思った後で反省しました、と言うかそれこそが「わきまえ」だなって思ったんですよ。
せっかく女性に理解がある男性なのだからとおだててさしあげる、そんなサービス精神っていうか、それを女性運動だと思っちゃっていたところが、自分にもなかったかなあなんていう気持ちになりました。
だから改めてシヒョンをアウトさせたのは、本当に正解だし、シヒョンを否定したらシヒョンがミソジニーになっちゃうかも、というのは敗者の感覚ですね。まだ勝っていないフェミニストの感覚です。でもジスは勝ったんですよね。勝ったフェミニストはそんなこと気にしないですよね。だからそれを読んで、チョン・ミギョン先生すごいって思っていたんですよ。
以前、『82年生まれ、キム・ジヨン』の作者のチョ・ナムジュさんが、“若い読者の反応にちょっと意外だった”って仰っていたのを読んだことがあります。キム・ジヨンの夫の描写が作家としては、理解のある夫のつもりだったのに、それが若い読者たちは、“何だ、このダメ男”みたいになっているのを見て、私よりもずっと今の若いフェミニスト、若い女性たちは男性への視線が厳しくなっているし、ちゃんと自分の思うことを言えるようになってるんだとチョ・ナムジュさんが仰っていました。改めてチョン・ミギョン先生はすごいと思いました。さらにすごいのは、若いフェミニストの皆さんにモニタリングするっていうのが、またすごいな。それで生まれた納得のエンディング。私も今日、時差で納得エンディングしました。本当にもう完璧です。
北原:今、『根のないフェミニズム』を準備してますけど、その中でね、すごく励まされた言葉があるので紹介したいですね。「世の中のどれだけの人が変わればいいのか?」 という問いかけに対する応えのようなテキストでした。大島さん、お願いします。
大島:あれですね。「どれだけの女性が目覚めれば世の中は変わるのだ」。その答えは「海の海水の塩分は3%。3%であの海になる」です。あ、3%でいいのだって、励まされました。
北原:だから3%の女が変われば、別に男の人を変えなくても、3%の女が変われば、世の中を変える力になるのだっていうような、そういった宝のような話がいっぱいね。
※「ハヨンガ」の前身となった「根のないフェミニズム」。ヘイトスピーチを繰り返す男性を批判したところ、逆に「名誉毀損」と訴えられたメガリアの女性たちによる著作。「匿名」のオンラインフェミニストとして韓国社会を変えた背景にあった戦いが丁寧に記されています。日本語での出版は9月を予定しています。
●視聴者からの質問
北原:それではご質問を紹介します。
「ifの特集や韓国のフェミニズム活動によって、公教育における性教育の変化などがあったら伺いたいです、ということなんですけども。さっき、リプロの話とか中絶の話とか、ifのマガジンの中で積極的に特集を組まれてきたとありますが、それが何か学校の教育とか公的に変えられたようなこととか、ムーブメントがあったら教えてください」
チョン・ミギョン:正直言うと、そういう変化っていうのは無かったと思います。教育を変化させるっていうのは実は一番大変じゃないですか。そこまで実現できたとは言えません。ifでは軍隊を特集したこともありますし、10代の女性を特集したこともありますし、また性売買に関して特集したこともあります。そう言った特集を通して、ifが変化させることができた女性たち、女性たちをたくさん変化させることができたと思うんですけれど、正直言って男たちを変化させることには失敗したかな、変化させることはできなかったかなと思います。
それに加えてちょっと一言加えますと、そういったことから最近、若い女性たちの中では、分離主義的な傾向が強まっています。四つの非。非セックス、非結婚、非出産、非恋愛という、この4つの非、やらないっていうこと。女性たちの中で、そういう傾向が非常に出てきています。なぜなら、女性は、平等な関係というのを望んで、いろんなことを考えるわけですけれど、相手である男が変わらないのですね。こんなに変わらないなら、いっそやめてやる、という若いラジカルフェミニストたちが出てきています。実際にそれを、4非というのを、実際にやるかやらないかはちょっと別にして、若い人たちの中では、情緒的心情的にもこれに共感するという人がすごく増えています。
ソニョン:もう一つ加えますと、ifが出て2003年に『軍隊を語る』という特集を組んだのですね。まさにチョン・ミンギョンさんが編集長の時に組んだ特集でした。今その当時のような状況がもう一度繰り返されていると思います。実際に女性たちが軍隊にたくさん行くようになったのですね。たくさん行っているのです。しかし軍隊に行った女性たちが、軍隊中で性暴力を受け、またセクハラを受けて、自殺をするようなことまで起きています。
北原:次のご質問。
「帯がカッコいいのですがどなたがお作りになったのでしょうか」
北原:あら、嬉しい質問ですね! 『はっきり言っておく。この戦い、女たちが先に始めたわけじゃねーからな!』というコピーは、私と大島さんと編集の小田さんで「この本がどういう本なのか」を明確に表す言葉を小説の中から探しました。「この戦いは女性たちが先に始めたわけではない」という言葉に私たち自身が触発されました。「はっきり言っておく」というのは、実は本の中にはないのですが、大島さんの提案でしたよね。
大島:「はっきり言っておく」というフレーズは実は福音書でよくイエスが言う言葉なのですね。全部の訳がそうじゃないかもしれませんが。私はそれを思い出して、はっきり言っておく、って冗談のつもりで言ったら、北原さんも小田さんもそれいいじゃん、って決まっちゃって、ちょっと怖くなっちゃったのですけど。ま、結果、いい感じかなって、良かったと思っています。
北原:そう。フェミの神からの言葉です。はっきり言っておく。迷わずにはっきり言うって、実は良心的なフェミであればあるほど出来ない。この社会で女性は葛藤を引き受けながら生きているから。だけどもこれは私たちが戦いを始めたのではなくて、そこからの戦いを引き受けたものなのだっていうことが明確にあるのと、この本が性暴力という悲惨なテーマであるけれど、必ず勝つので安心して読んでくださいという思いで付けました。
●最後の〆はやっぱりハヨンガ!! 勝利の言葉ですよね!!
北原:最後に皆さん一言ずつお願いします。
深沢:今日はこのイベントに参加させていただけたことがまず幸せです。この本に出会えたことも幸せですし、この本を皆さんと共有できたことも幸せです。ありがとうございました。
ソニョン:日本で出版されたということ自体にすごく大きな意味があると思っています。私たちの最初の成果なので、本当に心から応援しています。アジュマブックス、ファイティン!
大島:まさにその輸出の最初の成果に翻訳という形で関わらせていただいてとても光栄ですし、翻訳する過程ですごく力を得ました。はっきり言っておくというこの帯が3人で自然に出たのも、この『ハヨンガ』を読んだからだなという気がします。このこういう言い方で、こういう態度でやっていきたいなと思います。ありがとうございました。
チョン・ミギョン:こんなに素敵な素晴らしい本として出版してくださったことに対して、本当に心から感謝します。韓国社会でこの本が小さな変化でも作れたとしたら大変嬉しいと思います。そして日本社会でも現実をただ受けるのではなくて、小さな小石一つでも投げようと、あるいは隣にいる女性の傷を分かちあって、傷を癒し合う、そういう気持ちになるような機会にこの本がなってくれたらいいなという風に思っています。ありがとうございました。
北原:お話ありがとうございました。皆さんまたアジュマブックス、これからもいろんな声を届けていきます。私たちは言葉で強くなりますし、シスターフッドがあれば自分の人生も楽になりますよね。本当に、チョン・ミギョンさんもソニョンさんもカムサハムニダ。
皆さんも聞いていただいてありがとうございました。じゃあまた会いましょう。最後はハヨンガで終わりにしましょうね。じゃ皆さん、ハヨンガ準備いいですか、はい。勝利の言葉、私たちの領土を取り戻すための言葉、『ハヨンガ~』!!
●たくさんのご感想をありがとうございました。
「『ハヨンガ』のラストが恋愛にならなくて良かったと私も思っています。かつての自由恋愛は家父長制や貞操観念への抵抗という、革命的な意味合いがありましたが、今は自由恋愛をただ描くだけでは、そういう意味合いが表現できなくなっていると思います」
「こんばんハヨンガ〜!」
「『やめろ』など女性たちの力強い言葉に奮え、パワーをもらいました。私に必要な言葉がここにあると何度も何度も思いました。校閲からの提議をはねのけてくれてありがとうございます。性暴力被害者は被害者らしく、その後の人生を送らなければならないという、日本にもある偏見への答えも示されていて、すごく励まされました。今の日本に生きるすべての人に読んでほしいです。私が必要としている物語です。待っていました。私が触れたかったのはこんな希望でした。周りの友人知人に同僚に薦めまくっています」
「私は在日コリアン3世で国籍は韓国ですが、日本で生まれ育っているので実際の韓国のムーブメントはメディアやSNSでしか見聞きすることができません。それらで見聞きする限り、日本よりもずっと韓国の女性は実際に声を上げる働きが盛んで、頼もしいと感じています。日本でも今回の作品の翻訳化、#MeToo運動、フラワーデモなどのようにもっと盛り上がってほしい、盛り上げてほしいと期待しています」
「約10年前韓国に住んでいる遠い親戚、当時20代前半と文通していて、マスコミ関係で働いているが上司のセクハラが辛くて辞めたいと当時の手紙に書いてあったことを思い出しました。私も実は幼少時の性暴力被害者で、自身のケアに必死だったこともあり、彼女のその訴えに応えられなかったことが今でも心残りです」
「『ハヨンガ』、これからももっと多くの人に読み継がれてほしい、日本の必読書になってほしいです」
「まだ読み始めたところで、結構読むのが大変です。性暴力の場面を想像したりしているので大変です。が、解説を聞いて楽しみになってきました。ジェンダーについての話ができる人はまだ周囲にいますが、性暴力を含め性的なことになると、なかなかいないです。一人で悩むのではなく、連帯するために、この本で誰かと繋がれたらと願っています」
「お話とても面白くて参加できて嬉しいです。男を変えることにエネルギーを使うのはもったいないです。確かにです」
「読み途中ですが、フェミニストの戦いの希望として受け取りました。チョン・ミギョンさん書いてくださってありがとうございます。横で聞いている娘小学校6年生がこのお話が国語の教科書に載ったらいいのにと言っています。私たちには現実を変える力があるとそう信じ、希望を手放さない強い意志を持ち続けたいです」