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あなたの近くにも、ヤングケアラーはいませんか?

深井恵2021.01.13

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新型コロナが拡大する中、3学期が始まった。長期休業明けに必ず実施している個人面談を、今回も始業式の当日、クラス担任と副担任とで分担して行った。
健康面は大丈夫かどうか、学習面で悩んでいることはないか、交通事故等にあわなかったか、長期休業中にSNSなどでトラブルに巻き込まれなかったか、家庭環境に変化はなかったかなどなど。
面談の質問事項が多岐にわたるが、50分間に10人程度の面談をしなければならないので、一人ひとりにあまり時間をかけられない。だが、さまざまな困難さを抱えている生徒がいるかもしれないので、ていねいに聞き取る必要がある。

10人ほど面談した中で、気になる生徒が何人かいた。

そのうちの一人に「冬休み中、しっかり食べてた?  しっかり眠れてた?」と尋ねたときのことである。コロナもあって、ほとんど外には出なかったと語ったその生徒は、一日に一食しか食べてなかったと話し始めた。

身体が伸び盛りの高校生。一日に一食では冬休み中にやせたのではないか。放課後保健室に行って、養護教諭に体重を量ってもらったほうがいいよと話をつなげ、一日一食だったという食事の内容について、もう少し詳しく教えてと一歩踏み込んで話を聞いてみた。
鶏の胸肉をゆでてマヨネーズをつけて食べる。ご飯に卵をかけて食べる。フルーツの缶詰が好きなので缶詰を食べる。それぞれが「一日一食」だったらしい。食が細いほうなので、それだけで別におなかがすかなかったと言う。
おなかはすかなかったけど、時々頭がクラッとするから、貧血なのかもしれないと本人は自身の身体を分析する。鉄分とビタミン、カルシウムもとったほうがいいよと言ったものの、経済的にかなり厳しいのかもしれない、何か打つ手はないか……と心にとどめて面談を続けた。

冬休み中に家庭環境に変化はなかった? と尋ねると、「……うーん、家庭環境っていうわけではないけど、冬休みになって、赤ちゃんの世話をするようになった」と答えた。
「赤ちゃん?  詳しく聞かせて」とうながすと、冬休みになってから、母親の職場の同僚の赤ちゃんの面倒を、夕方から深夜2時ごろまで週3回程度見るようになったと言う。祖母も一緒にいるので、一人で見ているわけではないというが、生まれてまもない赤ん坊の面倒を見るのは大変だ。預ける先が見つからなかったのか、経済的に厳しいのか……。

クラス担任に連絡して、この状態が続くようであれば家庭訪問がスクールソーシャルワーカーにつなぐかしなければなるまいと思いながら、次の生徒の面談に移った。

別の生徒は、冬休みに幼いきょうだい2人の面倒を見ていたと語った。その生徒本人が何年生のころから面倒見ていたのか尋ねたところ、自分のきょうだいの面倒は、妹が生まれたことからだから、中学1年生からだと言う。
さらには小学校4、5年生のころはいとこの面倒を見ていたと言い、オムツも替えていたらしい。この生徒もヤングケアラーだ。保育園に預けることはできなかったのだろうか。

面談した生徒9人のうち、幼い子の面倒を見ていた生徒が3人いた。実に3分の1がヤングケアラーだった。祖父母の介護をしているかどうかについては聞かなかったので、もしかしたら介護をしている生徒がいるかもしれない。

埼玉県がヤングケアラーの実態調査をしたように、ヤングケアラーの調査をしたほうがよさそうだ。受けるべき支援が届いていなければ社会資源とつなぐこともできるだろうし、実態をつかんだうえで教育活動を行っていくことで、生徒への言葉かけも違ってくるだろう。
コロナ禍で、事態がより深刻になっている恐れもある。先日、近所のスーパーの安売りの日に、買い物に行ったときのことだ。そのスーパーでは、アルコール類などの一部の商品を除き全商品10パーセント引きという安売りの日が月に何度かある。
調味料や日持ちのする野菜、洗剤などは、できるだけ安売りの日を目がけて買うようにしている。チーズなどのおつまみも、その日に少し多めに買う。
今回の10パーセント引きの日に、野菜売り場、日用品売り場、肉売り場……とスーパー内でゆっくり回ってみて気づいたことがあった。

卵を置いている場所と納豆を置いている場所と麺類を置いている場所で共通して売り切れている商品があったのだ。
それはすべて最安値の商品だった。いくつかの種類がある卵のうち、一番安い卵だけが売り切れていた。たくさん種類のある納豆のうち、一番安い納豆だけが売り切れていた。麺も、一番安い麺だけが売り切れていた。
「健康志向で納豆ブーム」ではない。最安値以外の納豆はたくさん残っていた。麺も、最安値のゆでた麺だけが売り切れていた。
勝手な想像だが、卵も納豆もゆでた麺も、調理せずに食べることができる。卵や納豆をおかずにして光熱費の節約もしているのではないか……。

一日一食、卵かけご飯……。面談した生徒の顔が浮かんだ。

コロナの中、密を避け、卵かけご飯で食事をすませている国民が増えている一方で、そう言えば、どこかの首相はステーキ会食を楽しんでいた。

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