玖保樹です。私はドラマをあまり見ないし、「韓流大好き!」と胸を張るほどには詳しくありません。でも基本、見る時は韓国ドラマを選んでます。で、今年見た中で一番良かったのは何かと聞かれたら、現時点では『ハンムラビ法廷』と答えるでしょう。まあ韓国では、昨年放送されたドラマではありますが……。
正義感溢れる新米判事のパク・チャオルムと、学生時代から彼女を思ってきた先輩判事のイム・バルン。2人が左右の陪席からさまざまな事件を目撃し、それぞれに成長していくドラマなのですが、単純な勧善懲悪ものでもラブストーリーでもありません。弱者と強者が時と場合で入れ替わったり、正義と非正義を分かつものは果たして何かなど、見る側に常に問いかけてくる内容になっています。そして法廷で扱う事件が現代の韓国、いや日本のあちこちでも起きていることとそっくりなのです。
たとえばインターン女性へのセクハラで会社を解雇された男性が、解雇の無効を争う裁判を始めます。彼は涙ながらに「解雇されたら一家が路頭に迷う」と法廷で訴えますが、実は最初から仕組まれたものでした。会社側は世論対策のため一度解雇して、再度雇用する目論見だったのです。だから男性側の弁護士が「冗談をやりすぎたからって、優秀な人材が解雇されるなんて。男にとても厳しい会社ではないか」と言ったり、会社側の証人も「男性中心の社会で生き残るには、ある程度の妥協が必要」「うちは家族みたいなチームなのに、異分子が和を乱した」と言ったりするなど、セクハラを訴えた女性への人格攻撃が始まります。それを聞いたチャオルムは怒り心頭になるけれど、法廷は私的制裁をする場ではない。だからそんな彼女をバルンがたしなめる、というエピソードがありました。
また別の回では、医学部の大学教授が研修医の女性を酔わせて旅館に連れ込み、性行為に及んだことを準強姦に問えるかという裁判がテーマでした。妻は財界の有力者という男性教授は、一流の弁護士を揃えて法廷にやってきます。そこでは食事をした和食店の従業員は「2人は親しくしていた」と証言したり、被告はひたすら「合意があった」と言い続けるなど、原告へのセカンドレイプのようなやり取りが繰り広げられていきます。しかしチャオルムは従業員がオーナーから、お得意様の被告に有利な発言をするよう強制されていたことを見抜き、大学教授は有罪となります。
この2つのエピソードでは、性暴力を訴えた女性が加害者側から徹底的に侮辱され続けるシーンが続き、見ているこちらも苦しくなる程でした。
で、なんでわざわざこの話を持ち出したかと言うと。日本でもせっかく性暴力被害を訴えても不起訴になるか、もしくは被告が無罪になるというのが続いているのを立て続けに目にしたから。そして「社会的に地位がある」と思しき男性による、女性への性加害も普通に起きているからです。
10月28日に名古屋高裁で始まった控訴審がありますが、これは2年前、実の父が娘を家や職場で性的暴行を加えた罪に問われたのに、一審で無罪を言い渡されたという事件です。この時は「おかしいだろ!」という声があちこちからあがったので、皆さんも覚えていると思います。
そして10月29日には、小学5年の女児4人への強制わいせつの疑いで逮捕された教諭の男性が、不起訴処分となったという報道もありました。検察は理由を明らかにしていないそうですが。たった2日の間で2つも、加害男性側に有利な判決を目にしてしまった私がいます。
またこの日、九州工業大大学院の68歳の特任教授が、20代の女性へのストーカー行為で逮捕されています。68歳のおっさんは風俗店で働く女性に対して「会いたい」「連絡ください」などとメールを送ったり、自宅で待ち伏せしたりしたことから逮捕されましたが、以前から彼女に交際を求めて店を出禁にされていたそうです。
もうほんといい加減にしてって思いませんか? 韓国社会の貧富の差や格差の固定化、朴槿恵政権の酷さなどを嘆く「ヘル朝鮮」という言葉が少し前に話題になりましたが、こんなに性暴力が野放しって、まさに「ヘル日本」じゃん。……って書いてて今思い出したけど、68歳のおっさんといえば玖保樹も身に覚えがあるわい。
数年前の話ですが当時68歳のそのおっさんは、ある業界の有名人でした。共通の知人が開いた会合で隣り合わせになったので、笑顔で挨拶したのですが……。
おっさん「あんたいくつ?」
私「●歳です(当時の年齢。アラフォー)」
おっさん「……ちょうどいいな」
私「!!!(ゲッ)」
幸いにもこのやりとりを見ていた人たちが、私からおっさんを引き離して事なきを得ました。しかしおっさん、うちら下手すりゃ親子ぐらい年齢離れてるのに「ちょうどいい」ってどーゆーこと?
多少の打たれ強さを自覚している玖保樹ですら、地獄みを感じてしまうことばかりだから、ますます韓流ドラマに逃避しそう。ということで何かオススメ作品があったら、ぜひ教えてくださいね。ではまた!