韓国に住んでいると、とにかくそのスピード感に驚かされる。
たとえば。前回のコラムで5月の第2週からとうとうオンライン授業ではなく普通の教室に通う授業に切り替わる予定だとお伝えしました。ところが、私は今日(14日)もZoomでのオンライン授業を受けています。
理由は先週末に起きた梨泰院(イテウォン)にあるクラブで起きた集団感染。20代の男性が発熱の症状があるのにクラブやバーをはしごし、その後コロナウイルスに感染していたことが発覚しました。その場に軍関係者や病院に勤務する看護師などもいたことがわかっていて、感染がどこまで広がっていくのか。ここ数日、新規感染者が再び30人近くまで増えています。
中央災害対策本部がクラブでコロナの集団感染が発生し、5千人以上が接触した可能性があると発表したのは先週8日のこと。翌9日の夜には土曜日にも関わらず、私が通う大学の担当の先生からクラスメート全員に「みなさん、連休中に梨泰院や新村(シンチョン)のクラブやバーに行ってないですか? コロナの集団感染が起きているようです。もし行っていたら、1339(韓国疾病管理本部)に電話してくださいね」というカカオトークのメッセージが届きました。そして10日日曜日の夜には「みなさん、今日は悲しいニュースがあります。今学期は6月上旬まで、すべてオンライン授業になることが決まりました。明日からみなさんに会えると思っていたので、会えなくてさびしい。でも私たちの大学にも梨泰院や新村のクラブに行った学生がいるようなのです。心当たりがある生徒は私と1339に電話を。私は何があっても皆さんを守りますから、大丈夫。不安に思ったら連絡してね」というメッセージが。
直後、一部のクラスメートからは「先生、なぜ?!なぜですか!」「いつまでオンラインなんですか?!正直つらいです」という悲鳴のようなメッセージがカカオトーク上を飛び交いましたが、私自身は「残念」という思いよりも、学生や教員の安全を最優先に考えた結論を速やかに出してくれた大学の判断が信頼できると思ったし、安心しました。
このスピード感は別に私が通う大学だけでなく、韓国政府も同じ。クラブでの集団発生を発表した同日8日には政府は全国のクラブを含む遊興施設に営業自粛命令を発出、直後に13日から順次再開する予定だった学校の登校予定も1週間延期することを決めました。
韓国では6日から日常生活のなかで防疫を続けていく生活防疫に切り替わったばかり。
ネット上ではスーパースプレッダーとなった20代男性の身元を調べる動きが起き、男性が立ち寄ったクラブのひとつがLGBTが多く集う場所だったということで、ヘイトの書き込みが問題化したり、感染者を多く出したクラブに遊びに行っていたアイドルグループの元メンバーが謝罪に追い込まれたり、というような状況も起きています。
ただすごいと思うのは、偏見を恐れて名乗り出ない人が多くいるとして、政府が発表から3日後には匿名でも検査を受けられるような制度を導入したこと。導入後、検査数がそれまでの8倍にまで増え、14日現在、この集団感染関連で約3万5千人!が検査を受けたそうです。
速い。とにかく速い。韓国の人がよくいう「韓国はパリパリ(はやく、はやく)文化だから」という言葉の意味を今まさに体感しています。速やかに感染者を特定し隔離することが大切で、時間との勝負ともいえる「疫病」という場面ではほんとうに高い効果を上げている。
携帯電話の位置情報やクレジットカードの使用履歴からクラブを訪れていた人を割り出したり、検査を受けなかった人に200万ウォン(約17万円)の罰金を科したりする強硬なやり方については賛否が分かれるかもしれないけれど、その後の2次感染でどれほど多くの人の命や健康に影響を与えるのかを考えると、スティグマや差別を引き起こさずに、影響を最小限にするにはどうすべきか。日本でも罰則を含め、考えるべき時なのかもしれません。
そして、何より安心や信頼を覚えるのは、判断の根拠にある数字や事実が公表されているここと。効果がないとみるや、速やかに変更されることです。
1カ月以上もマスクが届かなかったり、特別給付金の申し込みがオンラインよりなぜか郵送の方がはやい、なんて事態が起こることは絶対になさそうです。すでに緊急事態宣言が解除されたところもあるのに、この後も安倍政権はマスクを配り続けるんでしょうか?
韓国では性行為に同意ができるとみなされる性的同意年齢も、13歳から16歳に引き上げられました。韓国でも過去に性的同意年齢がハードルになり無罪となった性犯罪があり、反対の声が上がっていたそうです。改正について、韓国司法省は「根本的に若者を性犯罪から守るため」と説明してます。日本はいまだに13歳のまま。しかも「同意がなかった」というだけでは事件化できず、暴行や脅迫が成立要件になる。いったい誰を守るための要件なんだろう。いつまでこんな要件を維持し続けるの?
韓国のスピード感の中で生きながら、日本を見ると時が止まっているかのようです。
※オシャレマッコリが増えています。
※アベノマスク、久しぶりにこっちでもニュースになっています。