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おかんとコピ Vol.11 コピの乳歯

李信恵2020.05.19

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新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、みなさまも大変な日々をお過ごしと思いますが、お元気ですか。私は外出自粛期間中ということもあって、ひたすらコピと遊び、その合間に布マスクを作っては友人などに配り、原稿を書いたりしながら過ごす毎日。講演会やイベントなどが軒並み中止になり、明日のことを考えると気分は晴れないけど、相変わらずコピはのんびりと寝て起きて、すくすく育っている。もしもコピがいなかったら、今頃どんな風に過ごしていたんだろう。コピがいてくれて良かったなあ、と思う。

それはそうと、コピの話。この連載が始まったのが去年の夏で、保護してからのことを書き連ねているのだが、なかなか追いつかない。そして、スマホとパソコンの写真のフォルダはコピの写真ばかりになっていく。どの写真のコピも、とても可愛い。

コピはひざの上が大好きなんだけど、最近はなぜると甘えて指や手のひらや手首を噛むので超痛い。なので、そういうときは安全のために韓国の友人からもらったレインボーのリストバンドをする。リストバンドに書かれている韓国語は「メダルより人権」、韓国のスポーツ界の性暴行、暴力を廃絶するための集いで作られたものだと思う。

なんでこんなに噛むのかな、と思っていた矢先に部屋の掃除をしていると、小さなかけらを発見した。摘みあげてよく見ると、それはコピの乳歯だった。爪が折れたのかと思ってびっくりしたけど。猫の乳歯を見付けると幸運が舞い込むと、本当か嘘かわからんけどどこかで読んだことがある。コピは出会ったこと自体が私にとって幸運なのに、さらに幸運か!と思ってテンションが上がった。Facebookに投稿すると、友人からは「おめでとう~😉抜けた歯は食べたりして無くなるので、見つけたら記念にとっておいてます」と投稿があった。食べちゃう前に見付けてよかった。あれほど噛みつきに来たのは、生え変わる歯がかゆかったんだな。

ちょうどこの頃、実家を引き払った。オモニはしばらく前から施設に入所していて、春先から実家に行ってはさまざまなものを処分していた。実家には大きな仏壇があって、その引き出しには大切なものがいつも入っていた。しかし悲しいことに、金目のものは入っていない。両親の大切なもののひとつは、外国人登録証だった。昔は韓国・朝鮮人は、手帳型の外国人登録証(現在はカード型)を常時携帯しなければいけない義務があった。不携帯の時に警察に出会ったら、処罰の対象にもなった。不携帯の理由を問われた在日が「大切なものやから仏壇にしまっている」と答えたという、笑えない笑い話もある。そして、その仏壇の引き出しの片隅に私のへその緒もあった。

日本と同じく朝鮮半島でも、古くから赤ん坊のへその緒を清潔な布で包み、木箱に保管する風習があったそうだ(韓国で、最近では樹脂で加工して印鑑にしたりネックレスにしたりすることもあるとどこかで見掛けたが)。

コピはもちろん私が生んだわけではないけれど、私の大切な子どもだ。この乳歯は、私にとってのへその緒のようだなと思う。すごく小さいものなので、無くさないように韓国製の螺鈿細工の宝石箱(もちろんたいした宝石は入っていない)にしまった。宝物がまた増えた。そして、コピは今でもときどき私の手首を噛む。痛いっちゅうねん。

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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