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今年8月に自死した女子高生が昨年8月の約7倍に

深井恵2020.12.09

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11月30日付で文部科学省から各都道府県教育委員会に「児童生徒の自殺予防に係る取組について(通知)」が出された。「近年、自殺者数全体の総数は減少傾向にあるものの」、「児童生徒の自殺者数は高止まりしている状況」が続いている。

コロナ禍で、女性の自殺者数が大幅に増加していると以前報道されていたが、児童生徒についても、女子の増加が顕著だった。厚生労働省の「自殺の統計:地域における自殺の基礎資料」(暫定値)をもとに文部科学省が作成した資料によると、昨年8月の自死した女子高生は3人だったのに対して、今年の8月は22人と、7倍を超えていた。

同通知で「毎年、学校の長期休業明けにかけて児童生徒の自殺が増加する傾向がある」と文部科学省が指摘しており、これから始まる冬休みに向けて、いっそう取り組みを強化しようという狙いだ。

これまでは、確かに2学期の始まる9月の自殺者数が一番多かった。友人関係に悩む児童生徒が、新学期が始まるのを苦に自ら死を選んでしまうという傾向分析だ。

今年8月の女子高生の自死数が大幅に増加したことは、どうとらえるべきだろうか。自死を選んだ女子高生が急増したのであれば、自死を選ぶ手前で、苦しみながら踏みとどまっている女子高生はさらに数多くいるはずだ。

コロナ禍で、昨年度末から本年度初めにかけて「全国一斉休業」となった影響を受け、授業時間確保のために、1学期の終わりが下がり、2学期の始まりが前倒しされた学校が、全国的に見ても多いと思われる。

つまり、8月には2学期が始まっていた学校が多く、文部科学省も「長期休業明けに自殺者数が増える傾向にある」を、今年8月の女子高生自死数の増加にも当てはめてとらえていると見受けられた。

だが、果たして、それだけで良いのだろうか。

若者の自死が増えたことについて、報道では有名な芸能人の自殺報道が、若者の自殺を助長したと分析しているものもあった。確かに、今年の夏以降、芸能人の自死が複数あったのも事実だ。

女子高生の自死の理由が報道されていないので、想像の域を出ないのだが、これまでのコロナをめぐる状況を踏まえて、その理由を考えてみたい。

本年度当初、コロナで在宅ワークや自宅待機期間が長くなり、児童虐待やDVが増加したという報道があった。デートDVや妊娠についての相談が増えたという報道も思い出される。

虐待やDVのある家庭では、子どもにとって家の中が安全な場所ではない。逃げたくても、逃げ出せる場所があるわけでもなく、外部に助けを求めようとしても、加害者がそばにいれば、外部との連絡も取りづらい。

学校が休みになり、幼いきょうだいの面倒を見なければならない時間が増えた女子高生もいたのではないか。また、家にいるならと、家事や介護を保護者から任されたケースも考えられる。

実際、学校が終わって帰宅すると幼いきょうだいの面倒を見ないといけないのが嫌で、放課後の時間になると、自宅とは反対の方向へ向かい、時間をつぶしてから帰宅していると話してくれた女子高生もいた。ステップファミリーで、幼いきょうだいの面倒を見ないと怒られると語った生徒もいた。

長期休業中の期間に、追い詰められて逃げ場を失った女子高生が少なからずいたのではないか。

また、うつ病経験のある友人から聞いた話では、栄養不足が原因でうつになることがあり、うつから自死を選ぶケースもあるという。コロナの影響で収入が減って、栄養バランスのとれた十分な食事ができない日が続き、外に出かけず自宅にこもりがちになると、うつになるリスクが高くなるというのだ。

本年度当初は自宅待機期間が長引き、外出自粛が続いた。学校から電話で生徒の安否確認をした際には、ストレスがたまっていないか確認していた。運動不足になりがちな生徒に対して、室内でできるストレッチ体操等の「宿題」を体育の教員が出していた。

コロナによる休業以降、勤務校では、生徒を対象に、ストレスがないかどうかの健康調査を毎週実施している。大半の生徒が「なし」と回答しているが、なかには、家庭内の人間関係によるストレスを訴えてくる生徒もいる。

家庭内のことなので、なかなか学校の介入が難しい部分があるのだが、スクールカウンセラーにつないだり、教育相談担当の教員が生徒の話を聞き取ったりして、ストレスの軽減を図るようにしている。学校内での対応が難しい場合は、ソーシャルワーカー等、外部の社会資源につなげる体制も整えている。

高校卒業後の進路についても、進学しようと思っていたのに保護者の収入が減って進学を断念せざるを得なくなるケースが増えるおそれがある。男女問わず、悩みを抱える生徒の早期対応を積極的に行うとともに、とりわけ、女子高生の困りついて、より敏感に対応できる一人の教員でありたい。

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