数ヶ月前、新宿タワーレコードのアヴァンギャルドコーナー(クラシックの横にアートしてますって感じで隔離されている一画ね)でジャケ買いした1枚、‘ソークワクチン’の『Rock Egypt』をご紹介。ジャケット写真に写る、メンバーの女性3人のポーズが、まずピピっと来た。
3人中2人は普段着でほぼスッピン、よく言う等身大の女性(??年齢不詳…)っていう感じ。でもどことなく‘なまめかしい’のだ。よくよく見るとなんてこたぁないポーズなのになんかちょっとヘン。しかも帯にあるセールスコピーが‘沖縄からの最終兵器、登場!’である。このアヴァンな一画にあるからには、パンクじゃねぇよな。何々、‘女子3人による、スーパー・フォーク&トランス・ミュージック…’。なんじゃそりゃってわけで、興味津々、お買い上げ。
さっそくお家で聞いてみる。おぉ、これはまさしくアヴァンギャルド・ポップ・ワールド。ジャケ負けしない、ぐるぐるしたヘンな世界。わけのわからん言葉がぽんぽん弾けて飛んで、酔いそうに変化するメロディにのって泳ぎまわるのだ。意味わからん詩の世界なんて、一般的によくいう不思議ちゃんワールドには、珍しくもないことなんだけど、このソークワクチン、ジャケ写のメンバーの、すんごい堂々とした表情から察するに、単なる不思議ちゃんとは思えない。どころか、ちゃんと地に足つけて、この意味わからん的詩世界を構築している確信犯のような気がしてならない。
そもそもこのソークワクチンって、ポリオ撃退ワクチンの名前。「サッカリン」ってタイトルの曲もある。不思議詩世界のなかに、すごい毒っ気が、お茶目に散りばめられているのがたまらん。「サントメプリンシペ in アボガド」など、けっこう食い物の単語が多いのに、9曲目の「ムッシュ ヒーホー」では‘食べても吐いても物足りない/なかなかアナタをやめられない…’という摂食障害ネタな痛いオチがついているのだ。
とっても抽象的なのにとっても直接的。いわゆるアヴァンギャルドって感じのイっちゃってる世界なのに、とってもポップでかわいい。ときどきオキナワなメロディもはいってるけど、極めて無国籍。でもジャパニーズ・ガールな匂いも大いにある…。
具体的になにがっていわれても、よくわからないんだけど、なんかフェミな香りがあるのよねぇ。聞いてるうちになんだか奇天烈な高音がコーラスとなって、ぐあんぐあんとアヴァン度が加速したり。ちょっと強引なんだけど、かのオノ・ヨーコの音楽にある、アヴァンギャルド・フェミな匂いを感じた。10曲目の「グレープフルーツ」、かつてヨーコさんが出した本のタイトルと同じ「グレープフルーツ」っていうタイトルっていうのも、単なる偶然なんだろうか?
‘Girl friend Grapefruit / Black white Blue Bollpen’
「グレープフルーツ」ソークワクチン
そんなこんなをつらつらと考えつつ、このソークワクチン情報をネットで探してみたらば、なんとあの笹野みちると、ジョイント・ライブをやっているではないかいな。笹野氏もこのソークワクチンのこと、かなり気に入っているみたい。そういや、ソークワクチンの、僕を一人称に持ってくるいくつかの詩は、どこか「東京少年」のころの‘ささのみちる’に相通じる‘性別越え’を感じなくもない。
そして、来る9月22日(月)、吉祥寺スターパインズカフェでの笹野みちる&柳原陽一郎プレゼンツのイベントに、このソークワクチンが出るよ!(なぜか佐野史郎も)。わたしもぜひぜひ、生(ナマ)でこのソークワクチンを聞いてみたい。
いっぽう、笹野みちるも、カミングアウト後‘京都町内会バンド’となってからは、わたしはぜんぜん、彼女の音楽を聞いていない。はたしてどのようないま現在なんだろうか。こちらもまた楽しみなのだ。
そして最後に、ちょっとだけ。オノ・ヨーコの80年代の曲‘WALKING ON THIN ICE’をペット・ショップ・ボーイズがリミックスしたマキシ・シングル、これがいいのよ!もちろんクラブ系ではとっても受けているらしい。かなり粗雑な言い方だけども、フェミニズムとゲイの合体リミックスが、全世界のクラブチャートを席巻きしてるってことになるよね。すてきだわぁ!
※ライブイベント"http://orehata.ciao.jp
※ソークワクチン(Salk Vacchin)『ロックエジプト』の発売レーベル:GOD MOUNTAIN(GMCD038) 2500円。
※ソークワクチンのCD情報は☆琉球ウェイブ☆のサイトで見れま~す※
http://www.ryukyu-wave.com