スウェーデンの16歳高校生、グレタ・トゥーンベリさんの国連本部での訴えが胸に刺さった。険しい表情で、涙を浮かべて怒りで体を震わせながらの訴えだった。国連気候行動サミットに参加した各国首脳は、グレタさんのように真剣にサミットに臨んだだろうか。
温室効果ガスを排出しないヨットで2週間かけて大西洋を横断し、ニューヨークに到着したグレタさん。その行動に多くの若者が共感し、9月20日の抗議行動には、世界で400万人以上が参加したという。彼女の行動力と若者達のSNSのなせる業だ。
勤務している高校の1年生に、グレタさんの国連本部での新聞記事を読ませた。就職・進学試験の小論文を意識した週末課題として、地球温暖化について自分の考えをまとめさせるためだ。同世代だし、SNSですでに生徒たちはグレタさんのことを知っているのではないかと期待して。
果たしてその結果は……。
残念なことに、宿題にした新聞記事で初めてグレタさんのことを知った生徒が大半だった。「テレビのニュースで見たことがある」「SNSで話題になっていたので知っていた」は、2、3人だった。
グレタさんのことが日本であまり知られていない現状を、友人は「日本の子どもたちは英語が苦手だから、世界の話題についていけてない」と嘆いていたが、本校の生徒もそうだった。あまりに知らない生徒が多くて驚いた。
多くの生徒は宿題で初めて知ったのだが、大半の生徒は肯定的に受け止めていた。自分と同じ年の少女が、自分の意見をしっかり持ち、さらに、その意見を国連本部で言うことができる勇気と意思の強さに心を打たれていた。
「グレタさんの行動力は、同年とは思えないほどの力強さを感じます。いまの問題に向けて、明確な目標を作り上げて行動する。これができる人たちはなかなかいなくて、ましてや自らその場に立って行動を起こすことは、大人にだって難しいことです。僕は、いまの時代で必要なのは、グレタさんのような人間ではないかと思います」
「僕たちが、世界の片隅の小さな学校で、くだらないことで喧嘩をしている時、別の場所では同じ年の人が、地球という星全体の環境について、国の代表の多くの心を震わせるほどの発言をし、国を動かす意思を示せるほどの影響与えていることに感動し、自分のしていることが、とても小さく思えました。まず、身近な部分から変えていきたいです」等々、グレタさんへの賛辞と共感が語られた。
「宿題で知ってから、検索して動画を見た」「地球温暖化対策は、ネットで調べたら、多くの対策があるので、簡単なものから少しずつ地道にしていきたい」と、宿題を超えて行動を起こす生徒もいた。今後の生徒たちの行動力に期待したいところだ。
「学校を休んでデモ活動するより、学校に行って、温暖化を防ぐことのできる機械を作る能力を身につけたほうがいいのではないか」「国連で訴えても、便利な生活は変えられない」などという否定的な考えも一部にあった。ネットでも、グレタさんに対しては賛否両論があるようだが、「若い」「女性」が「もの申す」ことに対するバッシングが、根底にあるのではないかと捉えている。
「にっこり笑顔」で、「文句を言わずに素直に言うことを聞く」ことが求められがちな「若い」「女性」。しかし、地球環境についてしっかりと考え、行動しようと思えば、表情も険しくなるし、口調も厳しくなる。グレタさんも、学校で友だちと楽しく笑い合える時間を過ごしたいに違いないが、そう言ってはいられない地球の状況を、これまでの大人たちが作ってしまったのだ。
「大人」の一人として、地球環境に対して、負荷をかけていないか、我が身を振り返ってみる。毎日車を使って長距離通勤している時点でアウト、と言われれば身も蓋もないが、車も、マニュアル車を運転してエコ運転を心がけ、燃費の向上を図っている。その他にも、できる限りのことはしているつもりだ。
電気の場合。使わない電化製品はプラグを抜く。同時に多くの電化製品を使わない。人がいる部屋の電気だけつける。湯沸かしポットには飲む量だけの水しか入れない。LEDを使う……で、電気代は月々千数百円。
ガスの場合。シャワーの設定温度を低くする。火力は鍋の大きさに合わせてギリギリ絞る。洗いものは水で…で、月々のガス代は二千数百円。
水道の場合。風呂の残り湯を洗濯に使う。流しっぱなしにせず、その都度止める。食器の汚れはいらない紙で拭き取ってから洗う……で、月々の上下水道代は二千数百円。
その他。台所でも風呂でも洗面でも、合成洗剤は使わず、石鹸洗剤を使う。エコバックを利用する。地産地消心がける。畑で野菜を作る。ものを大事に使う……などなど。
地球環境に負荷をかけない方策は、節約にもつながることが多い。「大量生産大量消費」とは反対の生活スタイルだ。それは「経済成長」とも反対の方向なのかもしれない。地球環境考えると「成長」はもうストップして、「成熟」をめざすべきではないか。
ただし、「もうこれ以上節約できない、ギリギリの生活」を強いられている人々がいるのも事実だ。夏場にクーラーをつけられずに、熱中症で亡くなった高齢者もいた。「トイレは二回に一回しか流さない」「お湯の量を少なくするために、水を入れたペットボトルを浴槽に入れてから湯を沸かす」「病院に行きたくても、少々のことは我慢する」等々、厳しい節約をしている人もいる。今回の消費税増税によって、さらに生活を脅かされる人もいるはずだ。
その一方で、「楽しく、クールに、セクシーに」環境問題にとりくむなどと、「笑い」を取って悦に入っていた環境大臣がいた。彼は「毎日でもステーキを食べたい」とも言っていた。脱原発を掲げているが、どこまで本気なんだか。グレタさんの真剣さとはほど遠い感が否めない。
東電のトップに無罪判決が出され、関電の菓子折りの底に金貨が入っているこの国は、やはり「サムライ・ジャパン」から抜け出せずにいるのか。
サムライならば、ハラキリなのでは? などと思う今日この頃。国民が納得する「大岡裁き」は出てくるのだろうか。