TALK ABOUT THIS WORLD ドイツ編 年明け、そしてウィズコロナのスタート
2021.01.18
年が明けるとドイツでは会う人ごとに「Ein frohes neues Jahr(アイン・フローエス・ノイエス・ヤール)」と呼びかけあう。縁起よい新年を! という意味の新年のあいさつだ。前回のコラムの執筆はまだクリスマス前で、その後のクリスマス、そして年末年始の人の往来を懸念してドイツではロックダウンのルールが急に厳しくなり、クリスマスには別の1世帯と合計5人まで(子どもは頭数に入れない)会ってもよい、ただしできるだけ会うのを避けるように、会うなら屋外で会う工夫をしてくださいという警告や要請が政府や国立感染研究所から出されていた。クリスマスの礼拝も中止や、規模の縮小、オンライン礼拝へと各教会がそれぞれの対応をしていた。年末年始の集まりは禁止で、恒例の大みそかの花火(欧州各国では大みそかに一般家庭でも花火を打ち上げて新年の瞬間を祝う)は販売禁止にすらなった。
わが家もどこにも出かけずに自宅で過ごしていたが、外へ散歩に出れば、同じく散歩とみられる家族連れや友人連れがマスクなしで歩く光景はここそこで見かけた。わが家も近所の友人夫婦や、限られた仲のママ友数人とはそれぞれ一緒に散歩した。自宅でお茶でもというお誘いだけはさすがにやんわりとお断りしたが。と、身近ではこんな感じだったが国全体を見れば、屋内でも集う人はいただろうし、大みそかの花火はなぜか近所の家々から結構派手に打ち上がっていた。例年よりは規模がずっと小さかったとはいえ、皆、どこで花火を手に入れたんだろう? ちなみに1組の若いカップルが住んでいるお向かいのベランダでは、複数人が一緒に花火を手に持ってお祝いしていた。でもでも、例年よりはずいぶん控えめに行動していたんだよ、とこの国の皆がそう言うだろう。
クリスマスから年末年始は休暇のために検査数自体が少なかったということで低めに推移していた1日当たりの新規感染者数と死亡者数も(といってもそれぞれ1万人超え、数百人単位と日本の数値と比べれば激高だが)、1月も第2週に入るとそれぞれ再び2万から3万人、千人超え、とクリスマス前よりも深刻な様子を見せはじめた。クリスマス前のロックダウン厳格化が決まったとき、政府は1月6日に州政府同士の会合を再度開き、政策の継続について協議するとしていた。覚悟はしていたけれど、この状況ではもう答えは明らかだ。すなわち、現在のロックダウンをまずは1月末まで延長、そして最後の最後まで意見がまとまらなかったという学校と保育の再開については、小学校以上は基本的にオンライン授業での再開、そして幼稚園や保育所は子ども1人当たりにつき週10時間までの預かりで交代登園で再開可能、その他の預かり保育(保育ママやベビーシッターなど)については再開可能だがいずれの場合も、自宅で面倒をみることが可能な保護者には登園させないように要請となった。
そして1月も半ばとなった現在、イギリスをはじめとした他国からの変異種流入への懸念と止まらない感染拡大に医療機関の逼迫(ひっぱく)状況と深刻な事情が並んだところで、すでに1月末以降の緩和はないと保健相は明言し、首相もまた、なんと4月初旬までのロックダウン延長を示唆している。これはつまり、感染拡大防止にかなり手を焼いていること、そして4月のイースターに向けてなんとか感染を下火にしていきたいということだろう。イースター(復活祭)はドイツではクリスマスに次いで大切な伝統行事で、家族が集まる機会、すなわち人々の移動や接触がある時期になるからだ。昨年のイースターはロックダウンの最中だったが、今年はおそらく、少なくともクリスマスのように緩和をしたい狙いなのだと思う。
とはいえ、先は長い。今回は本当に長い。11月から閉鎖を余儀なくされている飲食業やその他の業界の企業に対しては保障政策がすぐに決議されていたのだけど、その振り込みは今月に入ってやっと始まったという状況で、ゆえに補償が間に合わなくて廃業に追い込まれた店舗や企業も出てきているそうだ。
ホームオフィスへの切り替えもさらに強く要請されているが、正直、ホームオフィスにしたところで子どもたちが家にいれば仕事にならないのが現実である。その現実に対応するべく、子どもの自宅待機で仕事ができない親に対しては補償金が法定健康保険を通した病児保育料として1月中は10日間分まで(ひとり親の場合はその倍)支払われることになった。がしかし、これは毎月一定の給与がある雇用社員などの場合で、流動的な収入の自営業の場合は申請が難しい。前回のロックダウン時には「社会のシステム関係(例えば医療・インフラ・生活必需品販売関係など)従事者の子どものみ登校・登園可能」としていたルールも、今回はそれだけでははかれない各家庭の諸事情があるとして、その定義はなくなったが、この「要請」にとどまった州政府の決断に対し、保育士たちからは「保育従事者の安全を顧みず無責任」との声も上がっている。一方で子どもを自宅待機にしても面倒を見る人がいないために結局は高齢の親に預けている家庭も少なくなく、となると「高齢者への感染を懸念」という目的とは本末転倒というケースもある。
しかしこれだけルールが厳しくなっても延長されても、感染者数も死亡者数も減らないどころか増えてしまっているのはなぜだろう、と素人ながら不思議に思う。一方で、飲食店が閉鎖されてもホットワインの屋台に人が集まったり、散歩といえどマスクなしでお互い密着して歩いていたり、マスクがずれて鼻が出ている人もいたり、手洗いは聞くけど、うがいって聞かないなとか、日本人の常識から考えてみるとまだまだ隙が見える。そこはドイツ人の衛生意識というか文化の違いというか、わが家でも風邪気味の相方にマスクをつけさせること自体がもう一苦労で疲れる。
もっともこの考え方の違いがあぶり出されているのはドイツに限らず世界中で聞く話である。結局のところこれは、ルールや対策の解釈が最終的には個人の判断や権利という民主主義の問題でもある。例えば感染の封じ込め対策を徹底している台湾の措置は理にかなっているけれども、このやり方がドイツでできるかといったらまず無理だろう。それでもこの深刻な状況下でとうとう昨日から政府筋の話として「今後数カ月のメガロックダウンの一案として交通網の停止」なんてことも聞こえてきた。またバイエルン州では「公共交通機関の利用には医療レベルのFFP-2マスク着用の義務」となり、州首相が「介護施設従事者への予防接種を強制にするべき」とまで発言して批判を受けるなど、その厳格化とその効果への疑問が批判として出てきている。昨年の第1波のときには乗り切れたドイツだけれども、今回はここまでくると、いったいどんな対策を打ったらいいのか暗中模索といった状況だ。
そんな暗い気持ちになりそうなドイツのこの冬だが、1月に入ると少しずつ日が伸びて明るさを感じられるようになってきた。この頃にスーパーなどに並び始める水仙やチューリップは近づいてくる春を感じられて私は好き。この先の数週間を思うと暗くなりそうな気持ちを軽くするべく、週明けには今年初のチューリップを買ってこようかなと思っている。
写真:© Aki Nakazawa
あけましておめでとうございます。しょっぱなからコロナの話題になってしまいました……。今年はいったいどうなることやら。でもコロナ以外の話題も書けるようになるといいな、書いていきたいなと思っています。今年もどうぞよろしくお願いいたします! このところ雪マークが天気予報につきながらもちらつく程度だったのが、今朝は一面真っ白になりました。子どもたちも大はしゃぎ。この頃、各スーパーの広告に子ども向けのフィットネス用品が次々に出ていて、巣ごもり生活の子どもの運動不足を心配する親の意向をくんだトレンドかなと複雑な気持ちでいたのですが、やはり子どもは外で自由に遊ばせてあげたいですね。早くそんな時が来るようにと願ってやみません。