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前回、風邪に効くドイツのおばあちゃんの知恵の話をしたときは、ドイツにおける新型コロナウイルスの1日の感染者数は約4000人、その記事がアップされた時は7000人に、そこからの増え方がウナギのぼりであっという間に1万を軽々と超えていき、10月の終わりには2万に近づいた。そして、11月2日から再び全土で部分的ロックダウンが始まると連邦政府と各州政府が合意し発表されたのが10月28日。これを書いている今日は11月1日で、諸聖人の日(Allerheiligen)というキリスト教の祝日である。今年は日曜日と重なったので、祝日ムードはいまいちだが、この祝日は日本の秋のお彼岸のような感じで、家族親戚が集まって墓参りをするのだ。ロックダウンもこの祝日後の週明け、というタイミングになったが、もしかしたらロックダウンになる前に家族の集まる機会を与えるという配慮もあったのかもしれない。我が家でも1年前のこの日は夫の父方の親戚一同が集まって墓参りをした。クリスマスには日本に居る予定だったから、この集まりが我が家にとっては親戚と会ういい機会で、まだ1歳になっていなかった娘も参加して皆に会い、プレゼントをもらったり、一緒に食事をしたりしたのだった。そんな集まりが今年はできないなんて、世界はなんて変わってしまったんだろうとあらためて思う。

明日から始まるロックダウン・ライトと名づけられた「軽め」の部分的ロックダウンの意味は、接触制限令では最後の判断とされている保育や学校はまだ開けているという点や、理髪店や理学療法サービスなどは営業許可という点において「軽め」である以外は、レストランやバー、カフェやクラブは閉鎖、映画館やゲームセンターなどの娯楽施設や美術館などの文化施設、フィットネスクラブを始めとした各種スポーツもプロスポーツ以外は禁止。他者と会う場合は2世帯まで、合計10人までとなった。スーパーやドラッグストアなどの生活必需品、その他の店も通常通り開いているが、入店人数はまた制限されることになり、旅行もビジネス目的以外では、不要不急の移動は不可。日帰り旅行ですら不可である。

普段からほぼ在宅勤務&フリーランスの我が家の生活には今回のロックダウンではおそらくそれほど変化はなく、保育は継続なのでありがたいが、これも時間の問題かもしれない。ただでさえ保育所や学校は風邪が蔓延しやすい場所。そして保育園ならびにドイツの小学校でもマスク着用は義務ではないので、親たちが送迎時にマスクを着けていても(これは義務)、授業中はつけていない子どもも多いらしいのだ。

今回のロックダウン・ライト。まずは11月いっぱいの措置で2週間ごとに連邦政府と州政府が状況を見ながら今後の措置を決めていくという。フランスやベルギーなどの周辺国に比べると、ドイツはこれまで感染者数も死者数もまだ抑えられている方で、集中治療ベッドもまだ20%以上は空きがあるそうだが、さすがにこの1週間ほどの増え方のスピードと、ベッドは空いていても医療従事者の人出が不足し始めたということで、もうここで抑制をしないと医療崩壊を引き起こしかねない、という判断だそう。そして来月はドイツや欧州の文化にとってはとても大切なクリスマスがある。すでにクリスマスマーケットの開催は次々と中止が決まっているものの、家族で集まることができない、という状況をなんとか回避しないと国民の不満が爆発するとみているのだろう。その時期の緩和を狙っての今の措置だと思うが、これから本格的な冬が来て寒くなるのに果たして状況はこれで改善するのかわからない。どこの地域で感染者が増えているのかを赤やオレンジで色分けした地図がインターネットで公開され毎日更新されているのだが、もうドイツは東側の一部を除いてほぼ全域、真っ赤っかである。国境はまだ閉鎖されていないが、上記の移動制限ルールに従って、各州ともに11月2日までに別の州から来ている旅行者は退去するよう勧告している。

ロックダウンが決まった日、別件でメールの返事を返してきた知人は、小さなアート系映画館を長年運営している人だ。9月にやっと再開できたのにまた閉鎖。なんとか持ちこたえられるように、お互い頑張ろうな、と書いてあった。別の知人が運営する毎年11月に開催の映画祭は「いよいよ映画館でやるよ!」とニュースレターで告知していたが、これまたオンライン開催へと変更になった。気の毒でならない。
本当はどんな衛生・防疫対策で何が可能なのかを探り、各分野で細かに決めたその対策のルールを皆が守るということができれば、ここまでのロックダウンは避けられるのではないかと思うが、守らない人たちや理解できない人たちがいる以上は厳格なルールで縛るしかないんだろう。今回のロックダウンで休業に追い込まれた企業には通常の収入の75%の経済補償が出るとのことだが、申請手続きなどに時間がかかる間に倒産する企業も沢山あるとの懸念が指摘されている上に、何よりも働くこと自体ができない、ということはやはり辛いだろう。

私自身は11月中の仕事については、毎年同じ時期に来ている依頼が全てオンラインに切り替わって継続しているので助かった。とはいえ、やはりオンラインではなくて直接相手や仲間に会って仕事をしたかった。贅沢を言える状況ではないのはわかっているけれども、皆と直接会えるようになるのはいつになるのだろう。

実のところ、私の周りでは誰もが、このロックダウンが11月いっぱいで終わるなんて思っていない。本格的な冬はこれからであること、周辺国の感染拡大の勢いもすごいことに加え、一部の人には変に規制に慣れてしまったことでの気の緩みなのか、レストランやカフェバーが閉鎖になっても、集まる人は自宅でこっそりやるだろう(実際、前回のロックダウンの終わり頃にもそんな光景を近所で見ている)。加えて、マスク着用の仕方にしろ、衛生対策にしろ、やはりこれまでの生活習慣になかったせいなのか、これでは感染を防げないんじゃないかと感じることが多々ある中では、もっと厳しい状況が来ることも覚悟はしている。感染者の話も、ポツポツと知り合いとの話の中に具体的に登場するようになり、だんだんと身近に迫ってきている感があって、明日はわが身もあり得るなと思うこともある。夏へと向かう季節だったのと、皆の連帯感が感じられた春のロックダウンのときよりも、もっと不安で正直少し怖い。でもやれることは限られているからね、と、手洗いうがいの衛生対策や体の養生対策の話題とともに、友人たちと励まし合っているこの頃だ。


写真:
© Aki Nakazawa

「諸聖人の日」、近所の墓地は家族でお墓参りをする人たちが思いの外、例年とそれほど変わらないくらい、来ていました。この写真を撮ったのは夕方4時頃。すでにかなり日が落ちた中で、お墓に供えられたロウソクの火が揺れていました。ドイツの11月は日がどんどん短く暗くなり、それにつれて人々の気分も滅入ってうつ病が増える時期なのです。これからの4週間、なんとか元気を出して過ごせるよう工夫をしたほうがいいかな。おこもりグッズもいいけれど、ロックダウン中にしていた散歩でも復活させますか。ロックダウン・ライトが始まる前日はどの街でもレストランは賑わい、夜はまさに「密」の状態で騒いだ若者も多かったそう。やはり先行きは厳しそうです……。
日本の皆さまもどうぞ気をつけてお過ごしください!

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中沢あき

中沢あき(なかざわ・あき)

映像作家、キュレーターとして様々な映像関連の施設やイベントに携わる。2005年より在独。以降、ドイツ及び欧州の映画祭のアドバイザーやコーディネートなどを担当。また自らの作品制作や展示も行っている。その他、ドイツの日常生活や文化の紹介や執筆、翻訳なども手がけている。 

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