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おかんとコピ Vol.8 宇宙語と、かくれんぼが好きな猫

李信恵2020.02.05

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4月27日、この日は2週間ぶりに動物病院に行った。体重を図ってもらうと、800グラムになった。保護したときは200グラムもなかったので、すごく大きくなった。目薬はもうしなくても大丈夫に。目は、ぱっちりと開いて黄色っぽくなってきた。他の飼い主さんから「可愛い!」と連発された。だって可愛いんだもん(ずっと親バカ)。次の通院は2週間後、今度はワクチン接種。コピすごいね、頑張ったね。もうすぐ出会って1ヶ月になる。

普段の家でのコピは、だいたい私の膝の上か、パソコンのキーボードの上にいる。「ゴールデンウィークとかどうでもいい。とにかく仕事したらあかんのや!」みたいな感じのコピ。しかし、パソコンが使えないと困る。コピが寝ている隙間をぬって仕事をしている状態に。耳が上に上がって来て、ちょっと大人猫っぽくなってきた。でもまだまだ、子猫。

そのような様子をFacebookに投稿すると、友人たちから「変なでこぼこをぽこぽこ押すなら僕の毛皮を撫でるべきにゃ!」と云っているようだと、コメントを貰った。また、「パソコンのキーボードの隙間から猫の毛が入ると、故障したりするよ。猫の毛は細くて、キーの隙間に入り込んじゃうことも」とアドバイスをもらった。パソコンが故障しても困る。「キーボードの上にカバーを」「ワイヤレスキーボードを買って手元で入力しては」と云う意見も貰った。そして、知らぬ間にコピがSNSなどで宇宙語のような、意味不明な投稿(猫ぽちともいうらしい)を勝手にしていることもあった。

ネットで、「猫 勝手に入力 困る」「猫 PC占領 助けて」みたいな文字を入力してみると、猫対策のキーボードカバーを発見した。キーボード全体を覆うテーブル状の、透明なアクリル製のカバー。キーボードとカバーの間にある程度の隙間があるので、カバーを置いた状態でも不自由なく文字入力できるそうだ。カバーの上に猫が乗っかっても、これで無問題に。そして、念のためにもワイヤレスキーボードも購入した。これで、仕事がはかどると思う。思うだけだけど。

そして、あっという間にそれらが届いた。コピはカバーの上で、得意気にころんと横になっている。ダメだ。可愛すぎて見とれて、仕事ができない(仕事しろよ)。おまけに目と鼻の先にいるので、ついついコピの匂いを嗅いではうっとりしてしまう。なんでこんなに良い匂いがするんだろう。とにかく、これで一つの問題はクリアした。けれど、この時のコピはまだ800グラムほど。なのでカバーの上で眠っていても問題はなかったが、その後急激にコピは大きくなっていく。カバー(キーボード)より、パソコンの画面よりも全長がでかくなると、この時は想像もしていなかったが。

さらに、この先仕事で昼間に留守する時のために自動給水のできる水入れ、タイマーで蓋が開くご飯入れなども購入。まだこの時は家族の猫アレルギーなどのため、自宅の一部だけで飼う予定で、運動不足も気になっていた。なので、やっぱりキャットタワーもいるんじゃないの?とあれこれ物欲が膨らんでいくのだった。足の力もついてきて、飛び跳ねるようになったが、机の上や私の膝の上に乗るときは、まず右足を駆け上ってくる。私の足は木か棒か。痛いがな。爪を立ててよじ登ってくるので、思いっきり傷だらけになった。近所のスーパー銭湯であかすりをしてもらった時には、担当のお姉さんに「いったい何があったの?」と聞かれた。「子猫にやられた」と答えると、「子猫は仕方ないね」と笑っていた。その後、腕にじゃれつかれるようになるとこれまた両腕が傷だらけになった。猫を育てることは、生傷が絶えないものなんだな。

キャットタワーも結局ポチって、数日もすると大きな箱が届いた。工作好きなこともあって、邪魔するコピと闘いながらひとりで組み立ててみた。3階建て、階段や個室、ハンモックや猫じゃらし、おもちゃも付いたそこそこ立派なキャットタワーだ。意外と安かったけど、「すぐにボロボロになるから、あっという間に買い替えなきゃいけないよ」とも聞いていた。まだ生まれて1ヶ月過ぎなのに、自分の家まで手に入れて、贅沢な猫だなあと思う。お前の両親は、まだ家のローン払っているというのに。まあいい。

赤ちゃんの時は箱とか狭いところが怖かった(捨てられたときのせいかな)のに、ふと振り返ると、コピはキャットタワーの入っていた段ボールで遊んでいる。嫌な記憶は忘れたら良い。コピはこの頃からかくれんぼが好きだ。階段や箱に隠れては、私が探すのを待っている。まるで、見付けてもらうために隠れているようだ。どんなに上手に隠れても、おかんはコピのことをちゃんと見付けるから大丈夫。初めて出会ったときみたいに。

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李信恵

李信恵(り・しね)

1971年生まれ。大阪府東大阪市出身の在日2.5世。フリーライター。
「2014年やよりジャーナリスト賞」受賞。
2015年1月、影書房から初の著作「#鶴橋安寧 アンチ・ヘイト・クロニクル」発刊。 

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