東京で自分らしく生きること そして韓流 第二回 KPOPに出会ってから
2019.04.01
立命大の岸教授に『はじめての沖縄』という著書がある。と言っても沖縄料理の名店や観光名所は本編に一切登場しない。あくまで作者が初めて訪れた頃の個人的体験が回想されている。ガイドブックを期待した読者でAmazonのコメント欄が荒れたそうだ。
このコーナーも実はそれを目指しているかもしれない。韓流文化の紹介者にはすでに専門家がおられる。最大手は古屋正亨氏だ。彼はどこででも活躍している。イベントやファンミーティングに1日本人KPOPファンとして参加すると、とりあえず、このかたに業界の依頼が行っていたように感じた。あとご自身がKARAやSS501の事務所DPSからA'st1のメンバーとしてデビューして活動されていた藤原倫己さん。この方もものすごく素敵で、とことんプロフェッショナルだ。自分はというとその間ずっとアメリカに住んでいて近年までほとんど韓流情報にふれる機会がなかった。言ってみれば古屋氏のレポートは叙々苑、TOMOくんはおしゃれなコリアンチキン店、でこの雑文はというと家でチヂミ焼いてみたら結構上手に作れて美味かった程度ですホントに。
じゃあお前は何を書きたいのかというと、40数年KPOPを知らずに生きてきた人間が、韓流活動を始めてどんな風に人生を立て直していきたいと思えるようになっていったか、そんな心境の変化をおいおい伝えていけたらなと思っています(乞ご期待)。で今回伝えたいのはライブビューイングという事象を知った経緯について。これ、今では月一くらいのペースで楽しんでます。
ライブビューイングというのは知ってる人は知っている、知らない人は全く知らないまま死んで行くという現象で、すごく良いシステムだ。アメリカに住んだ15年間は知らずに過ごした(無かったと思う)。直近では3月14日、TOHOシネマズ渋谷のディレイビューイングというので、2017年6月入隊前最後の2PMソウルコンサートをボストン育ちのメンバー、テギョンの日の回を字幕入りで。テギョンファンの親友の一人と、ふたりでキャッキャ言いながら(共に男性)3時間たっぷり楽しんで来た。現在テギョンは入隊中なので楽しさも尚更だった。
人生初のKPOPコンサートがこの2PMの武道館だったのは前回書いた通りだ。その公演終了後がまるで良いセックスの余韻のような快感で、席でひとりそれに身を委ねていたらスクリーンに告知が大写しになり、武道館公演余りの好評につき追加公演を代々木体育館でやると言う。武道館6日間は6人のメンバー1日1人ずつ特別企画があったが追加公演は2日間なので、1日3人ずつ年上3人の日と年下3人まとめてやるそうだ。行きたい。がしかし2日しかやらないので、前回発見した手元のスマホのチケット交換サイトでは既に、正価の10倍とかプラチナ化してしまっていてとても手が出ない。どうしよう。
でそこに「全国でライブビューイング」という見慣れぬ案内が流れた。チケットが取れなかったり遠方で遠征しづらい人も、チケットの3分の1程度の料金で、地元の映画館の快適なシートで座ったまま、声を出して応援できる。スナックドリンク自由で、ペンライト等応援グッズも使用可、という至れり尽くせりの制度だ。3時間立ちっぱなしはちょっともう足腰が、という中年の自分には夢のようだ。体育館の天井席からは米粒大未満にしか見えないアーティストを、歌ってる口の中までアップで巨大スクリーンに拡大してくれる。(これで後年、KPOPの帝王東方神起ユノ様の奥歯の治療跡が銀色に映し出されたのを見て妙にドキドキしたこともあった。)
何より嬉しいのは合法か脱法スレスレなのかわからない、そして収益がアーティストに還元されない交換サイトではなく、公式に堂々と我々のささやかな財布から売上が制作会社に届く仕組みが倫理的に感じられた。どうやら長年のアメリカ暮らしで、必要以上に公正を重んじる人になってしまっていた。生きづらい。でもこれなら地方の中学生のお小遣いでも買える。なんだか急に全国的な一体性を感じた。こうして初めて行ったバルト9という映画館は、セクマイフレンドリーを謳うマルイアネックスの上にあった。公演中、メンバーが全国の映画館に向かって直接呼びかけてくれたのも楽しかった。
というのも一口に韓流ファンと言ってもいろんな層がある。一番コアな層はCDデビュー前からファンクラブも会員番号数千番台、本国韓国の公式ファンクラブにも入って、家族も協力して一緒に応援してくれて(会員になってくれる)、応援仲間同士で互助制度というかグループで最速抽選を大抵一口4枚まで申込めるので、良席当選確率を上げる努力を常にしている。本国コンサート含め可能な限り公演遠征実現するためにも、日々真面目に働いて韓流活動の貯金ができている。このかたたちは通常アリーナ席というスタンディング席におられる。
でも第三次韓流ブームとも言える現在のTWICEやBTS人気の担い手は、そうした尊敬に値する勤勉な社会人だけではない。そもそも第一次韓流ブームの「冬のソナタ」は中年以上の主婦が主流だった。じゃあ今は誰かというとそこら辺の中高生だ。彼らはファッションセンスとSNSリタラシーはバリ高いが、別に財力に優ってはいない。むしろ日本経済衰退を受けてこれから奨学金を借りる身だ。この人たちと映画館ビューイングの親和性は高い。嬉しい。
TWICEは2PMの事務所の後輩で、日本デビュー前から何度もステージを見てきた。BTSの事務所の代表は、2PMの事務所で長年プロデューサーをしていた人だ。この人が兄弟グループ2AMを連れて円満独立後、満を持して全国新人オーディションを経てゼロから作ったグループが防弾少年団(最近表記をBTSに統一)だ。そんな繋がりで、昔ソウルに行った際、母の好きな2AMメンバーの父親のカフェに行ったら、前日にデビュー直後低迷期のBTSメンバーが全員で来ていて、ポラロイドや書込みを残していた。当時十代のメンバーが半分くらいで、真面目で初々しくハツラツとした写真。でも決してモデル風のルックスのメンバーだけではなく、多様な顔ぶれの残像が今も瞼に残っている。
今冬何かと話題満載だったBTSドームツアーは、一般抽選枠で東京ドーム公演のチケットを畏友と申込んだが見事全部外れた。先月行われた日本ツアー最終日福岡ドームのライブビューイングも、一次抽選は東京の映画館は全部外れた。最終発売で残っていたのは首都圏では千葉だけだった。で畏友にイオンシネマ市川妙典という仏教的にもありがたそうな地名の映画館のチケットを死守してもらい、当地イオンのフードコートでリンガーハットで腹ごしらえ(野菜増量)を済ませて劇場に入ったら、中高生の女の子がびっしりと、そして男の子も少なからずいた。中には昔の自分のようなセクマイの子どもたちもいるかも知れない。杉並から半日がかりのプチ遠征を、一緒に心から楽しめた。これなら中高生にも無理なく、持続可能性の高い韓流応援ライフを全国で共に歩める。めでたしめでたし。
今日のインフォメーション: 2PM 10周年プレミアム企画
〜2PM FOREVER〜ディレイビューイングDay1 to 6