日本でも緊急事態宣言が出て、地域によっては3週間近くたちますが、いかがお過ごしでしょうか。
この間、私が暮らす韓国も、コロナの新規確診者(日本では感染者といいますが、韓国では確定診断を受けた人という意味で確診者と呼びます)が一日1千人を超える時期もあって、なかなかしんどい状況でした。ちなみにこの原稿を書いている1月27日の新規確診者は559人。ここ10日ほど300~400人台が続いていたのですが、光州市にある宗教関連施設で集団感染が起き、また増えてしまいました。思えばこの1年、厳しい防疫対策をとって確診者が減少しては、どこか(主に宗教関連施設)で集団感染が起きて、また確診者が増える、の繰り返し。特に韓国は日本に比べて、かなり少ない人数で危険と認識し、厳しい対策を取るので、私自身、体調は悪くないはずなのに、疲弊というかなんとなくいつも疲れているような感じがします。
特に昨年12月から今年1月18日までの約2カ月は本当に厳しかった……。韓国では12月8日からソウルを含む首都圏は防疫レベルが2・5段階(最高レベルである3につぐ厳しさ)にあがり、飲食店やスーパーの営業は午後9時まで(テイクアウト、配達を除く)。行政命令で5人以上が集まることも禁止されました。個人的にしんどかったのは、この間まったくカフェに行けなかったこと。2・5段階になって、カフェの利用は持ち帰りのみになったからです。コロナは飛沫感染するので、飲食しながらおしゃべりをするのがいけないことは、よくわかるんだけど、1人でお茶を飲むのもダメだなんて!私は家でオンライン授業を受けたあと、1人でカフェに行ってだらだら復習するのが日課だったのですが、それができない。これはじわじわ堪えました。自宅から散歩がてら歩いて行って、ちょっと素敵な空間でコーヒーを飲んだり、ケーキを食べたりしながらぼんやりすることが、どれほど大切な時間だったのか。ほんとうにカフェに行きたかった!
そしてスポーツジムやピラティススタジオも営業禁止になってしまったので、体を動かすこともできず。ジムがなければ散歩をすればいい。そう思う方もいるかもしれませんが、冬のソウルがいかに寒いかご存じでしょうか?特にこの冬は韓国人も「今年は5本の指に入るくらい寒い!」と驚く寒さで日中の最高気温が-11℃なんて日もあり、外を用もなく歩くなんてことはできるような寒さじゃなかった……。
すみません。長々と愚痴ってしまったのですが、1月18日から防疫レベルが少し緩和され、カフェもジムも再開されて、ソウルは少しずつ落ち着きを取り戻しています。
韓国では、1日の新規確診者が700人近くまで増えた12月上旬から医療逼迫の危険が迫っているとして、臨時検査所の新設や輸送用コンテナを利用したコンテナ病床(どんなものか想像できないけど、急いで準備した感はすごく伝わってくる)設置のニュースが報じられるようになりました。さらに家庭内感染を早期に発見するため、ソウル市が1世帯1人はPCR検査を受けるよう促すキャンペーンを始めたり(韓国ではあちこちに無料検査所があって、予約なし、匿名で検査を受けることができます。私の家の近所にも検査所ができましたが、誰も並んでおらず、すぐに検査を受けられそうでした)、中央防疫対策本部はもちろん首相も連日のように会見を開き、国内の感染実態や医療体制がどのような状況にあるのかを説明し、国民に危機感の共有と理解を求めていました。
昨年の3月から約1年。日本と韓国のコロナの状況をソウルに暮らしながら見ていると、大きく異なるなと思うことがいくつかあります。ひとつはスピード。韓国は全国の確診者数が600人近く増えた段階で危機的状況だとして防疫レベルを引き上げたのに対し、日本では1日当たり6千人を超えて緊急事態宣言の発出に追い込まれるという遅さ。しかも自治体や専門家、医療関係者が強く強く求めて、やっと政府が追認する形でしたよね。
そして、政策や対策をたてるために、実効性のある対策にするためには、根拠となるデータや事実の収集が必要だと思うのですが、日本ではそういうデータを収集する動きがほとんど見えないところです。1日の感染者数が発表されても、本当に国内の感染実態を反映しているのか信頼できないなんて、信じられない。コロナの感染確認から1年以上たった今も、PCR検査の態勢すら整っておらず、発熱などの症状があっても検査を受けるのが難しい。治療どころか、検査すら受けられず、家で死亡した後にコロナに感染していたことが確認される人が一人や二人ではないなんて……。自分だったら、自分の親や友人がそんな思いをしたら、日本から離れて暮らしているだけにほんとうに胸がつぶれる思いがします。
そして「水際対策」にもだいぶ開きがある。
私の友人が昨年12月に日本に一時帰国したのですが、その時の経験をすごく困惑した表情で話してくれました。友人含む乗客は飛行機を降りた後、等間隔に並べられたイスに順番に座らされ、順番に移動することを求められたそうです。「PCRの順番を待ってるのかな」と思ったそうですが、何を待っているのか、職員からは理由の説明もなく、場所を移動しては、次の場所でも等間隔に並んで待機ということを繰り返したとか。空港内を移動するモノレールに乗る際にも人数制限をしているのか長時間待たされ、その後、入国に際しての調査を受けたそうなのですが、その内容は日本での滞在期間や待機場所、空港から滞在先までの交通手段を確認されただけ。結局、PCR検査を受けることもなく、「可能な限り、入国後14日間は外出せず、人との接触をさけてください」と書かれた紙を渡されただけ。日本滞在中、出入国管理事務所や保健所から電話が来ることは一度もなかったそうです。「公共交通機関を使って帰った人もいるんじゃないかなぁ。結局、空港の外に出るまでに3時間くらいかかったんだけど、何であんなに並ばされたのか理由がわからないし、同じ飛行機に乗っていた外国人も、指示があいまいすぎて困惑してた」と言っていました。
一方、今年1月に韓国に帰国した際は、空港から自宅までは専用のタクシー(有料・自己負担)を使うことを求められ、保健所でPCR検査を受けてから自宅に送り届けられそうです。帰国後14日間は自宅隔離を求められ、その間、外出していないかを確かめるためのGPS付きのアプリをスマホにダウンロードさせられ、1日1回は区役所の担当者から確認の電話がかかってきたとか。帰宅した翌日には体温計と消毒液などのセットが自宅に送られてきて、毎日決まった時間に検温し、報告。友人曰く「体温計と一緒に『隔離中に外出した場合、罰則を受けることがある』って書かれたパンフレットが入っていて怖かったけど、電話で『ストレスを感じることはないか』を聞かれ、メンタルに不安を感じたときの相談窓口も案内された」とのこと。隔離解除前にはもう一度、PCR検査を受けさせられ、そこで陰性の場合のみ、隔離解除になるこのことでした。友人は体調に何の不調もなかったけれど、隔離解除までに計2度PCRを受けなければならなかった。
韓国のようなやり方がベストかどうかはわからない。でも、日本の対策はあまりに理屈が通らなくないですか?変異型のコロナウイルスに感染した人が日本国内で確認されたあと、日本政府はすぐさま外国人の全面入国禁止を打ち出しました。「全面禁止」「水際対策だ!」と勇ましくて、外国人に対してはいきなり国境を封鎖するという大胆な対策を躊躇なくとる一方で、実際はPCR検査もせず、隔離期間中に本当に外出していないのか、他者と接触していないのか確認もしない、ずさんでゆるい管理。当たり前だけど、ウィルスは国籍を選ばない。日本人も外国人も入国時に全員検査をして、きちんと隔離をしてもらえばいいだけのはず。
トランプが去ったアメリカで、米国立アレルギー感染症研究所のファウチ所長が会見で「自分の知っていることを話せること。どんな根拠があるのか。科学の何たるかを説明でき、科学に語らせるだけでいい。それに解放感を覚える」と話しているのを聞き、まさに日本に足りないものだよ!とハッとしました。政府はまず、冷静になってほしい。そして科学的根拠に基づいた判断をしてほしいよ。