ハジメマシテ。エンあってこのラヴリーなHPで音楽について語ることとなりました。広~い世界中の、素敵なリアル・ウィメンズ・ミュージックを追っかけて行きたいと思います。皆様と一緒に、音楽を通して女セクシュアリティを感受していきまっしょい!
んなわけで、気負いの第1回目は、私がいま1番トキメイテいる“タラ・ジェイン・オニール(Tara Jane O'niel)”というアーティストをご紹介します。タラは72年米・イリノイ州生れ。ケンタッキーのルイヴィルという地を拠点にいくつかのバンドやユニットで活動し、“peregineモ(00)“in the sun linesモ(01)とタラ自身のアルバムをリリース。最新アルバム“TKO”(02)は、長年の所属レーベルを離れ、オレゴン州ポートランドのレーベル、MR.Ladyからリリースされた。
タラが元恋人シンシア・ネルソンと94年結成した‘レトシン’というユニットがある。2人の奏でる音楽はちょっとブルーなアコースティック・フォーク。NY在のシンシアとルイヴィルに住むタラのコラボレートはまるで愛の往復書簡のよう。私の貴女…それは理想の女…そして幻想の女なの、といった内容の機微細やかな詩についどきどきしてしまう。しかし、愛し愛されるふたりが織り成す風景はどこかせつなくてセンチメンタル。〈…私の同志はみんな他の街に住んでいる 落ちないようにキャッチして 毎週が警告なの いつか朝霧のなか彼等が私を捕らえにくるわ…〉「ランド・オブ・ザ・ロスト」という曲のこんな詞に、ルイヴィルで女同志の親密な愛を守ることの厳しさが垣間見える。
そんな2人の愛も、タラの最新作『TKO』の頃には終止符が打たれてしまったようだ。別れた彼女への思いを自分自身に受けとめさせるかのような切ない曲ばかりが並んでいる。サウンドも自然と共存するようなフォークから、打ち込みのリズムを多様した抽象的なエレクトロニカなものへ、タラの心のざわめきを物語る様に変化がみえる。タラの繊細な心の襞は、赤裸々なまでに作品に現われる。
私がタラを知ったのは、去年の来日公演。近寄りがたい緊張感。挑発的に客を煽るタラ。クールとエモーショナルが同居するタラのオーラにヤラレタ。ライブ後サインをせがんだ私に向かって、タラはいきなり「I like you!」。タラったら、きっと酔っぱらっていたんだろう…でもハンサム・ガールにこんな風にいわれちゃどぎまぎよ。なんとサインにもしっかり「I like you」って書いてある。以来、私の片思いはずっと続いていたのだけれど。
なんと5月には再来日公演。今度はちょっとダイクな雰囲気のクリスティーナ(新パートナー?!)とのユニットだ(+男1の3人編成)。相変わらずのチェイン・スモーキング、物憂げでクールな佇まいながらも、刺々しさがなくなったタラ。それどころか、クリスティーナと2人でいると、う~ん幸せなのね!演奏中のステージに流れる映像はクリスティーナ作。ざらざらしたネガフィルムにちょっぴり肉付きのいい女性の体(等身大のオンナのカラダだ)が楽しそうに踊っていたり、ステージではみられないグラマラスなタラのポートレイト。そして‘これはタラとクリスティーナなの’との説明まで加わったかわゆいイラスト・キャラクターの2人が、手をつないでただただ歩く、ずんずんと歩く。このビジュアル・アートは彼女たちのLOVE for Women、そしてLOVE each other。タラの歌う、元カノへ向けたかのような切ない曲の数々も、この映像とクリスティーナの存在も手伝って、ポジティブに踏み出すものへと変換される。エンディングで流れる「夢見るトレイシー」(乙女POPSの代表曲ね!)にあわせて無邪気にふざけ合う2人のふとした瞬間にドキってしてたら…えぇぇキッス寸止め!ごちそうさまっす。またまたヤラレチャイマシタ。
ここに来て、フェミニスト&レズビアン・アーティストが中心となるMR.Ladyレーベルに移籍。そしてルイヴィルから、いまやちょっとしたクィア文化の聖地的なオリンピアへ移住。タラの人生に大きな大きな変動期が来たようだ。
来日に合わせて出版されたタラの画集がある。その絵には女性の裸体が多い。片手で性器を押さえる女(タラ自身か)の絵には‘…結びあうところ、その素敵な裂け目’という言葉が添えられている。
※「ランド・オブ・ザ・ロスト」の訳詞はレトシン『キャビン・イン・ザ・ウッズ』国内盤より ※タラ・ジェイン・オニール『TKO』、レトシン『キャビン・イン・ザ・ウッズ』は国内盤がP-VINEより発売中。タラの画集‘who takes a feather’の発売元はmap。