新型コロナウイルス対応で、女性にもっと手厚い支援を~TOGETHER FOR HER~
2020.05.13
先月のコラムを書いた直後、再び学校が休校になっていた。またしても「緊急事態」だったため、突然の再休校だった。「明日から休校」と前日の昼に言われて、全国の学校関係者は、休業中の課題作成等の対応に追われたに違いない。
長期にわたる休校で、オンラインによる授業展開の準備が始められている。週に1度行う電話による生徒の健康状況調査には、PCやWi-Fiなどの家庭におけるICT環境の調査項目も入ってきた。だが、公立学校のオンライン授業は、後手後手に回っているのが現状だ。
そして連休明け、学校が再開される運びとなり、当面は学年別登校となった。月曜日に1年生、火曜日に2年生、水曜日に3年生……と、週6日、土曜日も登校にしての対応だ。
学年別の登校日は、ローテーションで曜日の偏りをなくすよう、時間割を週替わりに組み替える。兼務や非常勤の教職員もいるので、時間割作成が複雑になり、担当者は非常に神経を使う。
生徒も、時間割が頻繁に変わるので、忘れ物のないように準備をするのが大変だろう。併せて、登校日と登校日の間の自宅学習中の宿題も出されるため、提出物が大量になる。生徒も教員も、忘れ物対応に追われる日々がしばらく続きそうだ。
授業はというと、1クラス40人を2つに分け、「密」を避けて行うよう、通知が来た。欧米並みの少人数学級は、かねてからの望みだったが、新型コロナウイルス対応によって、思わぬ形で実現した。この際、新型コロナウイルス対応の「新しい日常」に、少人数学級導入を実現すべきだ。
ウイルス禍は、収束したとしてもゼロになることはない。また次のウイルスが出現する日に備え、「日常」をブラッシュアップしていくチャンスにしていく必要がある。
この「新型コロナウイルス対応」について、国連が興味深い情報を発信していた。
「新型コロナウイルスが及ぼす悪影響は、健康から経済、安全、社会保障に至るまでのあらゆる領域において、単に性別だけを理由として、女性及び女児にとって大きくなっている」
これは国連の「政策概要:新型コロナウイルスの女性への影響」(内閣府仮訳)の序文の一節だ。有事の際、弱い立場の人に影響が顕著に表れる。
http://www.gender.go.jp/policy/no_violence/sp_index_7.html
国連の指摘するところを、順に見ていくことにする。
まずは健康面。医療従事者や介護関係者に女性が多いことから女性が感染するリスクが高い。接客業も、その多くは女性が担っている。不特定多数と接触し、ソーシャルディスタンスが取りづらく、クラスターが発生しやすい職場で、多くの女性が働いている。リスクの高い職場環境で働く女性たちに、「危険手当」を出してしかるべきだろう。しかしそのような手当をもらっている女性が、どれほどいるだろうか。
これら「有償のケアワーク」に携わる女性が多い中、新型コロナウイルスの影響で、家庭では「無償のケアワーク」(家事・育児・介護等)の時間も長時間になっている。学校が休校になり、子どもたちの昼食の用意をしなければならなくなったのは、多くの女性たちであることは想像に難くない。
介護施設に預けられなくなった高齢者を、施設に代わって介護を担う必要に迫られるのも、その多くは女性ではないか。「有償のケアワーク」で感染のリスクにさらされ、「無償のケアワーク」の増加で、心身ともに疲れ、健康をむしばまれていく。
また学校の休校により、この「無償のケアワーク」は、保護者の負担を軽減するため、子どもたちの、特に女子に、担わされている可能性が高い。「女の子だから」と言う理由で。
経済面はどうだろう。女性の労働者のうち、正規労働者が半数を超える現実があり、賃金も低く抑えられていて、貯蓄もままならない。これが、新型コロナウイルスがまん延する前からの、女性が置かれている現状だ。
この厳しい経済状況に、新型コロナウイルスの影響が押し寄せてくれば、生活が立ち行かなく女性が瞬く間に増えていくのは目に見えている。「一日一食ですませている」「貯金が底をつく日も近い」等、切実に訴える女性たちの声がある。
不要不急のイージスアショアにお金をかけるより、辺野古を埋め立てるより、生命にお金をかける時だ。国民の命を守るのが、政治の第一の意味ではないか。
国連は、DVについても指摘している。「移動の制限や社会的隔離政策と相まって」「ジェンダーに基づく暴力は急速に増えている。被害者を支援するサービスが中断されたり、利用できなくなったりするのと時を同じくして、多くの女性が加害者とともに家庭での『ロックダウン』(都市封鎖)を強いられている」
「STAY HOME」で加害者と同じ空間にいれば、被害女性は相談したくても相談することができない。新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出されて以降、DVは増えたが、相談件数が減ったと言われるゆえんだ。
三密を避けるためや資金面・人手不足などを理由に、相談窓口が閉鎖される事態も起こっている。やっとの思いで相談窓口に電話しても、支援者につながらないケースが出ている。
国連は、「新型コロナウイルスに関する全ての応急対応計画、および意思決定において、女性の平等な代表性を確保する」ことについても言及している。
新型コロナウイルスをめぐる、世界各国の対応を見ると、ドイツや韓国、台湾など封じ込めに成功した国々では女性の活躍が目立つ。ひるがえって日本政府はどうだろう。
「妊婦にいち早くマスクを届ける」という政策も、黄ばみや異物購入で回収され、ほとんど意味がなかった。
残念ながら、日本において、新型コロナウイルス対応で、女性に焦点を当てた政策は、これといって見当たらない。
それどころか逆に、国民に不要不急の外出を制限しておきながら、国会では不要不急の法案を成立させようとしている。
政権にとって都合の良い人物の定年を延長するための検察庁法の改正案。年金受給開始年齢を引き上げるための年金法の改正案。一部の企業が種を牛耳ることのできる種子法の改正案……。
そして、日本国憲法に緊急事態条項を盛り込もうとする動きまでも。
コロナ禍に便乗して法案を成立させようとする政権に対し、待ったをかける動きも起きた。「#検察庁法改正に抗議します」だ。短期間のうちに多くの賛同を得て、これまでにない勢いで広がった。政権も無視できないだろう。
世界では、日本にセクシュアルハラ
学年別登校日に、全校生徒に人権学習を行うこととなった。少人数のクラスに分けられた全校生徒に、自分が直接語りかけられる場ができた。これをチャンスとして、新型コロナウイルスの子どもたちへの影響、特に女性への影響も含めて語りかけ、自分なりの「TOGETHER FOR HER」としたい。
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