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LOVE PIECE CLUB サイトをご覧の皆さま、はじめまして。

今月からコラムを担当する行田トモと申します。

まだまだ若葉マークのライター&フェミニストですが、海外ニュースを中心に、真面目に、楽しく、情報をお届けできればと思います。

さて早速ですが、この数年私が注目している日があります。それは2月1日の『国際ヒジャブデー』という日です。

ヒジャブとは、頭から首回りを覆うスカーフのこと。

顔のみを出して全身を覆うチャードル、黒い布で目と手足以外を覆うアバヤなどと並んで、主にムスリムの女性が着用するものです。

いずれも夫や家族以外の男性の視線から身を守るためのものとされていますが、着用義務の有無やその厳格さ、色柄の自由度などは、宗派、国、地域、家庭、そして個人によって様々です。

国際ヒジャブデーは、NYブロンクス出身のムスリム女性、Nazma Khan氏が2013年に創設した記念日です。

ヒジャブへの認識の向上・理解の拡大を求めて毎年2月1日に世界140カ所以上で様々なイベントが行われています。

“Breaking Stereotypes”をテーマに掲げた今年の国際ヒジャブデーに、イギリスで毎週水曜日に配布されるフリーペーパー・Stylist誌のサイトで、ある女性のインタビュー記事が公開されました。

https://www.stylist.co.uk/life/world-hijab-day-feminist-statement-video-mariah-idrissi/249387

タイトルは”Why wearing a hijab can be a powerful feminist statement”

(なぜヒジャブを着ることがパワフルなフェミストであるとの声明となるのか)

インタビューに応じたのはマライア・イドリシ(Mariah Idrissi)氏。

ロンドンで、パキスタン人とモロッコ人の両親の間に生まれた彼女は、ZARA、H&M、プーマ、リアーナがプロデュースするコスメブランドFenty Beautyなどの広告ビジュアルに起用され、「ヒジャブを着たムスリムモデル」として大きな話題となりました。

 
 
 
 
 
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いずれも多様性の尊重を意識したキャンペーンでの起用で、イドリシ氏自身も中東版GRAZIA誌で「ムスリム女性として、(ファッションのキャンペーンなどで)ヒジャブの本質を表現することを求めていく責任があります」とコメントしています。(https://www.graziame.com/style/beauty/how-rihanna-picked-me-to-be-the-face-of-fenty-beauty)

彼女は講演やTV番組にも積極的に出演しています。

2016年にロンドンで行われたTEDの10代向けカンファレンスでは、「ファッションがもつ影響力で世界を変えることが出来る」と前置きした上で、「ヒジャブは単に女性を抑制するだけのものではなく、ムスリム女性が自分らしくいるためのものでもあります」とスピーチしました。彼女が様々なブランドの広告塔となったことを、単にファッション界のセンセーショナルなニュースで終えるのではなく、ムスリム女性への偏見の解消や、他文化への理解を深めるための第一歩だと伝えたのです。

また、イドリシ氏はIslamic Reliefe UKのメンバーでもあります。この団体は、イスラム教の価値観・知識に基づいて世界規模の活動を行っており、災害、貧困に苦しむ人々への援助や、児童のヘルスケア、女児の強制結婚(early and forced marriage=EFM)・割礼といった危険な文化に反対し、その被害に遭った女児らに教育の場を与えています。(https://www.islamic-relief.org.uk)

こうした活動が評価され、2018年には国連により『アフリカ系の最も影響力のある100人』に選ばれました。

 

 

 
 
 
 
 
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ファッションとチャリティ活動の両面からイスラム教への理解と多文化共生を訴え、世界的に評価されているイドリシ氏ですが、自身がヒジャブを着用し始めたのは大学在学中だったとStylist誌に語りました。

それは彼女にどのような変化を与えたのでしょうか。

インタビューの詳細を見てみましょう。

「当時は1日に5回お祈りをしたい気分でしたし、それと同様に、自分の信仰を表したいと思い、(ヒジャブの着用を)実践し始めたのです」

「(ヒジャブは)社会やメディアが、私たち女性に与える圧力を和らげてくれました。女性らしい外見で、女性らしい行動をしなければならないという圧力から。ヒジャブを着ることはそうした圧力の多くを取り除いてくれました。私はそのような女性のイメージの圏外にいるように思えたので」

英国で育ったイドリシ氏はヒジャブを被らず、パッと見はムスリム女性とわからないスタイルで生活をしてきました。ですからイドリシ氏はヒジャブを着ることで、女性はセクシーでなければならない/(欧米の)男性が求めるスタイルであるべき、といった欧米社会の圧力から逃れることが出来たと感じたようです。結果的に、異性からの性的な目線を遮るというヒジャブの効果が作用し、彼女に安心感を与えたのです。

一方で、Stylist誌は、過去数カ月で宗教的な偏見に晒された女性たちもいる、と言及しています。

確かに、イギリスのニュースサイトを見ていると、”Islamophobia(イスラム恐怖症)” “Anti-Muslim Attacks(反ムスリム犯罪)”といった文字が次々と目に入ります。

今年の2月末には、ロンドンの地下鉄内でヒジャブを着た子連れのムスリム女性が「シリアへ帰れ!」と怒鳴られるという事件が起きました。

ムスリムへのヘイトクライム(憎悪犯罪)の記録、情報発信、そして被害者支援を行う団体であるTellMAMAによると、2018年上半期に公共交通機関内で起きた事件は、報告があったものだけでも17件に及ぶと言います。また、2017年の同団体の統計によると、こうした犯罪の数は年々増加しており、最もターゲットとなりやすいのは、外見でムスリムと分かる女性だというのです。(https://www.theguardian.com/uk-news/2018/jul/20/record-number-anti-muslim-attacks-reported-uk-2017)

それでも、イドリシ氏はヒジャブを着るのをやめないと言います。

「私は今でも、ヒジャブを着て、やりたいことをやっています。やりたいことをするために、私のモラルや信仰を妥協する必要は一切ありません」

一方、ヘイトクライムが増加する状況下で、ムスリムと知られてしまうことが怖くても、ヒジャブを着ることを強要される少女たちがいることも、イドリシ氏は承知しています。

しかし、ソーシャルメディアが、ムスリム女性たちに孤独ではないと伝え、公の場で安心してヒジャブを着られるよう手助けをし、若い女性にヒジャブへのより良い理解を与えていると彼女は考えます。

イドリシ氏自身も、日々勢力精力的にInstgramを更新しています。

https://www.instagram.com/mariahidrissi/?hl=ja

「ただ単に彼女たちがヒジャブの見た目が好きなだけだとしても、ヒジャブを何かファッショナブルなものだと思っているだけだとしても。

彼女たちが成長するにつれ、実際なぜヒジャブを着ているのかを探求してくれると確信しています。それが単なるファッションに過ぎないはずはないのですから」

彼女は最後にこう語ります。

「ヒジャブを着た女性が世界で何をしているのかに注目すること、そして個人的な探求をすることの両方を通じて、より多くの人が自ら学んでくれると思います」

この記事を書いている最中、ニュージーランドのクライストチャーチにある二つのモスクで銃乱射事件が起きました。

イドリシ氏はInstagramでこのようにコメントしています。

「私たちは祖国でも、西洋でも恐怖に晒されている」(https://www.instagram.com/p/BvCFfMlgfMf/?utm_source=ig_web_copy_link)

悲しいことに、多くの命が奪われたこの事件でも、ヒジャブが注目を集めました。ニュージーランドのアーダーン首相が、ヒジャブを身につけて地元のイスラム教関係者の元を訪れ、哀悼の意を伝えたのです。(https://www.bbc.com/news/live/world-asia-47578860)

「深い悲しみの元に、私たちは団結しています」という言葉で、そして、その装いで、ムスリムに寄り添った首相の姿に、私は尊敬の念を抱きました。

同時に、この街でも、ヒジャブなどで自分らしい装いをすることに恐怖を抱いてしまったり、諦めてしまったりする女性が増えるであろうことを思うと胸が痛みます。

自身の解放にも、他者からの抑圧にもなるファッション。

愛を呼びかけて相互理解のツールにすることも、ヘイトの温床やテロのきっかけにすることもできるソーシャルメディア。

その違いは、どこから生まれるのでしょうか。

答えのない問いのようにも感じられますが、考えることをやめてはいけないと思いました。

私事ですが、2010年から1年間、ロンドンに留学していました。

街ではムスリム女性が私と並んで服を選んでいました。

大学校内では、大理石の階段をカバヤを着た学生がスルスルと降りていく姿に見惚れもしました。

ヒジャブをつけたクラスメイトと腕を組んで歩きました。大切な思い出です。

彼女たちが自分の日常に当たり前にいてくれた街。ロンドンは、私にとって多様性の象徴でもありました。

初夏に6年ぶりにロンドンを訪れる予定です。何が、どう変わっているのか。楽しみ半分、怖い気持ちもあります。

今のロンドンを、この目でしっかりと見てきます。

水曜日には駅前をウロウロして、Stylist誌を持ち帰りますので、レビューを楽しみにお待ちくださいね。最高にクールなこの雑誌、語りたいことが沢山あるのです。

ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

行田トモでした。

 

・ ・ ・ ・

 

https://www.stylist.co.uk/life/world-hijab-day-feminist-statement-video-mariah-idrissi/249387

”Why wearing a hijab can be a powerful feminist statement”

(なぜヒジャブを着ることがパワフルなフェミストであるとの声明となるのか)

記事本文訳

 

今日は私たちひとりひとりがヒジャブを着ることを推奨される日だ。

国際ヒジャブデーを祝して、女性たちはあらゆるところに集結し(信条に関係なく)、文化、国、コミュニティ間の理解と寛容を促進すべく、ヒジャブを着る。

なぜ、ヒジャブを着ることが強力なフェミニストとしての表明となるのかをシェアするべく、モデルであり、パブリックスピーカーでもあるマライア・イドリシ氏をStylistのオフィスに招いたのはこうした経緯からだ。

「私がヒジャブを着始めたのは大学在学中でした」とイドリシ氏は説明する。

当時は1日に5回お祈りをしたい気分でしたし、それと同様に、自分の信仰を表したいと思い、(ヒジャブの着用を)実践し始めたのです

「(ヒジャブは)社会やメディアが、私たち女性に与える圧力を和らげてくれました。女性らしい外見で、女性らしい行動をしなければならないという圧力から。ヒジャブを着ることはそうした圧力の多くを取り除いてくれました。私はそのような女性のイメージの圏外にいるように思えたので」

ヒジャブとは ー 頭と首を覆う四角いスカーフのことでムスリムの女性が着用する。

イギリスでは、過去数ヶ月の間に宗教的な偏見に直面した女性たちもいる。

「私は今でも、ヒジャブを着て、やりたいことをやっています。やりたいことをするために、私のモラルや信仰を妥協する必要は一切ありません」とイドリシ氏は語る。

「私はもっと多くの人がヒジャブを着ることを選ぶと思いますが、無理強いさせられている少女たちがいることも否定しません」

しかしながら、ソーシャルメディアが、女性たちが独りではないと感じ、公の場で心地よくヒジャブを着られるよう手助けをしているという。

「世界中の慎ましやかなファッションのソーシャルメディアが助けとなってくれています。なぜなら、明らかに、若い女の子たちにヒジャブへのより良い理解を与えてくれていますから」イドリシ氏は言う。

「ただ単に彼女たちがヒジャブの見た目が好きなだけだとしても、ヒジャブを何かファッショナブルなものだと思っているだけだとしても。彼女たちが成長するにつれ、実際なぜヒジャブを着ているのかを探求してくれると確信しています。それは単なるファッションに過ぎないはずはないのですから」

彼女は続けた。

「ヒジャブを着た女性が世界で何をしているのかに注目すること、そして個人的な探求をすることの両方を通じて、より多くの人が自ら学んでくれると思います」

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行田トモ

行田トモ(ゆきた・とも)

エッセイスト・翻訳家
福岡県在住。立教大学文学部文学科文芸・思想専修卒。読んで書いて翻訳するフェミニスト。自身のセクシュアリティと、セクハラにあった経験からジェンダーやファミニズムについて考える日々が始まり今に至る。強めのガールズK-POPと韓国文学、北欧ミステリを愛でつつ、うつ病と共生中。30代でやりたいことは語学と水泳。

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