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かなりイライラでも目が離せない⁈ 慰安婦問題がテーマの映画『主戦場』

2019.04.03

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玖保樹です。ちょっと間が開いてしまいすいません。先日、4月20日から公開される『主戦場』 http://shusenjo.jp という映画の試写会に行ってきたのですが、いやーすごかった。

この作品のテーマはずばり、慰安婦問題。だから玖保樹も気になって仕方がなかったのですが、予告編を見て腰が激しく引けてました。だって「性奴隷ではなく売春婦」と言い放つケント・ギルバード氏をはじめテキサス親父や杉田水脈議員といった方々が、延々と主張を連ねているんですもの。wam(女たちの戦争と平和資料館)館長の渡辺美奈さんや吉見義明先生も出てくるようだけど、思いっきり両論併記系のヤバいやつかなあと思っていたのですが……。

映画はまず、2015年12月の日韓合意から始まります。当事者不在のなかでだましうち的に結ばれたのに、どこが合意なのか。『和解・癒し財団』が解散した現在ではよくわかるのですが、当時は「最終的・不可逆的解決」といった言葉が一人歩きし、多くの人を混乱に陥れていましたね。その日韓合意の直後、韓国政府関係者に被害当事者の李容洙ハルモニが怒りの声をあげる姿を、スクリーンは映し出していきます。そして「被害者20万人」「強制連行の有無」「性奴隷だったのか」といった、慰安婦問題を語る上で外せない論点を取り上げ、主張が対立する人たちの発言を拾っていきます。

 

(C)NO MAN PRODUCTIONS LLC

どちらの言葉に説得力があるか、そして何が歴史の事実かを理解するには作品を見てね、と言いたいところですが。少しだけネタバレすると対立の火種を作ったある人物が登場するのですが、その方は対立する意見はおろか、自分の主張を補完してくれるであろう文献にすら目を通していないんです。それを見て玖保樹、椅子からリアルにズリ落ちましたよ……。

慰安婦問題に関心がなければ、この映画はスリリングな言論バトルに見えるかもしれません。しかし慰安婦否定派の言葉は、女性や慰安婦当事者を傷つけるものばかりで。私は怒りと呆れと憤りを感じずにはいられませんでした。

侮蔑に満ちた言葉を屈託なく映像にできたのは、監督のミキ・デザキさん自身がマジョリティカードを何枚も携えている、「アメリカ人男性」なことも関係しているかもしれません。金髪碧眼(って言葉が古いな)ではない日系人という点で言えば、アメリカ国内ではマイノリティなのでしょう。しかし戦時性暴力を受けたアジア人女性の苦しみを、彼はどこまで自分の裡に受けとめることができたのか。序盤はかなり疑問に感じながら見ていたのですが、終盤に向かうにつれ意外な人物の意外な発言などあり、おさまるべき地点に向かっていきます。

(C)NO MAN PRODUCTIONS LLC

ミキ・デザキ監督は作中で、自身がユーチューバーとして活動する中で浴びたバッシングを機に、慰安婦問題に飛び込んでいったことを明かしています。「じゃあそれまでは無関心だったの?」と思ったし、戦時性暴力はディベートのネタでも表現の手段でもなく、被害者が存在する重大な人権侵害です。だから映画にするならそれなりの覚悟を持って欲しいよと思っていたけれど、見終わった後は「よくぞここまで色々な発言を引き出してくれました」と、拍手を贈りたい気持ちになりました。

しかし驚くほど多くの人たち、とくに歴史修正主義者と目されている人たちが素直に取材に応じていたのは、やっぱり監督がアメリカ人だったことが大きいのではないでしょうか(それはタイトルにもなった『主戦場』の意味ともリンクします)。同じことをしたくても、日本人や韓国人のジャーナリストだったらここまで協力をあおげるのかと疑問を覚えました。とはいえアメリカ人なら全員ができることでは決してないので、監督自身の度胸と情熱に依るところが大きいのでしょう。

冒頭に李容洙ハルモニが登場したり、ナヌムの家を訪ねるシーンはありますが、慰安婦問題を描いたこれまでのドキュメンタリーとは違い、当事者のインタビューはありません。でも当事者の声を聞くのが難しくなっている現状からすると違和感はないし、吉見義明先生はじめ真摯に取り組んできた方の言葉は、慰安婦問題をこれから学びたい人にも響くはずだと思いました。

女性の人権やフェミニズムに開眼した人にとってはムカムカくる場面もありますが、慰安婦問題が日系アメリカ人男性にはどう見えたのかがわかります。監督自身がユーチューバーなだけに、YOUTUBEがあって当たり前の世代にもオススメしたい、今までにないタイプの作品と言えるでしょう。

ということで4月20日よりシアター・イメージフォーラムほかにて全国順次公開されるので、ぜひ見て欲しいと思います。でも友人と一緒に見に行ったら、どこに頷いてどこに憤りを感じたかが食い違う可能性があるかもですが(その場合は付き合いをやめた方がいいかもしれません……)。ということで今月はこれにてまた!

(C)NO MAN PRODUCTIONS LLC

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